早稲田大学

写真拡大

「1億総活躍プラン」の一環として安倍政権が打ち出した給付型奨学金のあまりの貧弱ぶりに、失望の声が広がっている。

 給付型奨学金は、卒業後に返済する必要がない奨学金で、若者にとってはありがたい制度である。しかし、対象が狭すぎて恩恵にあずかることができる学生はほんの一握り。大学入学者数は60万人台だが、給付型奨学金の対象者はわずか2万人にすぎない。対象となる住民税非課税世帯の大学等進学者数は年間6万人程度と推計されているから、この範囲でみても3分の1にとどまる。

 給付額は国公立、私立、自宅、自宅外などで異なり、月に2万円から4万円。2万人の枠を全国約5000の高校に割り振り、学校推薦で選ぶ。単純平均すると1校で4人ということになる。

 2018年度から本格的に実施するが、負担の重い学生を対象に一部を先行実施する。予算規模は最終的に200億円程度になるという。

 もっとも給付が少ないのは「国公立・自宅」の学生で、月2万円。多いほうは「私立・下宿」で月4万円となっている。

●私立大の授業料の半期分

 運良く給付型奨学金をもらえることになったとして、私立大学に通う下宿生で年間の給付額は48万円。14年度の私立大授業料の平均額は約86万円なので、およそ半期分にしかならない。日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査」(15年)によると、大学入学時に約102万円、在学費用(通学費含む)は年間142万円で、4年間の教育費総額は約670万円になる。自宅外通学(下宿生)の場合は、さらに仕送りが年間約140万円、生活スタート時の費用約45万円が別途必要になる。下宿生は4年間で約600万円が上乗せされる。私立下宿生の4年間の総コストは1200万円を超えてしまうことになる。

 日本学生支援機構の「平成26年度学生生活調査」でみると、私立大に通う下宿生の年間生活費(授業料含む)は平均で約239万円。4年間で956万円。これに初年度は入学金やアパートの入居関連費用がかかるから、こちらのケースでみても1100万円前後になる。

 つまり、1年平均にすると約300万円かかる計算だ。どう節約しても200万円以上は必要で、仕送りが少なければ、アルバイトで補わざるを得ない。アルバイトのため寝不足や過労に陥って学業が疎かになり、留年・中退といった事態に追い込まれる学生も出てきている。

 給付型奨学金は最大でも月に4万円。それも2万人だけ。もちろん、ないよりはマシだが、この程度では高い学費と生活コストの壁を乗り越えるのは至難の業である。

●日本は「高授業料・低補助」、OECD30カ国中最低

 海外の奨学金事情はどうなっているだろうか。経済協力開発機構(OECD)の「図表でみる教育2013年版」によると、10年の日本の国内総生産に占める教育機関への公的支出の割合は3.6%。加盟国で比較可能な30カ国中で最低だった。日本の特徴は「高授業料・低補助」と指摘されている。北欧諸国やドイツは、逆に「低授業料・高補助」とされている。

 ドイツは、大学(州立)の授業料は原則として無償で、そのうえ奨学金がある。連邦奨学金の受給者は約67万人で、受給額は親と別居の場合は最高で年間73万円(12年)。半額が給付だという。

 遅ればせながら給付型奨学金が導入される日本は、あまりにも寂しい内容だ。全国紙も「問題解決にほど遠い」「少ない金額と対象人数」と批判的だ。インターネット上には「もう少し手厚い給付を」「そもそも学費が高すぎる」「奨学金の利子を見直せ」など、さまざまな意見が飛び交っている。総予算200億円余で対象2万人。「1億総活躍プラン」のひとつとしては、お粗末すぎるとの批判も多い。
(文=編集部)