公開された試作機「XB-1」(画像:Boom Technologyの発表資料より)

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 コンコルド以来となる「超音速旅客機」のプロジェクトが現在、進められている。その名は「XB-1」。マッハ2.2で飛び、ニューヨーク・ロンドン間を3時間15分で結ぶという。とはいえ、プロジェクトはまだ、2017年にようやく初飛行という段階である。果たして、実現の可能性はどれだけあるのだろうか?

 一部では既に、「コンコルドよりも速い夢の旅客機」などとも囁かれているが、まず一つ、重要な前提を指摘しておこう。

 コンコルドの公認された最速記録は、ニューヨーク・ロンドン間、2時間52分59秒である。1996年の記録だ。これはテスト飛行ではない。乗客を乗せ、通常通りの機内サービスを提供しながら達成した記録だ。

 ちなみに人類が作った航空機の最速記録は、時速1万2,144km(マッハ9.68)である。NASAが開発したX-43という実験機(当然ながら旅客機ではないし、パイロットもいない無人機)が2004年に達成した。無意味な想定だが、この速度でニューヨーク・ロンドン間を飛んだ場合、到着まで30分を切る。

 コンコルドが大事故を起こす直前に書かれたブライアン・トラブショー著『コンコルド・プロジェクト 栄光と悲劇の怪鳥を支えた男たち』(翻訳出版:原書房、2001年)という本の中に、「超音速飛行の未来」と題し、「コンコルドを超える旅客機には何が求められるのか」を論じる章がある。その内容を概説する。

 ひとつ、騒音と排気ガスの基準を満たさなければならない。ふたつ、最低でもマッハ2の超音速で巡航が可能である。みっつ、5,000マイル以上の航続距離を持ち、さらなる延長の可能性を有すること。よっつ、3種類のシートクラスを用意できること。いつつ、亜音速と超音速の切り替えが効率的に行い得ること。むっつ、十分な収益を回収できる程度の割増料金で運行できること。

 「コンコルドを超える、21世紀の超音速旅客機」というのは浪漫のある話ではあるが、少なくとも、「コンコルドより速く飛べればいいというものではない」ということはお分かりいただけただろうか。

 前述の6条件の中で、おそらく最も難しいのは最後のものだろう。2000年7月の墜落事故(死者113名)がコンコルドの信頼性に致命的な打撃を与えたことは確かだが、それでも、コンコルドに止めを刺したのは2001年9月の同時多発テロによる航空機産業全体の減収であったと言われている。コンコルドの最後のフライトは2003年である。超音速旅客機は、早くて便利だったかもしれないが、コストが高く運用は容易ではなかったのだ。

 さて、XB-1に話を戻そう。XB-1を開発するアメリカの航空ベンチャーBoom Technology(ブーム・テクノロジー)は、こう主張している。「コンコルドの時代には、超音速飛行を低コストで行う技術がまだなかった。現代においては違う。我々の技術は、超音速飛行を、通常のジェット機と変わらないコストで実現することができる」。

 これが本当なのなら、安全性の問題は別としても、コンコルドが抱えていた最大のアキレス腱をXB-1は克服していることになる。だが、いずれにせよ、商業就航は2023年を目標とする、という先の長いプロジェクトである。期待しながら待たせてもらうとしよう。