韓国大統領の絶対権力がスグに瓦解する微妙なお国事情とは?

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 韓国の朴槿恵大統領が知人に国政介入させていたスキャンダルにより、任期以前の辞任を余儀なくされている。歴代の韓国大統領をみても、クーデターや不正発覚による逮捕、自殺など政権末期や退任後に「有終の美」を飾ることのできた人物は少ない。朝鮮半島情勢に詳しいジャーナリストの高英起氏はこう分析する。

「そもそも朝鮮半島は、統一体制時代もあったが、分裂していた時代のほうが長くさまざまな体制が入り乱れていた。高句麗、百済、新羅の三国時代のように、地方間の不和も未だに根強いです。大統領に権限が集中するのは、そうした国土との相互作用によるもの。そのぶん、特権を乱用したり縁故主義に傾きやすいのです」

 外交的にも地政学上、つねに軋轢や侵略の脅威にさらされるだけに、民族を一つにまとめ上げるための強い権限とリーダーシップが韓国大統領に求められるのだ。任期中は刑事訴追を受けず、大統領令や戒厳令、公務員の罷免などの権限が集中する。副大統領が初代以降廃止されたこともその一因だ。

 一方、任期は1期5年と短く、再選もできない。

「5年では継続的な政策議論ができませんが、制度改革と経済政策を同時にするのは難しい。ただ、彼女の場合は短い任期で一定の成果は挙げたといえます」

 朴槿恵氏の業績で記憶に新しいのは、’15年12月に発表された、従軍慰安婦問題に関する日韓合意の発表だ。安倍総理は「心からのお詫びと反省の気持ち」を表明し、日本政府は元慰安婦支援などを目的に10億円を拠出。一方、韓国は、在韓日本国大使館前にある慰安婦像の撤去への努力を合意した。’16年6月には日米韓で初のミサイル防衛共同演習を行い、7月には在韓米軍にTHAADミサイル(終末高高度防衛ミサイル)を配備決定。11月には日本と軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を結んだ。中国とは自由貿易協定を締結し、中国を最大の貿易相手国で、韓国国債の最大の保有国とした。

 歴史を紐解けば、’87年までは開発独裁だった韓国が民主化されたのは’88年以降。憲法が改正され直接選挙によって大統領が選出されることになった。

「’60年代から’80年代には民主化運動があったものの、国民はそれなりに独裁を受け入れていた。それからわずか30年。まだ民主化の過程にあるのです」

◆世界の民主主義は限界に来ている?

 次期韓国大統領の課題は何か。

「政治的混乱がある程度収まったらやはり経済。国民は食べていければいいわけですから、嘘でもいいから国民生活向上に対する公約を突き通せるかが鍵になります」

 一方、朝鮮労働党の一党支配体制が続き、ミサイルや核問題で各国を揺さぶる北朝鮮はどう立ち回っているのか。

「金正恩氏は、自身の指導体制が数十年続く前提で政治を行っているため、韓国よりは“安定感”がある。小国なりの生存戦略で、世界に一定の存在感を示しています」

 一方、韓国は民主主義によって混乱が生じる。

「EUの混乱やトランプ現象然り、近年は民主主義の限界が来ているのかもしれない。朝鮮半島の現況も、最も象徴的といえるでしょう」

 日本も隣国を他山の石とし、自らの民主主義を問い直すことが必要なのかもしれない。

【高 英起氏】
北朝鮮問題専門サイト「デイリーNK」編集長。在日コリアン2世。韓国を含めた半島情勢に詳しい。著書に『コチェビよ、脱北の河を渡れ』(新潮社)など