電通の新入社員が過労により自殺した問題で、日本国内では長時間労働やパワハラ、仕事の生産効率に関する議論が活発化した。そしてこの問題は、近年目覚ましい経済成長を遂げた中国にも少なからぬインパクトを与え、中国社会に「対岸の火事ではない」との認識を抱かせたようだ。(イメージ写真提供:123RF)

写真拡大

 電通の新入社員が過労により自殺した問題で、日本国内では長時間労働やパワハラ、仕事の生産効率に関する議論が活発化した。そしてこの問題は、近年目覚ましい経済成長を遂げた中国にも少なからぬインパクトを与え、中国社会に「対岸の火事ではない」との認識を抱かせたようだ。

 中国メディア・界面は12月29日、「過労死で電通の社長が辞任 中国では『996』がなおも盛んだ」とする記事を掲載した。「996」とは、「午前9時から午後9時までの勤務、週6日出勤」のこと。中国のオフィスでも過酷な長時間労働が当然のように行われている、と言いたいのである。

 記事は、「過労死はもはや日本だけの問題ではない。よりひどいことに、中国の過労はますます深刻化しているのだ」とし、どんな業界においても労働の長時間化はもはや中国におけるライフスタイルの1つになっていると説明した。そのうえで、2016年9月に中国の著名クラシファイドサイト(地域別、目的別に分類した広告情報サイト)である「58同城」のスタッフ全員が「996」の労働制を採用していたことが暴露されたことを紹介。IT・通信系業界では毎日2時間程度の残業が習慣化しているとした。

 一方で、中国では過労によって死亡したとしても法に基づいて補償を受けることは依然として難しく、現在の法規では長期的な心身へのダメージによる死亡は過労死認定が困難であると指摘している。

 記事は、電通が悲劇の再発を防ぐために新たな企業文化づくりを発表し、その1つとして午後10時以降の残業を原則禁止し、オフィスの照明を強制的に消すことを打ち出したと紹介。「これはまさに、高校3年生の夜自習の管理制度と同じではないか」として多くの中国人にとってなじみのある措置であることを伝えるとともに、「体は革命の資本。しっかり休んでこそさらに遠くまでいける」という担任教員の話は「仕事の場においてもやっぱり真理なのだ」と結んだ。

 電通が打ち出した強制消灯制度を「高校3年生の時に経験した」という話からは、中国社会の大学受験に対する重視ぶり、そして受験競争の激しさが伺える。学生時代から「残業」を強いられ続け、社会人になって長時間労働に縛られるとなると、蓄積されたストレスは計り知れないほど大きいものだろう。

 絶対的な労働時間もさることながら、本質的に大切なのは従業員が常にベストなコンディションで能力を発揮できる場所や環境を、会社が提供することだ。何時以降は残業禁止、強制消灯実施というのは表面的な対症療法に過ぎないのである。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)