2017年1月20日に正式就任するトランプ次期米大統領の経済政策「トランプノミクス」に逆風が吹き始めています。その理由は何でしょうか。

 トランプ次期米大統領の経済政策、いわゆる「トランプノミクス」に向かい風が吹き始めています。

 トランプノミクスの柱は所得税や法人税の税率引き下げ、資産税の廃止などの減税と、交通、通信、電力などのインフラ投資。その景気刺激効果により、経済成長率を平均3.5%に引き上げることを目指しています。米国の過去5年間の経済成長率は平均2.2%であるため、1ポイント以上押し上げようというわけです。

 一方で財政赤字の拡大が懸念されます。トランプノミクスに不透明な部分もあるため、分析結果にかなりの幅はありますが、10年間で最大10兆ドル程度の財政赤字拡大要因になるとされています(「Tax Policy Center」など)。米国の国内総生産(GDP)が年間18兆ドル強であるため、ザックリと計算すると年平均1兆ドル、GDP比0.5%程度赤字が拡大するとみることも可能でしょう。

共和党主流派が“ダメ出し”

 トランプノミクスに対して、税制改革は富裕層の優遇だとして野党・民主党は抵抗する姿勢を見せています。それだけでなく、身内であるはずの共和党議員からも慎重な発言が相次いでいます。

 上院の共和党リーダーであるマコネル院内総務は12月12日の会見で、「連邦債務は危険水準にあり、減税は財政収支に対して中立であるべきだ」と語りました。つまり、減税するなら財源を確保せよということです。そして「(インフラへの投資額とされる)1兆ドル規模の景気刺激は不要だ」と付け加えました。

 これに先立って、ライアン下院議長(共和党リーダー)も、「税制改革は財政中立であるべきだ」との旨を発言しています。ライアン議長は連邦政府の介入を嫌う「ティーパーティー」をバックにしており、そうした発言につながった面もあるでしょう。

 11月の議会選挙の結果を受けて、2017年1月には議会のメンバーも大きく変わります。そのため、マコネル議員やライアン議員がそのまま各院のリーダーを務めるかは不明です。それでも、共和党の主流派が財政赤字の拡大にダメ出しした意味は大きいでしょう。

所信表明演説や予算教書に注目

 さて、2017年1月20日にトランプ大統領が正式に就任します。そして、日にちを置かずに議会で所信表明演説を行うはずです。そこでは最優先に取り組む課題や対策が明らかにされるでしょう。さらに2月にはトランプノミクスの具体的な内容を示した2018年度予算教書が発表されます(2018年度は2017年10月からの1年間)。

 予算教書の発表を受けて、議会は予算編成を開始します。予算編成は主に歳出に関わるものですが、減税などの税制改革も何らかの形で盛り込まれる可能性が高いです。その時までに、トランプ大統領は議会を味方につけてトランプノミクスの実現に向けて前進することができるでしょうか。それとも、トランプノミクスの大幅な修正を迫られるでしょうか。

 米国経済だけでなく世界経済にも影響しかねないため大いに注目されるところです。

(株式会社マネースクウェア・ジャパンチーフエコノミスト 西田明弘)