「マネキンチャレンジ」動画の一場面。医師と看護師の目からは血の「涙」が流れている。

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マネキン人形のように静止し、一歩たりとも動かない。それを動画に収め、SNSなどで共有するという「マネキンチャレンジ」が世界中で流行している。

国境なき医師団日本も2016年12月27日、マネキンチャレンジの動画「【国境なき医師団】マネキンチャレンジ〜Tears of Blood」を動画投稿サイトに投稿した。その目的は、中東の紛争地で起きている病院爆撃の現実を伝えるためだという。

動画の登場人物は皆、血の「涙」を流している

アフガニスタンのクンドゥーズで2015年10月3日、国境なき医師団(MSF)が運営する病院が米軍の爆撃を受けた。患者と係員を合わせた死者数は42人にのぼり、施設が破壊されたことで約100万人の住民が医療を受ける機会を失った。

シリアやイエメンなどではその後も、内戦が収束する兆しはない。紛争地で常態化した病院爆撃の現実を知らせ、「どんな理由でも医療施設や患者・スタッフが標的になってはならない」と訴えかけるため、あえてMSFは世界的流行中の「マネキンチャレンジ」という手段を選んだという。

動画では、病院の診察室や手術室で医療に従事する国境なき医師団のスタッフが映っている。医師も看護師も患者も、ぴくりとも動かないが、全員の目から血の「涙」が流れている。こうした演出の狙いを

「病院が爆撃されているということは即ち、私たちMSFの使命である『いかなる状況であろうとも、医療を必要とする人びとに援助を提供する』ことを断念せざるを得ないということです。(中略)そうしている医療行為が『ストップ』してしまっていることを、我々自身がマネキンと化して動きを止めることで象徴的に表現しています。さらにそのやるせない思い、悔しさを『血の涙』をモチーフにすることで訴えました」

と説明する。

動画撮影に参加したMSF日本の加藤寛幸会長は、

「病院は本来、負傷者や病人を癒し、命を救う『世の中でもっとも安全であるべき場所』です。たとえ紛争下であっても、医療施設や医療従事者、患者を攻撃対象とせず、医療活動を保護することは、国際人道法でも定められた国際的なルールです。クンドゥーズの事件当時、日本でも報道がなされましたが、なぜ病院が攻撃されてはならないのか、またこうした事態が世界の紛争地で続いていることが広く認識されているとは言えません」

という。MSFは2016年、「病院を撃つな!」と題したキャンペーンを開始した。日本政府に病院爆撃の状況を改善するための具体的な行動を求める署名活動を、その一環で行っている。