28日、日韓両政府が従軍慰安婦問題で合意し「最終的かつ不可逆的」に問題が解決されてから1年がたった。写真は在韓日本大使館前の慰安婦像。

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2016年12月28日、日韓両政府が従軍慰安婦問題で合意し「最終的かつ不可逆的」に問題が解決されてから1年がたった。

15年12月28日に行われた日韓外相会談では、(1)日本政府が旧日本軍の関与を認め問題の責任を痛感する(2)安倍晋三首相が心からおわびと反省の気持ちを表明する(3)元慰安婦を支援するため韓国政府が設立する財団に日本側が10億円程度を拠出する(4)在韓日本大使館前の慰安婦を象徴する少女像について韓国政府が適切に解決する、などの内容が合意された。日韓両外相は共同発表で慰安婦問題の解決を確認、今後、互いに非難や批判を控えることを明言した。

この合意内容について、日本国内では政府が支払う「慰安婦支援金」がとりわけ物議を醸したが、8月下旬には政府が韓国の「和解・癒やし財団」への10億円の拠出を閣議決定、拠出金はその後、韓国側が決定した支給配分により元慰安婦や遺族らに現金で支給された。

一方、韓国で世論の大きな反発を呼んだのが(4)の慰安婦像の扱いだ。岸田文雄外相は合意後、記者団に慰安婦像について「適切な移転がなされるだろう」と述べたが、これに対し韓国外交部は「誤解を招く言動は慎むように」と警告した。その後、韓国政府は一貫して「民間団体が自発的に設置した慰安婦像の扱いは、政府がああしろこうしろと言える事案ではない」との立場を示し、「移転」に向けた具体的な動きはみせていない。

こうした政府間のやりとりと並行し、動静を見守る韓国国民の一部からは「自分たちで慰安婦像を守ろう」という活動が始まった。慰安婦像の周りでは毎週水曜、日本政府に謝罪などを求める「水曜集会」が以前より開かれていたが、合意内容の発表を受け慰安婦像周辺には撤去から像を守るため女子学生などが集結、極寒の中で徹夜の座り込みを2カ月余りにわたって続けた。

その後、このソウルの慰安婦像周辺でこそ組織立った座り込み活動は行われていないようだが、同様の像を新設する動きはむしろこの1年活発化している。今年8月現在で韓国国内に40体を超えていた像は以降も各地で増え、ソウルには像ではなく元慰安婦の追悼公園も完成した。また、ドイツや中国・上海、米ワシントンなど海外でも相次いで像が新設されたほか、英国やドイツ、台湾では、女性が慰安婦像に扮(ふん)する“生きた慰安婦像”のパフォーマンスが行われた。

この慰安婦像、各地の日本大使館前などに向かって被害を訴える象徴としての意味を持つものだが、今年後半には別の場所にも姿を見せるようになった。朴槿恵(パク・クネ)大統領の親友による国政介入事件で朴大統領の支持率が1桁にまで落ち込む中、「国民や元慰安婦の意に反し日本との合意を決めた」朴政権を糾弾する象徴として存在感を示し始めたのだ。

朴大統領の弾劾訴追案の国会採決を目前にした12月8日には、トラックの荷台に載せられた白色の巨大慰安婦像が国会前に登場した。高さ約6メートル、肩には「弾劾せよ!」と書かれたたすきを掛けている。市民団体が準備したというこの慰安婦像を前に、20代の女性は「像を見た途端に怒りが込み上げた。弾劾がきっと可決されることを願う」と話した。

女性が望んだ通り、朴大統領の弾劾案は翌9日国会で可決され、韓国では反対世論が根強くあった慰安婦合意の見直しを求める動きが出てきている。朴大統領の職務停止以降、大統領権限を代行する黄教安(ファン・ギョアン)首相は野党などからの主張を受け「朴政権の主要政策の基調は変えない」として見直しはないとの立場を明言したものの、こうした黄氏の姿勢に反発する声もあり、韓国国民の反応は複雑なようだ。

「最終的かつ不可逆的」な問題解決がなされたはずが、何かもやもやしたものを残したまま両国は合意から2年目を迎える。そして「適切に解決」が約束されたはずの慰安婦像は、日本が望んだ移設・撤去の方向には進まず、むしろその活動の場を広げつつあるとも言える。慰安婦問題と慰安婦像は、これからどこに向かうのだろうか。(編集/吉金)