映画「東京オリンピック」にカメラマンとして携わった山口益夫氏

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BS12 トゥエルビにて12月31日(土)夜7時から、映画「東京オリンピック」が放送される。

【写真を見る】今では取り壊されてしまった国立競技場、市川崑監督作品「東京オリンピック」の一場面/(C)公益財団法人 日本オリンピック委員会

同作品は'64年10月10日から24日まで開催された東京オリンピックの全容を収めた、市川崑監督による長編記録映画。164人ものカメラマンが望遠レンズを駆使して選手たちの表情や動作を追い、日本映画史上空前の興行記録を打ち立てた。

カメラマンとして作品に携わり、ただ一人国立競技場のフィールド内でカメラを回していた山口益夫氏に、当時の撮影秘話や公開後に巻き起こった論争などについて話を聞いた。

なお、BS12 トゥエルビでは本編上映前の夜6時55分から、山口氏が作品の見どころと当時の熱狂を東京・渋谷の市川記念室で語るミニ番組「人間を撮る。カメラマン山口益夫、1964東京オリンピック撮影秘話」が放送される。

──半世紀前の作品がこうして放送されるのは、どんなお気持ちですか?

やっぱり懐かしいですよね。あとは、「50年以上前によくやったな」という思いがします。僕は当時31歳で、カメラを持って5年目くらい。当時は1000ミリの望遠レンズなんて見たこともなかったんだから(笑)。

──山口さんがフィールド内のカメラマンに抜てきされたのはなぜですか?

手を挙げて選ばれたわけではないですから、理由は分かりません…。ベテランカメラマンが大勢いましたけど、誰もやりたくなかったんじゃないかな。「サンケイスポーツに“バカ”がいる」って誰かが言ったんでしょうね。何となく、決まりました。

──たった一人フィールドの中心にいて撮影するというのは、どんな気分でしたか?

撮影台から観客席を見回すと、5万人みんなに見られている感じがするんです。足が震えましたね。何かしていないと落ち着かないと思ったから、望遠レンズで観客席を見て、きれいな女性を探したりしていましたよ(笑)。

──当時、完成したものをご覧になっていかがでしたか?

市川監督の映像の選び方が、すごいと思いましたね。砲丸投げの選手のゼッケンの動きだったり、選手の顔のアップだったり。普通はカットしちゃうところを、延々と使っている。アスリートとしてでなく、人間として選手を記録したかったんでしょうね。この映画が、ドキュメンタリー映画の撮り方自体を変えたと思いますよ。

──この作品は公開後、“記録なのか芸術なのか”という論争を巻き起こしました。山口さんはどのようにお考えでしょうか?

撮っている者から言いますとね、「記録」も「芸術」も、頭にないんですよ。監督から意見は聞きますけど、本当にその指示の意味を理解していた人って、カメラマンの中にいなかったんじゃないかな。あれだけ速い動きを撮る時に、芸術もクソもないじゃない(笑)。

──当時を知らない人がこの映画を見る時には、どんなところに注目してほしいですか?

例えばマラソンでは、沿道で応援している人々もたくさん映っています。2階の屋根の上に乗っている人とかね。そのくらいみんな、オリンピックのマラソンを見たかったんですよ。そういう今では考えられない光景とかエネルギーを楽しんでほしいと思いますね。