<大統領としての任期の最後にオバマが署名・成立させたのは、国を挙げてガン治療に取り組むという「21世紀治療法」。肉親をガンで亡くしたオバマやバイデン副大統領の思いが込められている>(写真:今月13日に最後の署名式に臨んだオバマ)

 今月13日、バラク・オバマ米大統領は「21世紀治療法」という法案に署名した。オバマは多くの議員らに囲まれて法案を成立させる署名式に臨んだが、おそらくこれがオバマにとっての最後の署名式になると見られている。

 オバマが任期の終盤に「21世紀治療法」を成立させたことは意味深い。この法律では、今後10年で個人の医療情報を活用する精密医療や脳研究、処方箋薬物の濫用防止、精神病に対する治療などを発展させる目的で63億ドルの予算が割り当てられることになる。だが特に注目されるのは、ガンとの戦いの強化だ。

 オバマは今年の年頭の一般教書演説で、ガン対策の「ムーンショット・プログラム」の立ち上げを明らかにした。このプログラムは18億ドルを充ててガン研究をさらに進めることを目的とし、人類最大の「敵」の一つであるガンに対抗するために国をあげた取り組みを行うものだ。

 そしてオバマは、ジョー・バイデン副大統領にこのプログラムを主導するよう指名した。というのも。2015年に息子を脳のガンで亡くしているバイデンにとって、ガンとの戦いは非常にパーソナルな問題だったからだ。この21世紀治療法は結局、超党派の広い支持を得て議会を通過した。

【参考記事】退任直前のオバマが、駆け込み「恩赦」を急ぐ理由

 ちなみにオバマは2008年の大統領選で、公約としてガン対策を掲げており、さらに大統領の任期中も、ガン対策には取り組んできた。というのも、若い息子を亡くしたバイデンのように、オバマも母親が52歳でガンで亡くなっているのだ。

 アメリカが国家的プロジェクトしてガンとの戦いを宣言するのは、今回が初めてではない。45年ほど前の1971年12月23日、当時のリチャード・ニクソン大統領は、連邦議会議員らの前にして、「第二次大戦で死んだすべての米兵よりも多くのアメリカ人が、毎年ガンで死亡している」と語り、「国として治療法を見つけるため、ガンに打ち勝つよう取り組む」と宣言した。

 このスピーチは、アメリカがガン研究を重要な国家戦略と位置付けた、いわゆる「ガン戦争宣言」と呼ばれるものだ。ニクソンは、その場で米国ガン法(1971年)に署名している。

山田敏弘(ジャーナリスト)