「テレビはもはやメディアの王様ではない」なんて声も聞かれますが、他所へ興味が向きがちな我々の胸ぐらを強引に掴んで引き寄せるようなテレビ番組が巷で話題になってます。
10月からレギュラー放送がスタートした『ねほりんぱほりん』(Eテレ)は、テレビじゃないと……と言うよりもNHKじゃないと形にならなかったであろうトークバラエティです。
つとめるのは、山里亮太さんとYOUさん。とは言え、この二人は姿を見せません。番組にチャンネルを合わすと、眼前に広がるはこんな光景。


モグラの「ねほりん」の“中の人”が山里さんで「ぱほりん」の“中の人”がYOUさん。


“元薬物中毒者”や“プロ彼女”といった訳ありな人がゲストとして登場するのだが、訳ありなだけに顔は出したくない。だから、ブタとして画面に登場します。


これって、まさに“新しいモザイク”だと言える! 外ヅラは人形劇だし、内容は赤裸々トークの連続だし。

しかし、ただ過激なだけじゃない。『ねほりんぱほりん』、なんと10月のギャラクシー賞月間賞を受賞しています。「学校では教えてくれない、人間のいろいろな面を伝えるのも『教育』だと思う」という大古滋久チーフプロデューサーのコメントもありましたが、そんな姿勢が評価されたのでしょう。

このタイミングを逃す手はない! 早速、ねほりん&ぱほりんの“中の人”を務める山里さんとYOUさんにインタビューを敢行してきました。


「この番組にたまたま関わることができて本当に良かった」(YOU)


──『ねほりんぱほりん』が10月のギャラクシー賞をとったということで、おめでとうございます。
山里 ありがとうございます!
──ギャラクシー賞をいただいた時、お二方は率直にどう思いました?
山里 賞に無欲なYOUさんが横にいますが。
YOU 「ギャラクシー賞」っていうのを知らないので……。


山里 テレビとかメディアにおいて良いとされる賞の一つです。
YOU 良かったですよね。もう本当、それはスタッフさんの努力のおかげなので。
山里 そうそう、本当にそう思います。
YOU 面白いことを見つけてきてくださるから。賞があるならスタッフさんがいただくのは良かったし、そこにたまたま関われて良かったなと思います。
──『ねほりんぱほりん』は「Eテレにしては……」と言うより今やってるテレビの中で一際異彩を放っている番組だと思うんですが、直接お二人に番組の反響は届いていますか?
山里 やっぱり、「観てるよ」と言われることは多いですね。同業者からそういうことを言われることってあまりないんですけど、この番組に関しては聞くんですよ。「あれだけは毎週観るようにしてるよ」って言ってくれます。

「“攻めてるEテレ”のトップランナーを走らせてもらえるのはうれしい」(山里)


──視聴者が抱くEテレのイメージは、この番組とは全然違うと思います。いい意味で「Eテレらしからぬ番組だ」という評判を聞くんですが、そのことについてお二人はどう思いますか?
山里 今、すごくEテレは攻めてると言われてますけど「その一番前を走らせてもらえてるんじゃないかな?」というのはうれしいですね。
YOU でも、Eテレの攻めはもう数年前から始まってますからね。
山里 たしかに、そうだ。昔から言われてますよね。
YOU メチャメチャ面白いですから。
──例えば『バリバラ』なんて、すごく面白いですもんね。
山里 『バリバラ』も、始まった時はびっくりしました。
──2回の単発放送(「プロ彼女」と「没落社長」)を経て、10月から番組がレギュラー化されると聞いた時はどう思われましたか?
山里 一番の心配は、掘り下げてこれだけ面白くなる人たちを毎週用意できるのか? と。このクオリティは毎週できるようなものじゃないのに、それを毎週やるのって大丈夫なのかな? って思いました。

いつ終わっても不思議じゃない番組だと自覚している


──かなりスレスレな線を行ってる番組なので、楽しく観つつ、問題が起きてトラブルにならないだろうか……という不安もあったりします。山里さんも、元薬物中毒者の回に新聞のラテ欄で「薬物にSAY NO」と書いてあったのがヒヤヒヤしたとラジオでおっしゃっていました。お二人自身、この番組はスレスレの道を歩いているという自覚はありますか?
山里 う〜ん……、YOUさんあります?
YOU ううん。編集もあるし。
──なるほど。
山里 ブタとモグラになってるから、「自分じゃない」という気持ちが働いて皆さん色々言ってくれます。だから、ライターさんがおっしゃったことを僕らも思ってますからね。「終わる時は突然だろうな」と。


──ハハハハハ!
山里 後から「YOUさん、やっぱりあれ問題でしたね」って話しながら最終回を僕らは見届けると思いますよ。
YOU こんなこと、続くわけないですよね。
──ある日、突然(笑)。
山里 それくらい皆さん赤裸々に言ってくれてますし、スタッフさんも「これは出せるだろう」っていうギリギリのところを攻めていくせめぎあいで。人の深いところ、本質に入っていくと、結果的にギリギリな話になっていく。登場してくれる方も、ギリギリなところを話してくれる。スタッフも、すごく一生懸命調べてくれたり探してくれたりしてくれてます。
YOU 大変だと思いますよ、取材とか。
山里 ムッチャクチャしっかり取材してくれてますもんね。
YOU うん。

