好調の波に乗る昨今のスバルこと富士重工業ですが、一方で実は大きな課題も抱えています。このまま波に乗り続けることができるかどうか、2017年に創業100年を迎える同社の次なる一手に注目です。

スバル、絶好調

 スバルに大波が来ています。

 スバルこと富士重工業の、2015年度の世界生産台数は95万台超えの過去最高を記録。なんと6年連続の前年越えです。2016年も11月まで過去最高を記録。このままいけば、2016年度も過去最高を更新するのは、まず間違いないでしょう。

 さらに、2016年に発表した新型「インプレッサ」は、「2016-2017 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の栄冠も獲得。スバル車が選ばれるのは13年ぶりで、ファンにとっては非常に嬉しいニュースとなりました。

「2016-2017日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した、スバル「インプレッサ」。5ドアハッチバックの「SPORT」(左)と、4ドアセダンの「G4」(写真出典:富士重工業)。

 しかも、新型「インプレッサ」に採用された車体の基本構造は、「レガシィ」などスバルのほかの車種にも使われる予定です。つまり新型「インプレッサ」の出来の良さは、ほかのスバル車にも波及することが予想できます。もともと熱心なファンの多いスバルでしたが、クルマの出来が良ければ、さらにファンの数が増えることは間違いないでしょう。

 また、世の中の安全志向が強まるなか、「アイサイト」というスバル独自の強力な運転支援機能もブランドのステイタスを高める追い風。これは、話題沸騰中の自動運転技術にもつながるものです。

好調の波間に見えるスバルの「課題」

 さらに、スバルの中期経営計画「際立とう2020」には、2016年から2020年のあいだに、「プラグインハイブリッド車」と「次世代ハイブリッド車」を投入するという記載もあります。遅れ気味だったスバル車の電動化も、これから一気に加速しそうな気配です。

 しかも2017年は、富士重工業にとって創業100周年という記念の年です。会社名を富士重工業から、一般に馴染みの深い「スバル」へ変えることも予定されており、これも話題性十分。2017年のスバルが、盛り上がらない方がおかしいくらいの状況です。

スバル(プレアデス星団)は「六連星(むつらぼし)」ともいい、「スバル」のブランド名はもともと、富士重工業が中島飛行機の流れをくむ5社の資本出資によって設立されたことにちなんでいる(写真出典:富士重工業)。

 では、スバルの未来はバラ色なのでしょうか。

 実のところ、そうは問屋が卸さないのが自動車ビジネスの厳しいところ。過去5年を限って見れば、確かにスバルの売上げはものすごい勢いで伸びました。しかし内訳を見ると、伸びたのは北米市場だけです。ほかの地域はほとんどが横ばいで、売上げが落ちている地域さえあります。つまりスバルの絶好調は、北米市場に頼りきりというのが実情です。

次なる大波、電動化 スバルは乗るのか、飲まれるのか

 スバルで残念なのは、成長著しい中国やASEAN諸国での売上げが、ほとんどないということ。スバルには、新興国で売れる低価格のクルマがないからです。またマレーシアにスバルの工場はありますが、2020年の目標も2万台というわずかな数字。そんな数字では、スバルを支える大きな柱にはなりえません。日本市場も話題先行で、実際の販売台数はいまひとつ。そのため現在のスバルは、北米がダメならほかで挽回ということができません。もしも北米で再びリーマンショックのようなことが発生すれば、あっというまにスバルは窮地に陥ってしまうのです。

スバル「XVハイブリッド」は、スバル初のハイブリッド車(写真出典:富士重工業)。

 また、近々登場が予想されるスバルのハイブリッド車にも不安があります。スバルはこれまで、「XVハイブリッド」というSUVをラインナップしてきましたが、燃費性能がそこそこというレベルだったこともあり、ヒットには遠く及びませんでした。電動化の究極である電気自動車も、スバルは軽自動車として発売しましたが、これも売れずにあっというまに引っ込めました。どうもスバルは、次世代エコカーを売るのが苦手なように見えます。そのため、ハイブリッド技術の蓄積がそれほどありません。

 そうした状況で新しいハイブリッド車を作るとなれば、もしかすると提携先であるトヨタの技術を利用するかもしれません。ハイブリッド技術を得意とするトヨタの技術を使えば、非常に燃費のよいスバルのハイブリッド車を仕立て上げることも可能だからです。しかし、それでユーザーは納得するのでしょうか。これも疑問です。

生き残るための戦略が首をしめる可能性も?

 マツダが、トヨタ「プリウス」と同じハイブリッド・システムを使って、「アクセラ」のハイブリッドタイプを作っています。しかし、これが売れているという話は聞こえません。やはりファンは、「燃費の数字がよい」からスバルやマツダのクルマを購入するというわけではないからでしょう。スバルなり、マツダなりの、これまでのクルマづくりが好きだから、それぞれのファンになっているのです。そうしたときに、中身がトヨタのクルマでは、性能うんぬんの前に、ファン心理としてガッカリしてしまうのではないでしょうか。

マツダ「アクセラ」のハイブリッド・システムは、トヨタ「プリウス」の技術が使われている(写真出典:マツダ)。

 やはり、スバルがハイブリッド車を発売するというのであれば、スバルらしさは必須ですし、そのうえでハイブリッドのメリットが必要です。それは過去を鑑みれば、スバルにとっては非常に難しい課題です。そして、クルマの電動化は世のなかの大きな流れであり、あらがえるものではありません。苦手だからと、諦めるわけにはいきません。

 つまり、現状のスバルの状況は素晴らしいのですが、未来が盤石かといえば、そうでもなく、課題が山積しています。当然、スバルの経営陣は次なる手を考えているはずです。開発陣も、さらなる魅力的なクルマの開発にいそしんでいることでしょう。ぜひとも、この好調さを維持できる、素晴らしいプランと技術がスバルから提示されるのを期待したいと思います。

【画像】新型「インプレッサ」のエンジンは…?

5代目にあたる新型「インプレッサ」に採用された、2.0L水平対向4気筒DOHC。新開発の直噴NAエンジンで、従来比12kgの軽量化を実現している(画像出典:富士重工業)。