年金制度改革関連法案が可決(写真:つのだよしお/アフロ)

写真拡大

 俗にいう「年金カット法案」(年金制度改革関連法案)が国会で審議、採決されました。

 年金の支給額は物価と賃金の見合いで上下しますが、この法案のポイントは、物価が上がっても賃金が下がれば年金も下がる方式が採用されたところ(マクロ経済スライドの強化)。今までは、賃金が下がってもそれ以上に物価が上がっていれば年金の給付額は下がりませんでしたが、これからは、物価が上がっても賃金の下げ幅が物価の上昇を上回ると給付額は下がります。

 具体的に、この10年間を例にとって、どれくらい減るのかを見てみましょう。この数字は野党と政府が出しているので、まずは野党から。野党の試算では、国民年金で年間4万円(月3300円)、厚生年金で年間14万2000円(月1万1800円)も減ってしまうという数字が出ています。

「野党だから厳しい数字なのでは」と思う方もいるかもしれませんが、これほどではないものの、政府のほうも厳しい数字になっています。厚生労働省の試算では、国民年金のモデル世帯で年間2万4000円(月2000円)、厚生年金のモデル世帯では年間8万4000円(月7000円)の減額です。

 みなさん、もう忘れているかもしれませんが、2004年に「マクロ経済スライド」という年金カットの方法が導入され、政府は「これで年金は100年安心」と大見得を切りました。この「100年安心」が、100年どころか、その後12年でまたカット法案を導入せざるを得なくなったということです。

●嘘、インチキ、無視で塗り固められた年金

 年金については、本当のところは誰にもわかりません。いわゆる年金官僚は、「まさか」と思うようなことを平気でします。

 たとえば、政府は「若い人でも、支払った額の2.3倍もらえる」という宣伝をしきりにしていました。これは、厚労省の「平成21年財政検証結果リポート」にもしっかり書いてあります。これを見ると、「払った額の2倍以上もらえるなら、いいかな」と思う方も多いでしょう。

 けれど、喜ぶのは早い。厚生年金の保険料は労使折半なので、社員が月々納めている保険料が1万円だとすると、会社が支払う保険料と合わせて月2万円を納めることになり、2.3倍なら将来は4万6000円もらえるはずです。

 しかし、実際にもらえる額は、その半分の2万3000円。「そんなバカな」と思うかもしれませんが、なぜそうなるかというと、本人が支払った1万円しか保険料にカウントせず、会社が支払った1万円は完全に無視してカウントしないからです。会社は、従業員の保険料の1万円を負担するために給料を減らしたり福利厚生を削ったりしているのですから、これを無視するのはおかしいでしょう。

 さらに、年金支給額の3分の1以上(現在は約2分の1)は税金が使われています。つまり、年金の加入者は、年金をもらうために保険料のほかに税金も支払っていることになります。ところが、支給額の3分の1以上を占める税金についても無視。その事実は、ないことになっています。

 加えて、厚労省が試算のモデルケースとしている家庭は、20歳で結婚して、夫は40年間会社員として働き続け、妻はずっと専業主婦というパターン。今どき、このような家庭は少数派ではないでしょうか。

 なぜ、このような家庭をモデルケースにしているのかといえば、妻が40年間専業主婦なら年金保険料を1銭も支払わなくても国民年金が満額支給され、このケースが家庭全体での年金の手取りがもっとも多くなるからです。

 さらに、この試算では運用利回りが4.1%を前提としており、給料も右肩上がりの設定です。こうした細かなインチキを言い出したらきりがないので、このへんにしておきますが、実際の年金は「若い人ほどもらえない」ということを覚悟したほうがいいでしょう。

●国が潰れない限り年金は絶対に破綻しない

 よく聞かれるのは、「年金は破綻するのか」ということ。はっきり言いましょう。「国が破綻しない限り、年金は破綻しません」。そして、国はそう簡単には破綻しません。

 国が破綻しないのに年金だけが破綻して給付がなくなったら、すでに年金をもらう権利(受給権)を持っている人たちは国を相手取って訴訟を起こすでしょう。

 すでに年金は10年以上加入していれば受給権を得ることができるようになっているため、こうした人たちがすべて訴訟を起こせば、その賠償金で国は破綻します。そのため、国は絶対に年金を破綻させません。けれど、破綻はしませんが、徐々にもらえなくなっていくことだけは確かです。

 今まで、国は「年金改革」と称して「保険料を上げる」「給付額を減らす」「給付年齢を上げる」ということを繰り返してきました。そこに、今年からは「パートにも年金を支えさせる」(本連載前回記事を参照)を新たに加えました。

 どれも私たちにとっては負担につながり、徐々にもらえなくなることは確かですが、なくなりはしないということです。では、将来的にもらえる年金が減少する中で、私たちはどうすればいいのでしょうか? これについては、次回に詳しく書きましょう。
(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)