前回の箱根駅伝で東洋大は青山学院大に次ぐ2位。1区で青学大に53秒差をつけられたが、2区でエースの服部勇馬が区間賞獲得の走りをみせ、22秒差まで追い詰めた。しかし、3区で期待された勇馬の弟の服部弾馬が、再び差を広げられてしまった。そこからは、青学大の独走状態。東洋大も底力を見せて2位になったとはいえ、総合タイムで7分以上の大差をつけられる完敗だった。

 そのチームから、エースの勇馬を含む4年生5名が抜けた。今年の駅伝シーズンには準エース格の口町亮(4年/関東インカレ5000m3位、1万m7位)が故障。15年全日本大学駅伝で7区区間賞の堀龍彦(3年)は不調で使えず、22大会連続で4位以内を守ってきた3大駅伝で、出雲駅伝は9位、全日本は6位に沈むという屈辱を味わった。

「出雲と全日本は箱根を想定し、そこでしっかり走るためにこれまで出ていなかった選手に経験をさせたいという狙いだったので、今年は勝負より育成を目的にして挑んできました。その中で服部弾馬(4年)や櫻岡駿(4年)を序盤に使い、流れを作って未経験者に経験を積ませたいというのがありましたが、口町や堀という経験者が使えなかったことで9位、6位と、目標にする順位までたどり着けませんでした。ただ箱根のエントリーに関しては口町や堀が復調しつつありますし、4年生の牧浦聖士や橋本澪もだいぶ調子を上げてきたので、総力戦として出雲や全日本よりいい形で臨めるようになっています」

 そう話す酒井俊幸監督は、正直に言えば、しんどい状態だと明かす。その状況の中で、箱根は3位以内を狙うオーダーなのか、優勝を狙うオーダーなのかという判断はあるが、前回2位のチームであるだけに「打倒・青学」を宣言しなければいけない立場にいることは間違いない。

 そうなるとポイントとなるのは5区だ。

「青学は神野(大地)くんが卒業して抜けたので、5区はきつくなっていると思う。我々も"山の神"が抜けたあとの5区の難しさを経験しているので、そこでしっかり勝負できるようにしていきたい。5区で大逆転というのは距離が短くなった分パーセンテージは減ると思いますが、大きなミスが出てくる可能性もある区間。戦力が均衡しているチーム同士なら平地区間ではつかない2〜3分という差をつけられることもあるので。その面では上りの適性がある選手が出てくれば一気に有利になると思います」

 その点、東洋大は前回、五郎谷俊を区間3位の1時間19分53秒で走るまでに育てた実績があり、青学大を上回る選手を起用できる自信はある。下りの6区に、前回区間4位の59分41秒で走った口町亮と同程度で走る選手を持ってくることができれば、4区、5区で青学大と勝負できると考えているのだ。

「復路は気候にもよりますが、風が強いとか寒くて雪が降っているなかでタイム差があると相当きつくなる。序盤の6区と7区が重要になると思います。各大学を見ると層が厚いという学校は少なくて、一番安定しているのは青学大だと思う。だから、うちもそこにキーパーソンを置かなければいけないと思います」

 前回は櫻岡が7区を走って区間2位になっているが、そこには酒井監督が「調子を上げてきた」と安堵している主将の橋本や、今季序盤はリオデジャネイロ五輪を狙っていたエース・服部の練習パートナーを務めてスピード強化を図った堀などがいる。その堀は11月の上尾シティハーフでも自己新の1時間03分46秒を出した。

 ただし、5区できっちり勝負をして、それを6区、7区につなげるために絶対に必要なのは、往路の4区まで確実にライバルを視界に捉えられる位置にいなければいけないということだ。青学大の6区には下りのスペシャリストの小野田勇次(2年)がいることを考えれば、そこまでに青学大より前にいることが必要条件になってくる。全日本で早大がやったのと同じように、1区から攻める走りで相手が焦る状況に追い込まなければならない。

 その役目を担うのが服部だろう。ただ、かつての大迫傑(早稲田大)のようにスタートから飛び出して大差をつけるという走りは難しいので、中盤を過ぎてから持ち味であるキレを生かしてスパートを仕掛け、創価大のムソニ・ムイル(1年)や早稲田大の武田凜太郎(4年)が1区に出てくれば、彼らの走りを利用して、青学大との差をいかに広げられるか、ということになる。

 そこで十分なリードを得て、花の2区で口町を起用し、3区には上尾シティハーフを1時間02分05秒走り5位に入った相澤晃(1年)を置いて流れに乗せる。そうなれば、前大会より距離が延びた4区では、準エース格の櫻岡が青学大の準エース田村和希(3年)を相手に粘るというレース展開に持ち込むことができるだろう。

 打倒・青学大を果たすために必要なのは、先手を取ること。それが一矢を報いるための唯一の作戦ともなる。東洋大が優勝するために大きなカギとなるのは、1区を走るエース服部弾馬にかかっているといってもいいだろう。

折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi