増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

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1.バッドエンドという宿命
昔の大河ドラマが大好きな私は、古くは「風と雲と虹と」や「花神」「獅子の時代」など様々なドラマをセリフを暗記するほど見まくりました。正確には大河ドラマではなくNHK新大型時代劇として放映されたのですが、「真田太平記」はおもしろすぎて終わるのが嫌になるほど熱中しました。(なので信繁より左衛門佐がしっくりくる)

しかし歴史ドラマの結末は常にネタバレしています。大坂夏の陣がどうなったかは小学生でもわかる史実。真田丸でもどれだけ主人公・幸村が活躍したところで、歴史を変えることはできません。決まっている結末にもかかわらず、幸村は「望みを捨てぬ者だけに道は開ける」という、真田一族のメッセージを掲げて最期まで戦い抜きます。その姿勢が共感を呼んだのだと感じます。

圧倒的軍事力で徳川軍に包囲された大阪城が、何をどうやったところで勝つというエンディングは考えられません。そんな中で幸村は常にポジティブな思考を持っただけでなく、不利な中でもでき得る最善手を次々と打っていきます。これこそが幸村の指揮官としての最大の力ではないかと思います。

2.「捨てなかった」だけではない
不利な豊臣勢を率いる幸村の行動は、望みを捨てなかっただけではありません。圧倒する徳川軍の布陣の前でも希望を捨てず、出城を築いて攻撃を仕掛け、敵の弱点に向けてゲリラ戦を行い、影武者も交えて大将家康を狙うなど、攻撃の手を緩めません。つまり不利な戦況に呑まれることなく行動できたことこそ幸村の凄さです。

ここは作戦行動においてとても重要です。戦争は単純な戦力差だけで勝敗が決まるのではありません。古来ゲリラ戦など、少人数で大軍を打ち破る戦闘はいろいろありました。その際に重要なことはモラール(士気)です。

ただ単にポジティブな思考で戦いに勝つことはできませんが、劣勢に立てば冷静さを失い、打てる手があっても気後れしたり、決断が鈍ったりするのが人間の性。味方の内紛を煽る徳川勢の調略は、元々信玄の眼と呼ばれた、真田昌幸が得意とする戦法でした。昌幸の息子である幸村はこうした流れの転換についても学んでいたのかも知れません。

戦いは必ず流れがあります。敵が優位に見えても乾坤一擲の逆転のチャンスはあり得る訳で、次々と策を打っていく指揮官に兵士は士気を燃え上がらせます。望みを捨てないという受け身なことではなく、自ら道を開いていったから「道は開けた」という、当たり前のことなのかも知れません。しかしそんなことが実現できた武将は決して多くはないのです。

.格言「兜町は明日もある」
株の格言はビジネスの時機も現しています。「トランプ氏が大統領になれば超円高」とほとんどの評論家が言っていたように、後講釈ではいかようにも説明はできます。しかし上がったり下がったりするのは株や為替の相場だけではなく、ビジネス環境のすべてだともいえます。

良い時も悪い時もあるのです。わかっていても悪い目で気落ちしてしまうのが人間。しかしそうした人間心理の本質の裏を行った幸村の姿勢は、戦略観として正しいといえます。またそれは単に天運や偶然、他人の助けを待つようなものではなく、気持ちに負けずに次の手を着々と打っていったその姿勢にあるといえるでしょう。

良い時は周囲がいかようにもチヤホヤしてくれます。しかし落ち目になった時にいかに行動できるか、「望みを捨てぬ者だけに道は開ける」とはそうした教訓なのだとあらためて思います。

指揮官は現代でいえば管理者です。時流に流され、士気を考えないのは指揮官の資格がありません。ダメな時でも望みを捨てさせない、そのために次々と手を打たせることが出来ることは、管理者にとってきわめて大切な素養だと思います。