フジテレビ「SMAP×SMAP」最終回、あの中居くんらの涙から二時間半後、余韻を打ち消すかのように放送された「寺門ジモンの取材拒否の店 2016年末SP(フジテレビ)」


名前の通り、メディアに出ない、知る人ぞ知る名店を紹介する番組である。事前にスタッフがアポをとるようなことは無く、店のチョイスも交渉も唯一の出演者・寺門ジモンまかせ。
なぜならジモンが店に人(スタッフ)を連れて行き、「ね?美味しいでしょ?」と喜びを分かち合いたいからだ。
全画面ずっとモザイクのみということもあれば、店前での「前フリ」撮影後、いきなり諸事情で取材終了ということもある。本当にガチガチのガチで取材交渉に当たっているのだ。

今年の取材交渉成果は
「出禁4件」
「土下座2件」
「水かけ1件」(全てお蔵入り)

番組のいちばんの見どころは、ジモンが築きあげてきた店員とのコネクションやくどきのテクニック。取材OKに持ち込むまでの駆け引きから、食に対する異様な執念、興奮がうかがえる。

2009年〜2010年、毎週金曜深夜の放送であった。近年は「寺門ジモンの放送禁止の店2014」「〜2015秋」「〜2015年末」「〜2016春」「〜2016秋」と、特番化以降の「北の国から」方式で定期的に放送されている。

番組冒頭「深夜にこの番組を見てくれる人がいるかぎり、俺は思いっきり頑張ります!」
と、意気込んだ直後、
「俺の熱気で(車の)窓が露店しちゃって」
すかさずスタッフ全員から「結露!」とつっこまれるわれらがジモン。この空回りも大切な見どころの一つである。

画面の95パーセントがモザイク


1件目。バブル時代から通ってるラーメン屋で、一度もメディアに登場したことはないという。意気込みを語りながら、地面に落ちていた小さな布を踏んだらしく、「うんこかと思ったーー」と強烈に焦る。
スタッフ「よくその厚底のブーツで(布を)踏んだ感触わかりますね?」
ジモン「足の裏は手と同じだから!」
わかるようでまったくわからない名言を披露してくれる。

「周りにモザイクかけてる?」
移動しながら場所バレを気にするジモン。これからもプライベートで通いたい店だからこそ、店側の許可なく情報が漏れることを、本気で心配している。

「電信柱の住所の(映ったら)ダメだよ?」
「大きいビルの象徴的なのものダメよ?」

おかげで極めて小さなワイプでジモンの顔付近がかろうじて写ってる以外は、画面の95パーセントがモザイクだ。AVと真逆の比率。

入店。
ワイプの中にラーメンを待つジモンの顔。プライベートなカメラでラーメンを撮影する際も、店員に「これ写真とってもいいですか?」と律儀に許可を取る。
見る側も妙に緊張する。

ほんの1秒ラーメンをすする姿が映り、いよいよ店主に取材がオーケーか交渉する時が来た。
ここでオーケーをもらえれば、ワイプが広がる。ラーメンも店内も映り、場合によっては、店主や外観、店名、住所などが開示されるのである。

ジモン「お父さん、僕が昔食べた懐かしいラーメンだって事で、撮影とかしちゃダメなんですかね?… 嫌ですか?」
店主 「…」

店主の顔や態度から、一瞬でダメだと判断したのであろう。
「やっぱりそういうの無しの方がいいよね?」
「しない方がいいですね?」

と、すかさず、保身に舵を切る。

店主「そうですね」
ジモン「全然大丈夫です。じゃあ取材無しという事で!」

1件目終了。

外に出てすぐ、この店の拒否予報は99・9%だったと自慢気なジモン。
「味は変わってなかった」と笑顔。
前向きだ。
ここまででわれわれに与えられた情報は、ジモンの「足の裏は手と同じだ」という衝撃の事実だけである。

「ナイスネイチャ〜♪」が車中に鳴り響く


2件目は立ち飲み屋。ジモンの取材拒否予想100%。ならば、もう行かなくても良いのではないかと思ってしまうが、とにかくうまいらしい。生ウニの牛肉巻きという料理の元祖らしいが、元祖どころか派生も食べたことがない。

入店。
中は昼の3時なのに満席らしい。今回は店内入ってからも100%モザイクのままだ。もう犯行現場にしか見えない。モザイクの上にテロップが乗るだけの映像。

「お父さん、これ、写真撮ってもいいですか?」

プライベートカメラで写した写真がアップになるが、これにもモザイク。モザイク動画の上にモザイクの静止画の写真が挿入されてもはや現代アートのようだ。

スタッフが、店との交渉を促すも
「ダメダメダメ! できるわけないだろそんなの! 空気空気空気!」とまるで戦意の無いジモン。
「早く!」「ビビってるんじゃないですよ!」
容赦なくけしかけるスタッフ。

基本スタッフはジモンをバカにするスタンスで、過剰にいじったり揚げ足をとったりする。正直乱暴ないじりもあるしイラつく時も多く、視聴者からは賛否両論なのだが、結果的にこれがジモンの過剰な慎重さや食への真摯なこだわりを浮きだたせ、つい、何の思い入れもないはずの寺門ジモンという一見変わった男に肩入れしてしまうという仕掛けになっている。(余談だが「月曜から夜ふかし」でマツコに異様に嫌われてる遠藤ディレクターがこのスタッフだ。)

