今や、スマホやパソコンがなくてはならない時代です。大事なデータが詰まっているスマホやパソコン、自分が死んだらどうなるの?

前回までは、スマホが操作不可能になること、本人以外は一切引き継げないSNSなどについてお話ししました。万が一の場合に備え、スマホのデータをどうしてほしいか、何らかの手段で残しておかなければなりません。

そこで今回は、エンディングノートとはどんなものか、遺言とはどう違うのかなど、「あなたが亡くなった後にして欲しいことを伝える手段」についてお伝えします。

エンディングノートとは?

エンディングノートは、“自分の終末期や死後について、その方針などを書き留めておくノート”*です。

さまざまな体裁や書式のものが売られていますが、多くの場合が、葬儀や埋葬方法の希望や、連絡してほしい友人・知人の連絡先、銀行口座や加入している保険、有価証券の内容など、自分自身の備忘録的な側面と、遺族への連絡帳的な側面を併せ持っています。

自分史のようなものを書き込むスペースや、大切な人へのメッセージを綴るページがあるもの、アルバムのように写真が貼れるものなど、いろいろあります。

2011年の東日本大震災を機に、万が一のときに備えて、「大切なものを誰かに託すためのツールが必要だ」という考え方の広がりから、若い女性向けのエンディングノートも続々と販売され、じわじわと売れているようです。

*大辞林 第三版より

エンディングノートの拘束力は?

実のところ、エンディングノートに法的拘束力はありません。

遺族たちが全員納得した上で「エンディングノートに書いてある通りにしてやろう」となれば話は別ですが、ある程度財産があり、家族が揉める可能性があるのなら、ちゃんとした遺言を遺しておく方が、残された家族のためには良いでしょう。

エンディングノートには、「人の動きを取り仕切る」という意味では効力はありませんが、自分の人生を振り返るきっかけづくりや、今後の人生設計に役立てることはできます。しかし必須ではないので、遺族に伝えたいことがあれば、手帳に書いておくだけでも十分こと足ります。

遺言書ってどうやって作るの?

では、法的に拘束力のある遺言書は、どうやって書けばいいのでしょうか。
遺言書には以下の3種類があります。

1.自筆証書遺言:ルールに従って、自分で手書きで書いたもの。自宅保管。
2.秘密証書遺言:自分で手書きで書いたものを公証人役場に持って行き、遺言の内容は秘密にしたまま、存在だけを証明してもらったもの。自宅保管。
3.公正証書遺言:公証役場で公証人に作成してもらったもの。コピーは自宅保管できるが、原本は公証役場保管。

1の自筆証書遺言は、自分で書くだけなので、費用もかからず何度でも書き直しができますが、細かなルールがあるため、少しでも要件が欠けてしまうと、遺言書として効力が発揮できない恐れがあります。

2の秘密証書遺言は、3の公正証書遺言よりは費用が抑えられますが、自分で書いて、内容は秘密にしているため、要件が欠けてしまうと、遺言書として効力が発揮できない恐れがあります。

3の公正証書遺言は、一番確実な遺言書が作成できる方法ですが、費用と手間がかかるだけでなく、公証人に遺言の内容を知られてしまいます。

では、自分が死んだ後にしてほしいことは、遺言書に書いておけば大丈夫なのでしょうか。
答えはNOです。

遺言書に書いて法的な効力を持つのは、主に財産分与や処分の方法についてのみです。それ以外の手続きについては、どんなに詳しく指定をしても、法的な効力はほとんどありません。

それ以外はメモやエンディングノートに書いておくことで、誰かにやってもらうという方法もあります。しかし、確実ではありません。

家族に頼みたくないなら「死後事務委任契約サービス」を

では、「頼める人がいない」という人は諦めるしかないのでしょうか? そんなときに利用したいのが「死後事務委任契約サービス」です。

「死後事務委任契約」とは、遺言や相続手続きに詳しい、弁護士や司法書士、行政書士などが、依頼者の死後に必要なあらゆる手続きを、遺族の代理として引き受ける契約です。

生前に契約することで、依頼者本人の希望に沿って確実に手続きが行われるだけでなく、家族に金銭的な負担や面倒をかけなくて済みます。

スマホやパソコン、そのデータやSNSのアカウントなど、デジタル遺品の対処までカバーしている事務所もあるので、一度相談してみるといいかもしれません。

しかし、これらを実行するには費用がかかります。かかる費用と自分の希望とを天秤にかけて「自分はどこまでなら対策ができて、どこからは諦めるか」を、生前のうちに線引きしておきましょう。

遺族は、欲しい情報が見つかりさえすれば、それ以上は深掘りしないはず。あなたの今ある不安を解消するには、自分の死後にどんなことが行われるのかを知ることが、一番の近道です。

監修:古田雄介(一般社団法人デジタル遺品研究会ルクシー)

(旦木瑞穂)