中国の若者が激怒した「ヴィクトリアズ・シークレット」の失態

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ヴィクトリアズ・シークレットは先日、パリで開かれたファッションショーで、中国人消費者を引き付けるために、ドラゴンをテーマにした下着を披露した。スーパーモデルのエルザ・ホスクは体にドラゴンを巻き付けて登場。アドリアナ・リマはドラゴンが刺繍されたスチレット・ブーツを身に着けた。

しかし、中国人の若者の目にこの趣向は低俗で不格好なものと映ったようだ。中国のミニブログ微博には「本当に醜い」、「中国の文化を分かっていない」などと辛辣なコメントが並んだ。

コスモポリタンのライフスタイル編集者のヘリン・ユングは、ショーを”人種差別的”とすら表現した。彼女は、「ヴィクトリアズ・シークレットはドラゴンをモデルに巻き付ければ、中国の若い消費者とつながれると思ったようだ。とんでもない見当違いだ」と批判した。

ヴィクトリアズ・シークレットのやり方の何が悪かったのか。

まず、中国文化に対する理解があまりにも表面的だ。中国文化においてドラゴンは、皇帝の威厳を象徴している。皇帝が着る服は龍袍(ドラゴンローブ)、皇帝の玉座は龍椅(ドラゴンチェア)と呼ばれ、皇帝の体は龍体(ドラゴンボディ)と呼ばれる。中国人は自身を龍の子孫と考えている。

下着に龍をあしらうなんて非常識

つまり龍は神聖なシンボルで、崇拝の対象だ。セクシーなモデルの下着姿にドラゴンを合わせることは、不愉快で不適切だ。

次に、中国人消費者、とりわけランジェリーに興味がある人々は中国の改革時代に成長した若い世代である。古い社会のさまざまなプレッシャーを背負う彼らは、欧米のライフスタイルに惹かれ、ドラゴンを”古い社会”の代表と見たて、そこから逃げようとしている。

彼らは反乱の世代であり、時代遅れのやり方を拒否する。中国人の若者は愛国者ではあるが、中国文化に対する誇りと、欧米の洗練された消費との間で板挟みになっている。

中国人消費者と関係を作り、信頼を得るには、彼らの心情を理解しなければいけない。ナイキは企業スローガンを紹介する中国向けの90秒の動画広告で、パワフルで反抗的なメッセージを伝えた。

ナイキが中国で成功した理由

動画は、学校帰りの若い少年がサッカーボールをリフティングしている場面で始まる。その後、バスケットボールのドリブルをする女子たち、駆け抜ける自転車、スケートボーダーとフリスビーのプレイヤーが次々に現れる。最後のシーンはローラーホッケープレイヤーやBMXのバイクライダー、ゴルファー、ランナーに続き、”Just Do It”のメッセージが現れる。

この広告はスポーツをテーマにしているように見えるが、同時に中国人が毎日経験している内面の緊張も描き出している。若い中国人たちは、家族と社会から学業や仕事での成功を期待され、重圧を感じている。また、中国文化は共同体意識が強く、同調圧力も感じている。

ナイキの動画は、型にはまった考え方に対する反抗的な態度を応援していると受け止められた。「あなたはそれを栄光のためにする必要はない。あなたはそれを有名になるためにする必要はない。他の人と同じようになる必要もない」と動画のメッセージは訴えた。

つまり、何かをするために正しい方法なんてない。Just Do It(行動あるのみ)なのだ。そのメッセージは中国の若者に強く訴えかけ、彼らが自身の道を見つけること、他の人々と異なることを後押しする。2か月おきにナイキのシューズを買う中国人若者がいるのも納得できる。

中国のミレニアルの消費者は今後10年、消費の成長の主要なけん引力となるだろう。企業は彼らの心をつかむため、その内面を十分に理解しなければならない。