今は忙しそうだからという理由でお会計時に取材交渉を切り出すと約束するジモン。とにかく店員の忙しさに敏感だ。そしてお会計時、値段を言われたあと、やっと口にした言葉は

「領収書ください」

くだんのディレクターに「なんで聞かないの??」「早く!!」と強めになじられる。
「空気空気!今働いてるんだから無理!」

ここで2件目終了。
なんて画期的なグルメ番組だ。

車内で言い訳をするジモン。
会計しながら他の作業もしている手いっぱいのタイミングで店員に取材を切り出すより、落ち着いてあとから電話を入れた方が効果的だと思ったからだと真意を語る。

しばらくして電話をしようとするタイミングで、実家の母親から誕生日を祝う電話が入ってきてしまう。着信音の、今をときめくピコ太郎にそっくりの古坂大魔王作曲のジモンの曲「ナイスネイチャ〜♪」が車中に鳴り響く。
結局、店に電話するも、取材や情報開示どころか、写した料理だけの写真も使用が認められずに終了。2連敗だ。

龍を触って下さい


ジモンいわく「関東3大取材拒否ホルモンの一つ」らしい3件目。試験に出そう。
番組が始まって20分、まだお店どころか食べ物一片も画面に登場していない。なのにジモンの服は2パターン目だ。

店前にて、看板の電気がまだ点いていないのを見て「(店主が)電気つけに出て来ちゃうかもしれないから! そん時カメラがあったら終わりだからね!」「本当に終わりだからね? ほんとに終わり!」例によって怖いほど慎重なジモン。
そこにテロップで「※店の前でテンパるジモン」と、編集で小バカにするスタッフ。
この番組の真骨頂だ。

入店。今回は入店時の店主の対応からイケると踏んだのかいきなり取材を切り出す。
しかし店長は渋る。 某有名監督や某人気アイドルらも来てるが、取材は断っていると。
「知ってます知ってます知ってます」と動じないジモン。
「男にしてもらえないですか?」「龍が出るとこだけでも」「名前も出さない住所も出さない」
攻めるジモン。
「一発でウチだってバレちゃいますよ」と店主。
「でもそれは本当に知ってる人ならわかるけど、知らない人は知らないじゃないですか」
執拗な正論で畳み掛ける。

「まあ、それだったら名前出さないんならいいですよ」

ついに取材拒否の店の扉が開いた。
ワイプが広がり、突き出しのカクテキとキムチが映る。今回初めてのまともな画像だ。
「カクテキとキムチが美味い店はすべてのものが美味い」と笑顔で持論を語る。
厚切りザブトンを焼く主人に
「おやっさんは肉の声を聞いてる」と桐谷健太のようなことまで言い始める。一人紅白状態、店主はノーコメントだ。
焼きあがった肉汁したたる厚切りザブトンをとんかつのように切り分ける店主に対し、ジモンが叫ぶ。

「BEST COOK!」

恐らく褒めている。
切り分けた肉の一片を箸でつまみ上げると、謎の興奮状態に。

「ほどけちゃってる、ほどけちゃってる、ほ、ほ、ほ、ほどけちゃってる!」

肉が柔らかいことを表現しているのだろうが、後半は小森のおばちゃまだ。
脂の多いマルチョウを焼くと、七輪から、火柱があがる。

「龍だーーーーー!」

テンション爆発!
スタッフが「龍を触って下さい」と無茶振りすると、素直に炎に素早く手を出し入れし「うおおおお!!!」と興奮するジモンと「もう食べて大丈夫です」とたしなめる店主。
続いて、名刺くらいの皮の下に脂がたっぷりくっついた上ホルモン。まるで握り寿しのような形状。
さらに強い「龍」が上がる。この龍を見た人は来年幸せになると言い切るジモン。たぶん嘘だ。

その後も

4件目 焼きとん・新宿 鳥茂 (取材成功)
5件目 渋谷原宿近辺の蕎麦屋 (取材成功・店名はNG)
6件目 肉類の美味いワインダイニング 渋谷 ほね◯◯◯(取材成功・店名一部NG )
7件目 ラーメン 再来軒 (取材成功)

と好成績を残した。
最後の店に至っては、別れ際ずっとジモンの手を握って名残惜しそうな女店主のあまりのノリのよさに、スタッフが「本当に取材拒否なのか確認して?」と疑うほどの会心の取材ぶりを見せてくれた。(女店主が手を離さなかった理由は「柔らかいから」だそう)

名言はまだまだあった。

「大人は美味いものを作ってるよ〜!」 (あまりに美味いレバーを食べて)
「お肉界の湯葉」 (豚の直腸のトロトロ具合を例えて)
「ジャケットだけで5時間おいていかれても風邪ひかないようにしてる」(インナーにヒートテック3枚しこんでるのを発見されて)
「あんまり違う番組に出ないで下さい」 (店主との別れ際の冗談)
「器を大事にする人間でいたかった」 (ノリで蕎麦のおちょこで乱暴に乾杯をしてしまい)
「俺ですから」(店主を説得する際に)
「コココココ、コレはなんですか??」(見たことない肉を目にして動揺)

満腹だ。
(アライユキコ)