日経トレンディ

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“個人生活を刺激する流行情報誌”を標榜する月刊誌「日経トレンディ」(日経BP)。

 そんな同誌が毎年12月号(11月発売)で発表して話題を集めている人気定番企画が、その年の「ヒット商品ベスト30」と、翌年の流行を予想した「ヒット予測ランキング」である。

「ヒット商品」と銘打ってはいるが、実際に紹介されているのは商品以外にもサービスやイベントや映画作品なども含まれており、ジャンル問わず流行ったもの&流行りそうなものを紹介していくというスタンスだ。

●選考基準は“売り上げ”“販売量”だけではない

 さて、今回はそんな同誌の看板2企画のうち、「ヒット予測ランキング」のほうに注目したい。

 たとえば2016年12月号では、「2017ヒット予測Best30」として17年に流行りそうなものを紹介しているが、果たしてこの予測は、どれほど的中するのだろうか。

 そこで過去3年分の「ヒット予測ランキング」を振り返り、同誌の予測がどの程度的中しているのか検証していきたい。

 ちなみに、あらかじめ同誌の選考基準を紹介しておくと、16年12月号には以下のように記載されている。

「16年10月から17年にかけて登場する商品やサービス、施設についての情報を収集し、その結果からベスト30を選んだ。売り上げが伸びそうなものだけでなく、業界への影響度、消費者へのインパクトも考慮し、総合的に評価した。

 選考の基準は、
(1)その商品の登場が、これまでにない新しい市場を創造する可能性を持っている
(2)その商品の売り上げ、販売量が延びることが予想される
(3)その商品が登場することで、消費者のライフスタイルが大きく変わる可能性がある
(4)追随するサービスが出るなど業界に大きな影響を及ぼす可能性がある
の4つ。

 これらを基準にして、日経トレンディ編集部がベスト30を決めた」
(「日経トレンディ」16年12月号より抜粋)

 要約すると、単純にビジネス的にヒットしそうなものだけでなく、消費者やその業界内の感覚的に流行ったものも含めているということだろう。

 それでは、13年11月発表の「2014ヒット予測」の1〜20位、14年11月発表の「2015ヒット予測」の1〜20位、15年11月発表の「2016ヒット予測」の1〜20位を順に紹介し、実際にランキング上位のものがヒットしたかどうかを検証する。

●「2014ヒット予測」とその結果

1位 毎日自作サプリスムージー
2位 ハリー・ポッターとOSAKAの“城”
3位 グランピング・ゴルフ
4位 お値打ち4Kテレビ
5位 Lサイズスマホ
6位 ライフスタイルモール
7位 ネット巨大フリマ
8位 外資系“お・も・て・な・し”ホテル
9位 エクストリームけん玉
10位 携帯ハイレゾプレーヤー
11位 小容量トクホパン
12位 親・子・孫 3世代リゾート軽井沢
13位 スイーツ系ウイスキー&ウオツカ
14位 トップガン女子
15位 沈黙フェス
16位 東北カリスマ演出トレイン
17位 コペン&ビート
18位 フリクション いろえんぴつ
19位 アレルカット水クリーナー
20位 プレステ 4
(「日経トレンディ」13年12月号より抜粋)

 見渡すと、予想的中&大ヒットといって異論がなさそうなものは、2位の「ハリー・ポッターとOSAKAの“城”」だろう。これは、14年7月15日にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)内にオープンした「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」のことを指している。14年7月の入場者数は87万人、8月は133万人、9月は135万人を記録し、当時の単月の最高入場者数を2カ月連続で塗り替えるなど、破竹の勢いだったことを記憶している人も多いだろう。

 実際、その翌年に同誌で発表された「2014ヒット商品ベスト30」でも「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」は3位にランクインしている。

 また、「フリクション いろえんぴつ」は翌年のヒット商品ランキングの19位に入り、「プレステ 4」は話題性でも販売台数でもヒットしたといえる。

 だが、それ以外はいまいちピンとこないものが多い。1位の「毎日自作サプリスムージー」や、3位の「グランピング・ゴルフ」は流行したとはいいがたい。もちろん、一部の人々の間で熱狂的に流行ったという見方はできるだろうが、全国的にみてブームになったとはいえない。4位の「お値打ち 4Kテレビ」や5位の「Lサイズスマホ」も同様で、メディアを大きく騒がせるなどの大ヒットになったとはいえない。

