ロイター/アフロ

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 カジノ法案と呼ばれる「カジノを含む統合型リゾート(IR)を解禁する法案」(IR推進法案)が、12月15日に衆議院本会議で可決・成立、26日に施行された。政府は年明けに内閣官房にギャンブル依存症等対策室(仮称)を設置。1年以内をめどに、IR実施法を策定し国会に提出する予定だ。

 カジノ法案について野党第一党の民進党は、今回の一連の国会審議でも反対の立場を示していたが、その同党に対しては次のような批判が上がっていた。

「そもそもカジノ法案を成長戦略として掲げたのは、政権の座にいた時の民主党(民進党の前身)ではないか」
「民進党の中にもIR推進議連が立ち上がっており、身内にもカジノ賛成派がいるのに、なぜ反対したのか」
「蓮舫代表は徹底抗戦と言っていたが、参院ではあっさり採決に応じてしまった。おかしいではないか」

 そこで民進党本部に問い合わせてみたところ、次のような回答が寄せられた。

「民主党時代にカジノを成長戦略にという声は上がっていたが、党の方針として確定していたわけではありません。維新の党などが合流して結成された民進党は、民主党とは別のものと考えていただきたいが、民進党では前原誠司先生などが、カジノを推進する立場でIR議連の副会長となっているのは事実です。ですが今回、民進党が反対したのはカジノの是非ではなく、審議のあり方についてです」

衆院では10月26日に民進党も賛成して、宇宙関係2法が可決。11月2日にはやはり民進党も賛成して国家公務員給与法が可決と、審議は順当に進んできた。IR法の審議入りの模様について、民進党の緒方林太郎衆院議員のブログにはこう書かれている。

「11月29日の本会議の途中に理事懇談会の申し入れがありました。内容は『明日、ストーカー規制法改正案の採決をした上でIR法の審議に入りたい』という事でした。普通は理事懇談会の要請は2日前、理事懇談会は前日開催で委員会立てという事でやってきております。あまりに性急な動きであり、私から『受けられない』と答えています」

だが、委員長職権で審議入りが進められた。

●崩れた「徹底抗戦」

 一つの党内に、課題によって異なる意見があるのは、むしろ健全なことだ。外交や国防など国の根幹に関わることではないカジノについてなら、なおさらだ。突然に「明日審議入りする」などと言われたら、党内の意見調整をしている時間はない。

 民主主義の原則は多数決だが、そこには少数意見の尊重の立場も含まれるはずだ。議決が多数決で決まるのは当然だが、審議入りさえ数の力で押し切るのは、少数意見の無視とも取れる。政権与党である公明党はいつも「一致結束」を旨としているが、党内の意見調整が整わず、自主投票になったことは周知の事実だ。

民進党は「法案を審議する環境にない」として、30日の審議入りに反対し、委員会を欠席した。12月6日の衆院本会議の決議では、社民党、自由党とともに民進党は退席した。この時にIR議連の民進党議員も退席している。カジノ推進の立場であっても、審議の進め方に納得がいかないとの考えでの退席だ。この時点まで民進党は、カジノへの賛否の違いはあっても、足並みを揃えていた。

 カジノ法案議論の場が参院に移ると、蓮舫代表を先頭にして、民進党は「徹底抗戦」を掲げた。内閣不信任決議案などを連発して会期延長に持ち込み、廃案に持ち込む作戦だったという。

だが、民進党の参院国対委員長の榛葉賀津也議員が採決に応じたことから、12月14日に採決となりカジノ法案は参院でも可決された。榛葉議員が応じたのは、ギャンブル依存症防止を明示する一文を条文に入れる、法律施行から5年以内に見直しするという譲歩を、自民党から得たからとのこと。

 その榛葉議員は14日に記者会見している。「安倍総理自身が何がなんでもこの議員立法を通すのだという意思がそこにある。議員立法という皮を被った閣法がカジノ法案だ」と批判を語っているが、「頭を冷やして衆院でやり直せという怒り、参院としての矜持、野党としての法案への怒りを込めて送り返した」と採決に応じた気持ちも語っている。そしてカジノ法案は、12月15日未明、衆院本会議で可決された。

●ガバナンスの問題が一気に露呈

 参院での採決があった12月14日、民進党のIR議連が「榛葉氏は党が決めたことと別なことをやった」「蓮舫代表は参院議員なのに参院民進党をコントロールできない」などとして、榛葉氏を処分するよう野田佳彦幹事長に申し入れるという動きもあった。蓮舫代表は、「組織の結束に向けどういうことができるか考えたい」と15日の記者会見で答え、処分は曖昧なままだ。

 民進党のカジノ推進議員にも不満がくすぶり、公明党との間にすきま風が吹くという状況も生まれた。数の力による審議強行は、自民党にとって賢い選択だったのだろうか。

 今回のカジノ法案成立をめぐる一連の民進党の動きについて、ジャーナリストの朝霞唯夫氏は次のように解説する。

「党内のガバナンスの問題が一気に露呈したかたちです。榛葉参院国対委員長は、自民党から譲歩案を引き出したため採決に応じたとしているが、蓮舫代表が事前にそれを知らなかったというのは、これだけの重要法案にもかかわらず、党内の意志疎通がなかったことを物語っています。民進党はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)関連法案の審議などでも、たて続けに抵抗戦術をとってきました。それが国民の目からすると“単なる反対野党”に映り、またしても批判の矢面に立ってしまうのではないか、との危惧が党内にはあった。そこで落としどころを自民党が出してきたため、民進党はそれに乗った。同党内では、このような見方がもっぱらです。

 そんな同党を、同じ野党の共産党や自由党は冷ややかな目で見ています。民進党内には60人以上の推進派もいるため、結局、強硬姿勢を貫けなかった、という見方です。いずれにせよ施行された今、誰がいち早く“利権レース”に加わるのか、民進党内では注視されている状態です」

 こうした民進党の状況を、国民はどうみているのであろうか。
(文=深笛義也/ライター)