美容系スタートアップ「マディソン・リード」 年商18億円に成長

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どの投資家にも、大きな魚を逃した経験がある。エイミー・エレットの場合、ヒゲ剃り用カミソリのオンライン定期購買ビジネスが大当たりしたスタートアップ、「ダラー・シェイブ・クラブ」がそれにあたる。同社は2016年7月、ユニリーバに10億ドル(約1,170億円)で買収され、最初期からの出資者たちに莫大な富をもたらした。

「取り憑かれたように、パーソナルケア用品に関心を持つようになりました」と、エレットは振り返る。エレットはスターバックス創業者のハワード・シュルツが率いる投資会社Maveronのパートナーとして、2008年から2013年までサンフランシスコ本社のトップを務めていた。「男性のヒゲ剃りのように、女性にとって習慣になっていることは何だろうと考えました」

やがてエレットは市場規模150億ドル(約1兆7,600億円)に上る米国のヘアカラー市場を調べ始め、新規参入の余地があることに気づいた。女性の85%が髪を染めており、その頻度は平均すると8週間に1回。52%が市販のヘアカラー剤を使って自宅で染め、48%が美容室で染める。

ドラッグストアに並ぶ、化学物質が大量に含まれた5.99ドル程度のヘアカラー剤を使うか、プロの美容師によるカラーリングに200ドル以上費やすか。市場は見事に二極化していた。

その中間を開拓するため、エレットは2013年にベンチャーキャピタルの世界を去り、自ら起業した。社名の「マディソン・リード(Madison Reed)」は娘の名前だ。これまでの資金調達額は4,000万ドル(約47億円)に上る。

ヘアカラー剤の定期購入サービス

マディソン・リードが販売するヘアカラー剤の売りは、サロン用ヘアカラー剤と同等以上の品質だ。原料の安全性や透明性を重視する現代の消費者のために、イタリアの専門メーカーと組み、アンモニア、レゾルシノール、パラベン、フタル酸エステル、グルテン、パラフェニレンジアミン(PPD)を排したフォーミュラを完成させた。

価格は、一度きりの購入の場合は1箱25ドルだが、会員になって定期購入すると19.95ドルになる。会員の平均的な購入サイクルは6週間に1回。マディソン・リードにしてみれば、少なくとも1人につき年間160ドルの売り上げが保証される(ヘアカラー剤を2本使うロングヘアーの場合は240ドル)。加えて、色落ちを防ぐシャンプーやコンディショナーの売り上げもある。

フォーブスの調べでは、2014年に100万ドル(約1億1,700万円)だったマディソン・リードの年商は、2016年は1,500万ドル(約17億6,000万円)を超す見込みだ。「この事業モデルが成功する理由はリピート利用にある」とエレットは話す。

今月、マディソン・リードはメガネブランド「ワービー・パーカー」やアパレルブランド「ボノボス」など、成功した他のEC系スタートアップの後を追うかのように、初の実店舗(サロン)「マディソン・リード・カラー・バー」をオープンした。

場所は、話題のジム「ソウルサイクル」をはじめ、都会の女性をターゲットにしたショップやサービスがひしめくマンハッタンのフラティロン地区。サロンでは、わずか45分間で根元を染める45ドルのリタッチのほか、35ドルのブロー、同じく35ドルのグロスカラーなどのサービスを提供する。

女性180万人の「頭髪データ」

マンハッタンでのサロン事業がうまくいけば、ダラス、マイアミ、シカゴ、ミネアポリス、デンバーといった他の都市でも展開するという。その一方でエレットは、30ドルの白髪隠しパウダーをはじめとするヘアケア用品の販売経路の拡大にも乗り出しており、テレビショッピングのQVCや、人気コスメショップのセフォラでの販売を始めたばかりだ。

「オムニチャネル化が必須だと気づきました。オンライン販売だけでは(市場の)形勢を変えることはできません」とエレットは言う。

現時点でマディソン・リードの強みは、テクノロジーに精通している点だ。たとえば同社のオンラインストアには、ユーザーが髪の状態や色に関する12の質問に答えると、その人に合ったヘアカラー剤のページに辿り着く仕掛けがあり、このアルゴリズムが非常によくできている。

また、フェイスブックのメッセンジャーやSMSを使ったカウンセリングでは、ユーザーは質問項目に答えるだけでなく、頭部の写真を送るように促される。このマディソン・リードが持つ女性180万人の「頭髪データ」に、大企業が注目している。そう、ダラー・シェイブ・クラブが注目された時のように。

「私たちは女性たちの髪に関する情報をすべて把握しています」とエレットは微笑む。「それは私たちだけが持つ強みです」