’15年流行ったローストビーフだが「高すぎる」という声も

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 外食市場の調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」によると、今年流行となったグルメで「ローストビーフ」が2位にランクインした。飲食情報サイト『ホットペッパーグルメ』でも今年に入り、検索数が急激に伸びた。

「この流行には’15年の豚レバー生食規制が裏側にあるんです」と語るのはフードジャーナリストのはんつ遠藤氏だ。’11年の牛生肉規制に続いて行われたこの規制の裏で、表面にしっかり火を通しながらも生肉の気分を味わえるローストビーフが注目されたのだ。

「業界的には、もともと人気のなかった赤身肉を高く売るための戦略的意図がありました。値段の安い赤身肉を熟成させた『ドライエイジングビーフ』というブランドが人気を得て赤身の価値を上げることに成功しましたが、今度は値段が高くなりすぎた。そこで、薄くてもおトクに食べられる印象を与えるローストビーフを売り出すことにしたのです」

 安い肉を高く売る業界の意図は、高級焼肉店でザブトンやイチボなどの珍しい部位をブランド化しているところからも垣間見える。今では霜降りよりも、珍しい赤身部位の値段が高いこともあるという。

 だが、これ以上、値段が高くなると牛肉を気軽に食べることも難しくなってしまう。

◆業界が次に仕掛けるのは「やきとり」ブームか

「そこで新たな動きがまた起きています。一つは『レアチャーシュー』。これはミシュラン1つ星を獲得した巣鴨の人気ラーメン店『蔦』の人気にあやかって半生のチャーシューを売り出そうという流れです。ですが、豚肉もすでにブランド豚が根付いているため仕入れ値はかなり高め。そこで、『やきとり』ブームを作る動きが出てきたのです」

 確かに鶏肉はほかの食肉と比べても格段に安い。しかし、飲食業界のデータによると「やきとり専門店」は縮小傾向にあるようだが……。

「ひとえに『やきとり』と言っても、例えば、山口県ではガーリックパウダーを必ずまぶしたり、沖縄ではタレや塩に加えてニンニクや味噌など4種類の味を楽しめる。大手チェーンの居酒屋では、ささみチーズ味などの創作やきとりがありますよね。こうしたご当地やきとりが人気なのです」

 10月に行われた「やきとリンピック」は2日間で7万5千人を動員した。まだまだ51万人を動員したB級グルメのような話題性はないが、『おとなの週末』や『東京カレンダー』などグルメ雑誌でも、徐々に特集が組まれるようになってきている。

「串焼きなら、鶏肉でなくても『やきとり』として売り出せる点がポイント。広辞苑にも串焼き肉全般を指す言葉として定義されてます」

 ブラジル料理のシュラスコも串に刺した鮎も『やきとり』になる。これによって、仕入れ値の安い食材も自由にブランド化することができると言うわけだ。

「もちろん焼いた鶏肉も『やきとり』。愛媛県四国中央市では鶏もも肉の揚げ物を『やきとり』と称するなど独特の文化がある。今後はエゾシカを使った北海道・阿寒湖初の『阿寒やきとり丼』のように、ご当地ものの珍しい『やきとり』を求めるファンが現れるのでは」

 とはいえ、完全にやきとりブームに移行すると考えるのは尚早だ。

「仕入れ値が安くなっても、串を刺す作業があるため他の業種よりコストや手間暇がかかるんです」

 縮小状況にある業界内で唯一、売り上げを伸ばしている「鳥貴族」は、痛みやすい鶏肉の鮮度を保つために、注文が入ってから串打ちをしている。確かに、気軽に参入するのは難しい業種かもしれない。

【はんつ遠藤氏】
フードジャーナリスト、料理研究家。テレビや雑誌、書籍などでの飲食店紹介や、飲食店プロデュースなども行う。飲食店取材軒数は8500軒を超え、著書も多数。