脳の病気は「がんより怖い」とよく言われる。しかも、師走から春先にかけて起きやすく、代表的なものが「脳梗塞」や「くも膜下」などの脳卒中だ。その主な原因は、高血圧や糖尿病など、中高年が罹りやすい病にも大きく関わっている。
 日本ではこれらの症状に対する認識が甘いとされるが、一度倒れれば寝たきりとなり、社会復帰も困難な状況に陥る。

 「がんは、手術による除去や抗がん剤治療などで、元気に戻れる場合も少なくありません。しかし、脳梗塞や脳溢血、くも膜下出血など、脳に血管障害が起きてしまうと、そうはいかない。片麻痺(いわゆる半身不随の状態)や言語障害などの後遺症が残り、介護も必要となります。また、たとえ病状が改善しても職場への復帰率は低く、リハビリの苦しさも並大抵ではありません」
 とは、医療関係者。
 とくに脳梗塞は、死亡率が心臓病と2位、3位を争うほど高い。罹るリスクは、高血圧や糖尿病体質、高脂血症で、善玉コレステロール値が低く血管が詰まりやすい人ほど高くなる。すでに生活習慣病に悩まされている人は、よりいっそうの体質改善の努力が求められる。

 今年6月に厚労省から発表された「2015年人口動態統計」によれば、昨年の日本人死亡数が129万人で過去最多を記録した中、死因の1位は相変わらず「がん」で、3.5人に1人の割合だった。さらに脳血管疾患での死亡者は11万1875人で4位となり、心疾患、肺炎に次いで、やはり高位置につけている。
 脳血管疾患は1970年をピークに減少し始め、'85年には心疾患に抜かれ3位、2011年には肺炎に取って代わられ4位となった。

 「ただし、気を付けなければならないのは、この脳血管障害は、同調査の月例推移を見ると、12月過ぎから翌年3月にかけて死亡者が増えており、寒さが大きく左右することが明らかな点です。しかも、こうしたデータはあくまで死亡者の統計であり、当然、その予備軍がいる。脳梗塞の場合、何と40代は3人に1人、50代で2人に1人、そして60代の80%以上の人が“隠れ脳梗塞”の疑いがあるのです」
 こう語るのは、東邦大学医療センター大森病院脳神経内科の医師だ。

 ここで言う“隠れ脳梗塞”とは、脳梗塞の初期段階のことで、MRI検査などで脳に数ミリ程度の小さな梗塞が見つかれば、そのような診断が下される。
 しかし、そのまま放置しておくと、数年以内に約30%の確率で脳梗塞を発症するという。前述のように、とくに日を追うごとに寒さが増すこれからの季節は、朝晩の温度差があるため、建物の出入りだけでも身体が大きな気温差の変化にさらされ、危険が高まる。

 医学博士で佐久間クリニックの佐久間結寛院長は言う。
 「年末年始は、本当に気を付けなければいけません。脳梗塞と脳出血、くも膜下出血の三つの病気を脳卒中という総称で呼ぶことすら知らない人が多い。いずれも脳血管障害ですが、脳梗塞と脳出血は、脳の血管が何らかの理由で詰まったり破れたりした結果、血管の壊死や出血を伴う病気ということになります。言い換えると“詰まり”だけを脳梗塞と言い、出血があれば脳出血となります」

 ただし、くも膜下出血は同じ血管障害ながら、大脳や小脳の外で起きるという点で、少し異質と言えるという。つまり、脳の表面を覆う膜の中の出血である。