堅実女子のお悩みに、弁護士・柳原桑子先生が答える本連載。今回の相談者は、山粼昌子さん(仮名・38歳・公務員)です。

「父はお金とお酒と女性にだらしない、典型的なダメ男です。父と母は大学で知り合い、学生運動をしていた同志で、学生結婚をしています。私が生まれる前に、何度も子供を諦めていると母から聞きました。

父は暴力は振るわないのですが、するっとお金を取っていくという天才的な能力を持っています。母もホレた弱みでそんな父を許しているところがあり、今まで多額の借金を父に代わって支払っています。私も母も地方公務員なので、そこそこ安定した生活ができるのに、父のせいでお金がありません。

5年ほど前に、父に彼女ができて家から出て行ったので、ホッと一安心。母と私で旅行をしたり、楽しく生活をしていました。しかし、最近、母が末期の胃がんになっていることがわかり、そのまま入院。余命半年と言われ、手術はしたものの予後が悪く、意識不明になることもあります。

一応、母親が倒れたことを父に伝えたら、なんと父は金目のものを奪いに来ました。引き出しからお金をスッと抜き、アクセサリーやバッグなど、換金性の高いものが家から消えていました。

2人はまだ籍は入っています。父は女性にも愛想をつかされそうになっており、お金に困っているらしく、母の遺産を狙っています。

母はともかく、私も父には1円たりとも上げたくありません。父に遺産を渡さない方法はありますか?」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは……!?

別居していても、あなたのご両親は婚姻中です。配偶者(この場合・お母様)がお亡くなりになった場合には、生存配偶者(お父様)に相続権があります。

現状では、相続は発生していませんが、お父様が金目のものを奪いに来たということなので、あなた自身が管理をしっかりしてください。お母様の状態にもよりますが、必要に応じ、成年後見の申立(※1)をして,母の財産管理をきっちりしておいた方がよいかもしれません。

相続に関しては、母の意思能力が回復するようであれば、父にはいかないように遺言書を作成することも考えられます。しかし,配偶者には遺留分があるので、一切渡さないという内容では、相続発生後、遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)が行なわれる可能性はあります。(※2)

虐待、侮辱、非行等の事由がある場合には、お母様が推定相続人廃除の申立や遺言をすることも考えられ、それが認められると遺留分も認められなくなります。廃除を請求できるのは、お母様(被相続人)ですから、お母様が意識不明等で、意思能力が認められないままであれば、できません。

●編集部注

※1 成年後見制度とは、精神上の障害 (知的障害、精神障害、認知症など)により判断能力が十分にない人が、詐欺被害をはじめとする不利益なことにならぬよう、援助してくれる人を付けてもらう制度。家庭裁判所に申し立てをします。

※2 遺留分減殺請求とは、遺言でも侵すことができない、最低限の遺産に対する取り分。遺言によって相続分が減らされても、この最低限の遺留分に相当する分に権利がある。

自分の意思があるうちに、財産の意思表明や様々な確認をしておくことが大切。



■賢人のまとめ
婚姻関係が続いている限り、一切の財産がお父様に渡らないようにすることは厳しいかもしれません

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/