<トランプ次期大統領のタカ派顧問が主導する強硬策は、アジア全域に悪影響を及ぼしかねない>

 ドナルド・トランプが勝てば御しやすい――アメリカ大統領選のさなか、中国当局には「トランプ大統領」を歓迎するような空気さえ漂っていた。

 だが今やそんな楽観ムードは吹き飛び、警戒感が強まっている。大統領就任を年明けに控えたトランプが今月初めに台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と電話で会談し、米歴代政権が堅持してきた「1つの中国」の原則の見直しを示唆したためだ。反発した中国は核搭載可能な爆撃機を南シナ海上空で飛行させ、台湾を主権国家と認めるような発言を続ければ、米中関係は崩壊すると警告している。

 台湾を利用したトランプの挑発は、対等な米中関係への移行を模索する中国への意図的な攻撃の第1弾といえる。対中強硬派の側近に囲まれたトランプは、台湾に接近し、アジアの軍備を拡大し、アジア諸国とTPP(環太平洋経済連携協定)に代わる2国間貿易協定の締結を進めることで、中国の軍拡と経済成長に対抗しようとしている。

 最初の兆候は政治顧問の人選だった。トランプ陣営には、オバマ政権時代よりずっと強硬な対中政策を提唱するタカ派の面々が並んでいる。

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 アジア問題担当顧問のマイケル・ピルズベリーは、中国がアメリカをしのぐ超大国になるための「100年マラソン」戦略を極秘に進めていると著書で論じた人物だ。軍事顧問のJ・ランディ・フォーブス下院議員は、中国を牽制するために海軍の大幅増強を提唱。ピーター・ナバロは自由貿易反対派の経済学者で、米台の接近を唱えている。

 彼らの対中政策は、アメリカが経済的にも軍事的にも中国を凌駕していた時代への逆行を思わせる。だが中国は軍備の近代化を加速させ、今やアメリカの優位は大きく揺らいでいる。経済面でも、TPP離脱後のアメリカが制裁関税などで中国を抑え込むのは困難だし、逆効果だ。

 トランプ陣営が選挙後も強硬な態度を取り続けるとは、中国にとっても驚きだった。中国当局は仮に大統領選でトランプが勝っても、当選後は米政界の既存の外交勢力がタカ派顧問らの影響力を中和し、急激な変化を阻止するだろうと考えていた。

「誰かが現実や真実から懸け離れた主張をしても、米政府は従わないだろう」と、全国人民代表大会外事委員会の傅瑩(フー・イン)主任委員は大統領選の数日後に語っていた。彼女は中国の「100年マラソン」への警戒を説いたピルズベリーの著書を「ナンセンス」と切り捨て、「彼がトランプの顧問だというニュースには笑った」と語ったものだ。

 だがもはや、笑い話ではない。トランプはFOXニュースのインタビューで「中国と貿易を含むさまざまな取引ができないのなら、なぜ『1つの中国』に縛られなければならないのか分からない」と発言。中国は深刻な懸念を表明し、トランプの真意を探ろうと躍起になっている。

[2016.12.27号掲載]

ジョン・ハドソン