薬物犯罪者の社会復帰と贖罪のあり方とは?(shutterstock.com)

写真拡大

 2016年は有名人の薬物事件がマスコミや世間を騒がせた一年だった。特に師走のマスコミを騒がせたのは、歌手ASKA氏の再逮捕劇――。

 11月28日、覚せい剤の使用容疑で再逮捕されたものの、12月19日に嫌疑不十分で釈放となった。警察は、尿から覚せい剤の陽性反応が出たとして逮捕したが、ASKA氏が<尿ではなくお茶にすりかえた>という主張を覆すができなかった。

 雑誌『SPA!』(12月27日発売)では、ASKA氏のインタビューを掲載。本人が今回の逮捕の顛末について語っている。

 その独白は、再逮捕時に報じられた内容とはかなり印象の異なるものとなっている。

 報道では、「警察に盗撮されている、と支離滅裂な訴えをした」とされていたが、ASKA氏本人の説明では「アップルのアカウントがたびたび書き換えられているので、サイバー課を紹介してくれ」と頼んだのだという。

 ところが、やってきた警察官はインターネットの知識に乏しかったのか「アップル」「アカウント」という用語すら通じず、ASKA氏が意味不明なことを言っていると思ったのでは、と話している。

 そして、尿ではなくお茶を入れたことについては、「ここで尿を出したら陽性にされてしまうのではないか」ととっさに思ってしまったのだという。では、<なぜお茶から覚せい剤の陽性反応が出たのか>ということは謎のままだ。

 その点についてASKA氏は、「僕の推理ですが1つだけ『そうかもしれない』と思えることに辿り着きました。出版予定の本の中で詳しく書くつもりです」と思わせぶりに締めくくっている。

薬物事件を起こした人の社会復帰はどうあるべきか

  ASKA氏の言い分にどこまで納得できるかは人それぞれだろう。ファンにとって気になるのは、再びASKA氏の音楽が聴けるのか、新曲を聴くことができるか――。

 今回、芸能リポーターの井上公造氏が、ASKA氏の許可なく制作中の未公開音源をテレビ番組で流すという一幕があった。「絶対やっちゃいけないこと」と憤ったASKA氏だが、着々と曲作りが進んでいるのは確かなようだ。

 新曲のリリースが注目される一方で、「覚せい剤使用で逮捕されたのだから、何もなかったかのように音楽活動を再開するわけにはいかない」という声は多い。だが、才能あるミュージシャンの作品が世に出せないのは、ミュージックシーンにとって大きな損失だ。

 酒井法子氏や槇原敬之氏のように復帰した例もある。影響力が大きい有名人が、薬物事件を犯したときの活動再開はどうあるべきか、業界も含めて議論されていくべきだろう。

 現在、リハビリ施設「ダルク」で活動している田代まさし氏は、ラジオなどで薬物の恐ろしさを公言している。大ヒットを連発した大物ミュージシャンという経歴と影響力があるASKA氏には、薬物依存に正面から向き合い、薬物乱用防止の啓発に努めてほしい。

 影響力のある彼にできる取り組みが、ファンへの謝罪とともに活動再開の支持にもつながるのではないだろうか。
社会復帰には<治療共同体>の助けが必要

 影響力のある芸能人が薬物の恐ろしさと、薬物依存との戦いを語ることは、薬物依存に苦しんでいる人々にとっても一筋の希望を与えることになるだろう。

 国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部部長などを歴任した医学博士の和田清氏は、『依存性薬物と乱用・依存・中毒──時代の狭間を見つめて』(星和書店)で、このように記している。

 「ほとんどの薬物依存者は、いずれかの時点で『薬物をやめたい』と思う時期がある。しかし、その困難性に直面し、可能性を喪失する。自殺が多いのもこの時期である。そこに一筋の光明を与えてくれるのが、回復者である。治療共同体で生活する者は、回復者を目指すべきモデル像として、リハビリテーションに務める。回復への道は回復者が最も知っているということである」

 すでに刑に服した薬物依存症患者を社会から切り離し、孤立させるだけでは、薬物問題は決して解決しない。いかに社会復帰を可能にさせるかが、今後の社会の課題である。その意味でも、薬物事件を起こしたミュージシャンの活動再開は、ひとつのロールモデルとなる可能性を持っている。
(文=編集部)