前回の記事では「レディファースト」について触れました。レディファーストを生まれながらに身につけたパリジャンによって、パリジェンヌは優雅に振る舞えることができます。それがよくあらわれるのは「食事」です。

女性をエレガントに見せるフレンチ

パリでは食事=フレンチになるのは当然ですよね。

フレンチとはいっても、食べる順番があるだけで、堅苦しいものではないと思ってください。私たちにとっての「三角食べ*」に相当するもの。食ベ方の違いで、その土地に根付いた習慣です。私は、パリで暮らしてみて初めて「フレンチコース」が、デートに最適だと認識しました。
*主菜、副菜、汁物を同時に食卓へ並べ、まんべんなく食べる食べ方

その理由はなんといっても「会話に集中できるから」につきます。

なぜ会話が一番重要かは、前回も述べた通り。あえて追記するならば、彼の経験値と彼が今、何を考えているかを知ることは、2人の間柄を継続するためには必要なこと。

前菜、メイン、デザート、シメのカフェまで2〜3時間かかる決して短くはない時間を過ごせるのも、退屈ではない会話があってこそ。次のお皿までの待ち時間が長く感じたら、彼への気持ちはイマイチかもしれません。

フランス人は自他共に認めるおしゃべり好きな国民。フレンチは、はじめにオーダーを済ませるシステム。いったんメニュー帳を閉じたら、それ以降はおしゃべりに没頭できます。

こんな経験はありませんか? たとえばメニューのオーダーが自由なレストラン。会話しながらも追加品をどうしようか考えてしまう。また、大皿から各自、食べる量をとり分けるスタイルのとき、シェアに気をとられるあまりに話に集中できないなんてことも。でも、コースならノープロブレム。パリの店は、人々の話し声でにぎやか。テーブル同士が至近距離でも、隣の会話が耳に入るどころか、入る暇がないのです!

フレンチがデートに適している理由の2つ目は、女性が楽できるからです。家庭やオフィスでも、食関連では機転をきかせるのが上手な日本の女性たち。せめて外食のときくらい、気を使わずにいたいものです。

楽すれば、自ずと優雅になる

ワインのお酌は(伝統的レストランでは)サービス係におまかせ。彼らは、絶妙のタイミングで注ぐのがウデの見せどころ。もし2人の尽きない話をさえぎったら、ちょっとウデは下がります。そのくらい「2人の世界」の邪魔をせず、黒子に徹します。

パリっ子のお気に入り、カジュアル級レストランやビストロ(日本で言えば庶民的で居酒屋のような立ち位置)では、男性が注ぐ係。マナーというより、私は「腕力で与えられた役割」と捉えています。また、目の前の女性のグラスまで目が行き届いている彼なら、生活面でのマメさが少しイメージできます。

ここでクイズです。さて、女性は何をしているのでしょう?

座って、食べて、飲んで、話しているだけ!! 動かないので、姿勢はそのまま。(店員さんを呼ぶ)大きな声は出しません。そして順番通り、目の前のお皿はひとつ。視線は定まり、プレートか彼へ向き、落ち着いたたたずまいとなります。

そんなシーンを想像してみてください。なんとも優雅ですよね! 女性があっちこっち気を使わないでいられるゆえんです。

「ワイルド」な顔にもならないで済む

フレンチでは「噛み切る」シーンはありません。そこにナイフがあるのに、使わない理由はないですよね。手を使うパンも、噛み切らず(自分の)ひと口大にちぎることは、マナー以前に食べやすくする手段。なので、彼の前で「ワイルド」な表情は出ないのです。

気取っているイメージがとかくつきまといがちなフレンチ。しかし、実は食べ方や仕草で失敗がなく、安心して過ごせる食事。そして、自然に女性が「お姫様」になる舞台。パリジェンヌが凛としている印象があるのは、食スタイルからもわかりますよね。

食後の至福の表情こそパリジェンヌのモテ顔!?

居酒屋やラーメンデートがNGではありませんし、それは2人が決めることというのは前提ですが、私が推すのは、スタイルが「コース」の飲食店。伝統的レストランは間違いなくフレンチですが、コースでサービスされる店ならOK。もっと言えば、おいしかったか否かは、たいした問題にはなりません。彼との充実した時間で満たされ、おなかいっぱい!……と満面に笑みを浮かべる、食後の至福の表情こそパリジェンヌの「武器」なのです。

しかし、問題も……。ワインを何杯飲んだかをカウントできないために、席を立ったらフラついていた……という経験が人一倍ある私から、一応の忠告です。

ほろ酔いなったら「Non merci」=「もう大丈夫!」と彼にやさしくお酌の「待った」を言える、真のパリジェンヌ流でいきましょう!