●「2015ヒット予測」とその結果

1位 グルメ“健効”系フーズ
2位 セルフィースマホ
3位 北陸トライアングル
4位 ライスミルク
5位 得するスマートウエア
6位 たまごっちラリー
7位 遺伝子診断サプリ
8位 ともだちロボット
9位 超体感ゲーム
10位 スター・ウォーズ・カウントダウン
11位 ふるさと納税パーティ
12位 都市型パリピフェス
13位 コンビニ・バル
14位 ビッグデータスポーツ観戦
15位 燃料電池車
16位 フローズンスモア
17位 Siriナビ
18位 ノンアルトクホ
19位 ダイソン360Eye
20位 2.5次元ファッション
(「日経トレンディ」14年12月号より抜粋)

 予想的中の筆頭といえそうなのは、8位の「ともだちロボット」。ソフトバンクが開発した人型ロボット「ペッパー」は、本体価格19万8000円(税抜)で、3年間支払っていかなくてはいけない基本料、保険料などが月々に別途かかるという高額商品ながら、初回販売分1000台がわずか1分で完売したとして話題になった。

 翌年に同誌で発表された「2015ヒット商品ベスト30」でも「ペッパー」は11位にランクインしている。

 また、北陸新幹線延伸の効果で金沢・能登・富山の観光ブームが到来すると予測されていた3位の「北陸トライアングル」も、金沢だけが突出していた感はあるが、的中したといえそうだ。

 だが、それ以外は、やはりヒットしたといえるものは少ない。

 食品の機能性表示制度の解禁に伴いヒットするだろうと予測されていた1位の「グルメ“健効”系フーズ」などは、残念ながら大ブレイクしたとはいいづらい。そして、スマホでの“自撮り”文化が定着し始めたため「セルカ棒」は大ヒットしていたが、2位と予想されていた自撮り機能を充実させた「セルフィースマホ」は、スマホの勢力図を塗り替えるほどの勢いはなかった。

●「2016ヒット予測」とその結果

1位 新電力トリプルセット割
2位 激安オムニ家電
3位 街かどインスタプリント
4位 セルロース・ナノ・コスメ
5位 PlayStation VR
6位 “テラハ風”エコノミーホテル
7位 G-SMART
8位 ベランダ・グランピング
9位 ドラクエXI&ビルダーズ
10位 食べるコスメオイル
11位 “無充電”スマホ
12位 近大ナマズ
13位 乳酸菌チョコレート
14位 ソーシャルカーシェアリング
15位 デジタルウインドウ
16位 4代目プリウス&SUV
17位 京都鉄道博物館
18位 ザ・フライング・ダイナソー
19位 超ユニバーサルフード
20位 疲れないハイヒール
(「日経トレンディ」15年12月号より抜粋)

 そして今年のヒット商品を見てみると、こちらも的中数は少なめだ。

 10月に発売されて初週販売台数が5万台を突破し、品薄状態がいまだ続いている5位の「PlayStation VR」は、売り上げと話題性の双方でヒットしたといえそうだが、前年から大きな話題となっていたので妥当な結果だ。

 そして、1位の「新電力トリプルセット割」は、電力自由化によって提供される新しいサービスとしてメディアではこぞって取り上げていたが、多くの一般家庭はまだ様子見の段階にあるのか、大ブレイクは果たしていない。

「激安オムニ家電」や「街かどインスタプリント」も、世間の認知度は低い感があり、予測の2位、3位としては物足りないヒット具合だ。

●的中率の低さはしかたない?

 過去3年分の予測とその結果を検証してみたが、的中率はさほど高いとはいえなさそうだ。

 だが、選考基準にある通り、この予測は「売り上げ、販売量が延びる」ことだけを指針にしているわけではなく、多角的な視点から予測しているため、今回の分析には異論もあるだろう。ただ、心情的には、取り上げられた商品が、わかりやすいかたちで“ヒット”することを期待してしまう。

 1987年の創刊以来、約30年も日本のトレンドを紹介してきた「日経トレンディ」でも高い的中率を実現できないということに鑑みると、ビジネスムーブメントを的中させることは極めて難しいといえる。
(文=昌谷大介/A4studio)