1本の収録で、トークには2時間もかけている


──ブタになったというテイなので皆さん明け透けに喋ってくれていますが、一方でお二人もモグラになったという設定です。だからこそ、顔が出てる時よりもエグく突っ込んだことを聞けるということはありますか?
YOU いや、ウチらは普段からなんで。だって、もうバレてるし。書いてあるし、名前(笑)。
山里 変身するシーンからありますからね(笑)。
YOU だから、ウチらは何も隠れてないみたいな。
──たしかに、そうでした(笑)。
山里 でも、相手が何でも言っちゃう気持ちになると、自然と僕らも「ここまで聞いていいんだ」という気持ちになって、その答えに「おぉ、すげえな!」となって。テレビで観たら「結構、YOUさんえげつないこと聞いてたな」って。YOUさんもオンエア観たらそうなりますよね? ……って聞こうと思ったけど、YOUさんはオンエア観ないんだった(笑)。
YOU そんなことないですよ。毎回、欠かさず観てます。
山里 失礼いたしました(笑)。
──山里さんは、後から観たら「結構、エグく行っちゃってたな」と思うことが多いんですか?
山里 この番組って、一人に対してかなりしっかりお話させていただけるんですね。番組は30分ですけどすごく長い時間お話を聞いてるんで、オンエアを観て「あっ、ここを使ったか!」「ここを掘ったらすごいの出てきたけど、やっぱりここだなあ」って思ってます。
──番組は1本30分ですけど、収録はもっと全然長いんですか?
山里 2時間くらい喋ってますよね?
YOU 長いっすねえ。
山里 でも、掘れば掘るほど面白いんで、平気で2時間できちゃうんですよねえ。

罵倒し合いたいんだけど、結局は理解できてしまえる


──番組ではスレスレな人、例えば元麻薬中毒者とかプロ彼女とか訳ありな人が登場しています。どうしてもネガティブな先入観を持ってしまいがちだと思うんですが、いざ直接お話を聞いてみると「あれ、実は意外と……」と、良い方向に印象が変わった回はありましたか?
山里 YOUさん。これ、ちょうどさっき喋ったばっかりでしたねえ? 本当にねえ……それなんですよ!


YOU (うなずいて)本当は、ケンカとかしたいんですよ。罵倒したりされたりし合いたいんですけど。
山里 「あんた、間違ってる!」なんて言ったりね。
YOU でも、最終的に「そうなんだ、しょうがないね」みたいな。そんな風に、不思議となりますね。
山里 掘ってくと「それがこういうことを生み出すんだったらしょうがない」というものが根底にあるし、「イヤな奴かと思ってたけどむしろ愛すべき人間だったなあ」という感じになるんですよね。それは、僕らが日和ってるとかじゃなくて。いつも言いますもんね、「もっと怒れる相手連れてきてくださいよ」って。「もっと罵倒したい!」ってくらいなんですけど。
YOU でも結果、そういうことは無いですね。

──今、「たまにはケンカしたい」と伺いましたが、収録を実際に見学させていただいた印象としてはお二方のお喋りがすごく優しく聞こえました。
山里 あっ、マジすか?
──お二方は、決して上から目線でお話をされていないので。
YOU それよりも、上から行けないっていうね(笑)。
山里 そうなんですよね。意識してるわけじゃないです。
YOU 普通に出ちゃうやつです、農民なんで(笑)。上から行き方がわからない。アハハハハハ!
山里 ずーっと下からやってきましたんで。
YOU 上を見て行くのが好きなんで(笑)。
──でも、生で観てみるとすごく優しい喋り方をされているという印象でしたよ。
山里 ほぉ〜。
YOU はぁ〜。
山里 得しましたね、YOUさん。
YOU 得しましたね。
山里 実は文字にしてみると、結構えげつないセリフになってるはずですよ。
YOU そうなんすよ。


山里 YOUさんは口調がやわらかいから「優しいなあ」という印象になるかもしれないですけど、文字に起こしてみたら「それは聞いちゃダメよ」「それは普通言わないよ」っていうくだりが結構あるんで。それが、『ねほりんぱほりん』が持つマジックなんですよね。
YOU ニュアンスでフワッとさせたりしますけど、意外と全然優しくなかったりしますよね(笑)。気持ちは優しいですけど、聞くことは聞きたいので。モグラとブタという絵面で観ているとそうでもないかもしれないですけど、本当は意外とね?
山里 やってる最中に、僕が思いますもん。「それはダメよ!」って。そして、家帰ってテレビを観たら「いや、それ流すのか」って(笑)。
──アハハハハ!
山里 だから、面白いんじゃないですかね。

「『ねほりんぱほりん』の取り上げ方は、最も健全な方法だと思う」(山里)


──個人的に印象に残っているは、芸能記者が登場した回でした。YOUさんも記者さんに「死んで」とおっしゃっていましたが(笑)。
YOU 言いやすいですよね、あれだけ憎たらしく来ていただけると。やっぱり女の子たちはいい人になっちゃうし、うん。でも、芸能記者の人はがんばってくれてました。
山里 やっぱり、ヒールとしてね。でも、出し方をヒールっぽくしてるだけで、言ってることは相当ひどかったですけどね(笑)。YOUさんの住所とか、すぐ出てきたもん。「いつ、どこで飲んでましたよね?」って、凄かったですね。
──三宿の写真が出てましたね(笑)。
山里 そうそう、そんなんも出ちゃう。
──一方、お二人が特に印象に残った回は何でしょうか?
山里 これ、ありがたいことに毎回各ジャンルのトップが来るんだよなあ。いつも、印象に残るんですよね。ここに来る人からすると、匿名とはいえ怖いはずなんですよ。その怖さに打ち勝って自分たちの地位向上のために全てをさらけ出してくれてる姿と、それによって解ける誤解。そういうのが見れるので、ああいう人たちの取り上げ方として『ねほりんぱほりん』は一番健全な方法をとっているんじゃないかと思います。
──そうですよね。いつも、最終的にはシンパシーを感じられる着地点になっています。
山里 本当、そう。

(寺西ジャジューカ)

l後編に続く