カンヌ騒然『ネオン・デーモン』:異端の映像作家N・W・レフンが人間の狂気を語る

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ロサンゼルスのファッション業界を舞台にした注目作『ネオン・デーモン』。モデルになることを夢見て田舎から上京してきた16歳の女の子が、成功への階段をとんとん拍子で上っていくうちに、トしさ以外は何の価値もないイ箸いΧ罰Δ両鐚韻砲匹辰廚蠅反擦っていく。

カンヌ国際映画祭でプレミア上映された同作は、賛否まっぷたつという狂騒に迎えられ、問題作として世界に放たれた。監督を務めたのは、デンマークの俊英ニコラス・ウィンディング・レフン。『ドライヴ』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞して一躍、世界注視の存在となったものの、続く『オンリー・ゴッド』で肉体的アクションをアートと融合させて論争を引き起こした異端の映像作家だ。

『ネオン・デーモン』でも彼は、ラジカルな作風で観客を挑発しており、なるほど、賛否両論が巻き起こるのも納得できる。筆者は熱烈にのめりこんで見たが、客観的にみるとこの映画を嫌う人も確かにいるだろう。いずれにしても、はっきりしているのはレフンが自分の表現方法に妥協しないアーティストであるということ。彼の作家性は何に根差しているのか? 『ネオン・デーモン』はどのように見られるべき映画と考えているのか? 本作を見た後にあふれ出てきた疑問をレフンにぶつけてみた。


(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

―『ネオン・デーモン』カンヌ映画祭のプレミア上映終了時には拍手とブーイングの両方が沸き起こったとのことですが、観客のこのような反応をどう受け止めましたか?

この映画が成功した、ということだと思う。賛否があって、論争が起こったのだから、『ネオン・デーモン』は、それだけが観客の心を激しくかき乱したわけだ。自分としては正しいことをしたと思っているし、もっといえばアーティスト冥利に尽きる。最大公約数の観客を喜ばせようとするハリウッドの娯楽映画を撮るような姿勢では、アーティストは、より遠くに突き抜けることができない。創造性というものは、よかれ悪かれ、受け手の感情を激しくかき立てるものだし、それを受けて僕自身も先へと向かうことができる。これは映画監督に限ったことではない。ミュージシャンはもちろん、小説家、画家・・・すべてのアーティストに言えることだよ。

―自分がこの映画に心をかき乱されたのは、見ていてとても怖かった、という点です。そういう意味ではホラー映画として興味深く拝見したのですが。

この映画の要素はホラーだけじゃない。ある業界の内幕を描いたインサイド・ストーリーであり、コメディ、メロドラマ、SFでもある。いや、言っていることはわかるよ。僕自身、子どもの頃からホラー映画を浴びるように見てきたのだから、そういう部分が本作に投影されているのは確かだ。


(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

―『ネオン・デーモン』の大きなテーマのひとつはトしさとは何か?イ箸いΔ海箸砲△襪隼廚い泙后1撚茲涼罎如⊆磴ぅメラマンはトしさは人間の内面にあるイ噺譴蠅泙垢、ファッション業界の人間はトは見た目にこそあるイ犯刃世掘映画は結局その文脈で進行します。それはある意味、反道徳的な考え方であり、ファッション業界への批判とも受け取れます。それが観客の反発を招いたのではないかと感じましたが。

トは人間の内にあるイ箸いζ仔舛詫解しているつもりだし、そのとおりだと思う。しかし、見た目の美しさが人間の心をとらえるのも事実だ。見た目が美しくないものに、人間は目を向けるだろうか? その内面がどんなに美しくても、むしろ目を背ける人が多いかもしれない。それを思うと、見た目の美しさを悪ととらえるのは偽善的だ。もちろんファッション業界を批判したつもりはない。僕が興味深いと思うのは、見た目の美しさを絶対的な価値観にしてしまう人がいるということ。『ネオン・デーモン』は、それが狂気にまで発展したものを描いているんだ。


(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

―劇中でトップモデルとなったヒロインにはセ笋話かに憧れたりはしない〜皆が私に憧れるのコГ私になりたがるイ箸いΧ烈なセリフがありましたが、そこにはどういう意図が込められているのでしょう?

人は誰でも虚栄心を持っているし、見た目で憧れられたいと思う部分が少なからずある。現代では、それがより表面化しているんだ。SNSにアップされている自撮り画像を見てみれば、それがよくわかる。SNSは何かを訴えようとしている人々のメディアだ。そして何かを訴える人は、絶えずジられるイ海箸魄媼韻擦兇襪鬚┐覆ぁだから、つねに美しくあろうとする。そうしなければ他人を惹きつけることができないからだ。


(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

―ファッション業界を題材にしたのは、そういう風潮の象徴ということでしょうか?

そのとおり。美しさに対する人々の執着は、今の世の中ではどんとん膨れ上がっている。しかし、ジた目の美イ亮命はとても短い。流行に左右されるものでもあるからね。すぐに別のトイ台頭して、人々はそれを求める。そしてそれに飽きては、また別のトイ魑瓩瓩襦3號召半暖颪僚わりのない循環だ。たいていの人は、やがてはそのような循環に疲れてテ睫未糧イ魑瓩瓩襪茲Δ砲覆襦この映画を恐ろしいと感じるとしたら、そんなテ睫未糧イ鮴擇蠎里董ジた目の美イ謀按貪に執着したときの人間の狂気が宿っているからだろう。


(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

―見た目の美しさを求めるのは思春期特有のダ弔ゴ蕎陲里劼箸弔任發△襪里任垢、そういう意味では、『SUPER8/スーパーエイト』に出演してスターとなった、まだ10代のエル・ファニングの主演起用はハマっていました。作り手の側から見て、彼女の強みはどこにあるのでしょう?


(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

恐れを知らないことだ。撮影時、彼女は主人公と同じ16歳だったが、どんなに過激なシーンの撮影でも物おじすることなく、僕が求めた狂気を表現してくれた。カメラの前に立つと、自分自身を一変させる。女優として申し分ないプロフェッショナルだ。加えて、エルは人を魅了せずにおかないジた目イ鮖っている。この映画の主役を演じるうえで申し分なかった。


(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

NICOLAS WINDING REFN
ニコラス・ウィンディング・レフン 1970年9月29日、デンマーク生まれ。24歳で監督を務めた『プッシャー』(96)でデビュー。三部作として続編が製作され、カルト的作品を誇る。2011年、ライアン・ゴズリング主演の『ドライヴ』で、カンヌ国際映画祭の監督賞などを受賞。ゴスリングと再びタッグを組んだ『オンリー・ゴッド』(13)でもカンヌのコンペティション部門でパルムドールを争うなど、国際的に高い評価を得ている。

『ネオン・デーモン』
監督/ニコラス・ウィンディング・レフン
出演/エル・ファニング、ジェナ・マローンほか
2017年1月13日(金)、TOHOシネマズ六本木ほか全国ロードショー
http://gaga.ne.jp/neondemon/