ドナルド・トランプ次期米大統領(写真:ロイター/アフロ)

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 来年1月20日に米大統領に正式就任するドナルド・トランプ氏の閣僚人事が進められている。経済閣僚では、財務長官に元ゴールドマン・サックス幹部でヘッジファンド、デューン・キャピタル・マネジメントCEO(最高経営責任者)のスティーブン・ムニューチン氏、商務長官に知日派で著名投資家のウィルバー・ロス氏を起用するなど、ウォール街に近い大物が名を連ねた。

 さらに、注目されていたゴールドマン・サックス社長兼COO(最高執行責任者)のゲーリー・コーン氏が、国家経済会議(NEC)委員長に就くことが決まった。また、主席戦略官・上級顧問に同社で勤務経験のあるスティーブ・バノン氏の起用も決まっており、「トランプ政権はさながらゴールドマン・サックス政権のようだ」(市場関係者)との声が上がっている。

 その中心人物であるムニューチン氏は、知る人ぞ知る「映画プロデューサー」という別の顔があることは、日本では知られていない。もともと映画好きといわれるムニューチン氏は、趣味が高じてラットパック=デューン・エンターテイメントという映画製作会社を設立している。そこから生み出された作品には、世界興行収入第1位の『アバター』はじめ、『X-MEN』『ダイ・ハード4.0』『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』といった人気娯楽作品が目白押しだ。映画製作は巨額な資金を必要とするが、まさにゴールドマン・サックスで培った資金調達ノウハウが生かされているわけだ。

 また、ムニューチン氏は、リーマンショックで経営破綻したインディマック銀行を15 億5000万ドルという破格の安値で買収し、昨年、米CITグループに34億ドルで売却。巨額の利益を手にしたが、その利益の一部も映画製作につぎ込まれたといわれている。映画プロデューサーでヘッジファンドCEOとして「金儲けのうまい」ムニューチン氏は、ハードネゴシエーターとして、また次期財務長官として米国経済を牽引していくことになる。

●米国景気上向きか

 ムニューチン氏は、メディアのインタビューで「法人と中間所得層を対象とした減税、規制緩和、インフラ投資、2国間の貿易協定を通じて、米国は3〜4%の経済成長を達成できる」との見方を披露した。とくに法人税を引き下げることで、「米国に大量の雇用が戻ってくる」とも強調している。

 また、ゴールドマン・サックス出身ということから、銀行規制の緩和に積極的な姿勢を示しており、銀行株が急騰するきっかけをつくった。オバマ政権はリーマンショックのような金融危機の再発を防止するため「ドッド・フランク法(金融規制改革法)」を策定・施行したが、ムニューチン氏は「同法は複雑すぎて融資の減少につながっている」と批判している。ムニューチン氏は「ドッド・フランク法を分解する」とまで語っている。

 大型減税と銀行規制の緩和により、米国景気はさらに上向くことになろう。映画プロデューサーでもあるムニューチン氏にとって、それは自らの映画製作会社の新作興行を後押しすることにつながる。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)