『14の夜』 全国公開中 (C)2016「14の夜」製作委員会

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…前編「口やかましい老害オトコ〜」より続く

【映画を聴く・番外編】12月のオススメ映画/後編
人と野獣との想像を絶する愛を彩るミニマル・サウンド

●『14の夜』(12月24日公開)
『ビー・バップ・ハイスクール』、VHSテープ、マジソンバッグなどの小物にグッとくるアラフォー世代には他人事とは思えない、足立紳監督のデビュー作。尾崎豊の代表曲をもじったタイトルや、「いつの世もくだらない事に必死な中学生男子の悶々を描いた愛すべき“性春讃歌”」というキャッチコピーから、みうらじゅん原作&田口トモロヲ監督の『色即ぜねれいしょん』あたりを想像しながら見はじめると、こちらはより“くだらない事に必死”で、一気に引き込まれた。物語の世界観を反映したというキュウソネコカミの主題歌「わかってんだよ」の疾走感と、主人公たちの必死さを客観的に見守るような海田庄吾の牧歌的な劇伴のコントラストがまたいい感じだ。

●『ワイルド わたしの中の獣』(12月24日公開)
99年のドイツ映画『バンディッツ』などへの出演で知られる女優、ニコレッテ・クレビッツによる監督作。オオカミと人間の恋愛という想像を絶する物語をCGなしで描き、サンダンス映画祭を震撼させた作品だ。とにかく全編にわたってショッキングな映像の連続で、後味はとても複雑。いっぽうで音楽をジェイムズ・ブレイクやテラ・ノヴァといったエレクトロニック系のアーティストが提供しており、寒色でまとめられた映像とすこぶる相性がいい。主人公の“野性”への執着をミニマルなサウンドで彩っている。

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●『オアシス:スーパーソニック』(12月24日公開)
最後にドキュメンタリーもひとつ。リアム&ノエルのギャラガー兄弟が直々に製作総指揮を務めた『オアシス:スーパーソニック』の公開が、いよいよスタートした。数々のビッグセールスとビッグマウスにより、記録と記憶の両方にその名が刻まれるバンドだが、こうして改めてドキュメンタリーがまとめられることの意義は、やはり大きい。基本的には過去のさまざまな映像にリアムとノエルの回想が重なるヴォイスオーバーの形式が取られており、「Live Forever」などの名曲の誕生の瞬間を細かく再現している。当時を知る人はもちろん、新しいファンが見ても彼らの規格外ぶりがよく分かる、ビートルズで言えば『アンソロジー』にあたる重要なプロジェクトだ。これはいよいよ再結成への布石か?(文:伊藤隆剛/ライター)

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。