トランプ次期米大統領の保護主義志向や英国のEU離脱方針決定など反グローバル化、反自由化機運が高まっている。一方、アジアでは新興国を中心に保護主義に対抗する新たな大規模自由貿易協定結成へ交渉が加速している。写真はタイの連絡船。

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世界では昨年、欧米を中心にポピュリズム(大衆迎合主義)とナショナリズムの機運が高まった。環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱をはじめとするトランプ次期米大統領の保護主義志向や英国のEU離脱方針決定など反グローバル化、反自由化機運が高まっている。一方、アジアでは新興国を中心に保護主義に対抗する新たな大規模自由貿易協定結成へ交渉が加速している。

米国のトランプ次期大統領がTPPからの「撤退」を明言、発効は絶望的となった。21世紀は「アジアの世紀」といわれ、発展めざましいアジア太平洋地域の貿易自由化の主役として浮上しているのが東アジア地域包括的経済連携(RCEP)である。

◆急成長する人口最大市場

中国と日本を中心に進められているRCEPは、日本・中国・韓国・オーストラリア・ニュージーランド・インドの6カ国がAEAN10カ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)との自由貿易協定を束ねるもの。合計16カ国が参加する世界最大の自由貿易協定(FTA)だ。TPPに比べGDP総体では劣るものの、域内人口は4倍超。世界一の成長市場で、日本の貿易投資相手の大半を占めている。近隣地域でもあり、TPP以上にRCEPに期待する日本企業が多いのが実情だ。

インドネシアのエンガルティアスト貿易相は12月初めに同国で開催されたRCEP交渉会合で「世界のすべての注目はRCEPに集まっている」と演説。RCEPの早期妥結を訴えた。

しかし、関税撤廃やルールづくりをめぐって各国の隔たりはなお大きい。日本、シンガポールなどTPP参加国は、アジアでの電子商取引の急激な発展に備え、外国企業にサーバーを自国内に設置するよう義務づけることや、ソフトの中身を強制的に開示させることを制限する規定の盛り込みを主張する。中国やインドなどはこれを拒み、交渉は平行線が続く。

アジアに多い国有企業への優遇に関しても、より強い制限を求める日本などに対し中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)は強く反対している。経済発展が遅れているインドやミャンマーなどは緩やかな制限を求めている。

交渉参加国はASEAN創立50周年の17年中に大筋合意にこぎ着けたい考えだ。日本はこれまで「高い質的水準」を求め、早期妥結にこだわっていなかったが、TPPの「挫折」を受けて「時期重視」の姿勢に変わりつつある。RCEPで第一の経済大国となる中国も「盟主」になるべく歩み寄りの姿勢をみせる。

RCEP交渉参加国の中で最も消極的とされたインドも妥結可能な水準まで妥協する兆しが出てきた。TPPの代わりにアジアの自由貿易の柱として期待され、各国で早期妥結の機運が高まっている。

日本はTPPを早期発効させて、RCEP交渉の主導権を握ろうとしてきたが、この思惑が崩れた。「TPP並みの高い水準」へのこだわりと早期の妥結のはざまで、難しいかじ取りを迫られている。

RCEPの次の広域自由貿易枠組みとして検討されているのがFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏構想)。これには米国、ロシア、カナダなども含めたAPEC(アジア太平洋経済会議)全域で経済統合を加速する大構想。2010年に横浜市で開かれたAPEC首脳会議で、TPPなど進行中の経済連携の取り組みを基礎とする方向性が固まった。16年11月にリマで開かれたAPEC首脳会議でも、実現に向けた課題が協議された。

世界で突出した成長を続けるアジアは衰退する欧米に代わって世界最大の市場に成長し、膨大な資金需要がある。人口減少と低成長率にあえぐ日本としても、「地の利」を生かすべきであろう。

アジア太平洋の経済相互依存で、日本は絶好のポジションに位置し、地域と日本の繁栄と安全に繋げられる。日本が経済の相互依存よりも単純な軍事的安保優先に傾斜すれば、世界の成長センター、アジア太平洋の繁栄を損ない、アベノミクスの足を引っ張ることにもなりかねない。(八牧浩行)
<続く>