写真提供:マイナビニュース

写真拡大

Web上からの実店舗送客における有効な手段の1つとして「O2O(Online to OfflineもしくはOffline to Online)」が語られるようになって久しいが、O2Oの正確な成り立ちや定義、そして「オムニチャネル」との違いは意外とわかりにくい。そこで本連載では、日本国内におけるO2Oの歴史を振り返りながら、最新の活用事例や今後の展望について説明していく。

○国内のO2O施策の源流とも言える「ぐるなび」

日本国内においてO2Oという言葉が聞かれるようになったのは2011年から2012年にかけてである。LTEによる高速通信や「LINE」を筆頭とするスマートフォン特化サービスの普及により、企業の店舗送客や販促活動が徐々に「LINE」などのプラットフォームや自社アプリ上で行われるようになっていった。

そうした中で、ジオフェンシングやビーコンといった位置情報などを活用したサービスも続々と登場するようになっていくのだが、O2Oというキーワードが登場する以前にWebからの実店舗送客がなかったわけではない。

1995年にWindows 95が発売されたことによりインターネットは爆発的な普及を見せるが、いち早く店舗送客にフォーカスしたサービスが「ぐるなび」である。1996年6月にサービスが開始されると、オンライン上から飲食店の予約ができる利便性の高さでユーザー数を伸ばしていく。

加盟店舗がサイト上の自店舗ページでクーポンを掲載し、宴会プラン割引などユーザーメリットの大きな情報を掲載することで店舗送客を図るモデルは、のちにリクルートの「ホットペッパー」などが追随し、一大ジャンルとして今もなお拡大を続けている。

O2Oとは「ユーザーを実店舗へ送客するためのオンライン上における技術・販促施策」であり、ぐるなびの確立したクーポン送客は日本国内におけるO2O施策の源流といっても過言ではない。

一方、オムニチャネルとはオンラインとオフラインの境目なく、Webサイト、アプリ、SNS、店舗・コールセンター、カタログなどのあらゆる接点において、一気通貫した顧客対応を可能とする概念をいう。これらのうち、Webサイトなどのオンラインから店舗への送客手段(Online to Offline)、もしくは店舗からのECサイトやSNSへの誘引(Offline to Online)を総称してO2Oと呼ぶ。

○店舗とECでポイント利用を実現したヨドバシカメラ

1990年代後半から始まった「楽天」などのECサイト需要は、2000年に入り、ADSLによる回線の高速化も手伝い増加の一途をたどる。そんな中、実店舗に加えてインターネット上にECサイトを設けて販路の拡大を図る企業が続々と現れる。

ユニクロや無印良品などの小売大手がECサイトに参入する中、ヨドバシカメラも1998年にECサイト「ヨドバシ・ドット・コム」を立ち上げてEC経由での売上を伸ばしていたが、当時オンラインでの購入時にためたポイントは店舗でのみ利用可能となっていた。その後、ポイントは共通化され、店舗とECの双方でポイントを利用できる。

今でこそ、店舗とECの双方でポイント利用できる状況は当たり前となっているが、ポイントカードの草分けである同社の取り組みは、今日のO2Oに通ずる先進的な取り組みであったと言えるだろう。

○「おサイフケータイ」、かざすクーポンにも注目

また、現在のO2Oの活況に至るまでの流れの中で忘れてはならないのは「おサイフケータイ」の登場である。NTTドコモは2004年6月にFelica対応端末を発売し、スマートフォンが登場するまで、日本独自の進化を続けたフィーチャーフォンの主要機能の1つであった。用途はクレジット決済、ポイントカード、電子マネー、チケット発券とさまざまであったが、その中で店舗送客の領域において活用されたのがクーポン利用である。

中でも、日本マクドナルドは「かざすクーポン」によって、実に2年余りで1000万人を超えるユーザーに対してリーチし、クーポンやスタンプを活用した店舗送客を実現した。また、電子化によりクーポンの消費状況などの顧客分析や、分析に基づくCRMを可能とした。それまでの「クーポン画面を印刷する」「クーポン画面をかざす」といったアクションと異なる斬新なサービスであった。

また、マクドナルドの後を追うように、クーポンを軸にした店舗送客をスタートしたのがすかいらーくグループであった。同グループのガスト、バーミヤン、ジョナサンといった複数ブランドを横断したクーポンを利用できる「オトクーポン」はキャリア公式サイトではなく、エンターモーションのCMS「MediaMagic2.0」を用いた一般サイトであった。公式メニューからの集客が主体だった当時、一般サイトの「オトクーポン」はサービスイン半年で140万人もの会員を獲得し、衝撃を与えた。

すかいらーくグループが140万人の会員を獲得したのは2009年のことであり、この時既に、日本市場にはスマートフォンが投入されていた(2008年7月11日に、ソフトバンクよりiPhone 3Gが発売)。また、同年夏にはAndroid端末も登場することになるが、当時、爆発的な盛り上がりを見せていた「GREE」「mixi」「mobage」を中心としたソーシャルゲーム・プラットフォームや、「着うた」などの公式サイトなど、フィーチャーフォンの牙城はこの時点ではまったく揺らぐことはなく、スマートフォンへのシフトが始まるのはさらにこの数年後のことである。

2010年代に入り、大手企業がO2Oを超えてオムニチャネルの推進を始める中、個店など中小企業の店舗送客の術は、「ぐるなび」や「ホットペッパー」などの予約サイトへの掲載のほかに、ブログやメルマガを活用した地道なユーザーの獲得、旧来のチラシ、DM、スタンプカードなどのアナログな手段に限定されていた。だが、LINEなどのスマートフォンに特化したサービスの登場により、中小企業の店舗集客のありかたも大きく姿を変えることとなる。

次回は、スマートフォンシフト後のO2O市場の変化について触れるほか、スマートフォンを軸にした施策の解説、民間企業だけでなく、地方自治体なども含めたO2Oに関する取り組み・事例についても紹介したい。

著者プロフィール

谷内 亮介

GMO TECH株式会社 O2O事業部 メディアプロデュース部 エバンジェリスト。大学卒業後、私立大学事務局や広告代理店などの勤務を経て、2013年に株式会社ぐるなびへ入社、ビッグデータ・O2Oを用いた販促商品企画に携わる。2016年3月に当社入社。O2Oアプリ作成ASPサービス「GMO集客アップカプセル」の企画・プロモーション・アライアンスを担当。

(谷内亮介)