クラブW杯で準優勝しても、彼らは満たされていない。

 12月24日に行なわれた天皇杯準々決勝で、鹿島アントラーズがサンフレッチェ広島を下した。29日に行なわれる準決勝へ進出した。

 2016年のJ1リーグは、11月3日に2ndステージが終了した。この時点ですべての公式戦を終えたJ1のチームもあるなかで、鹿島は11月だけで天皇杯とチャンピオンシップ(CS)をさらに3試合消化し、12月も広島戦が6試合目である。

 肉体的な消耗もさることながら、CSとクラブW杯という緊張感の高い戦いを終えたばかりである。達成感に満たされてもおかしくない。天皇杯には来季のACL出場権がかかっているが、Jリーグ年間王者の鹿島はすでに2年ぶりの出場を決めている。天皇杯で敗退したとしても、彼らが批判を受けることはないだろう。労いの言葉をかけられるはずである。

 それでも、このチームは戦いのエネルギーを枯らさないのだ。常勝チームとしてタイトル獲得を義務づけられている──クラブに息づく遺伝子が、不甲斐ない戦いを許さないのは間違いない。さらに加えて、成長を感じることができているのも大きいだろう。

「鹿島でも、五輪の最終予選でも感じましたが、タイトルを取ることで、ホントに人って変わるんだと実感しています。一つとるとまた取りたい、という意欲が増していきます」

 CSもクラブW杯もまだ意識できない今年の春に、植田直通がこんな話をしていた。年間勝点3位からJリーグの頂点に立った彼らは、引き分けでは相手を上回れないCSをくぐり抜けたことで勝負強さに磨きをかけた。リーグ3位でのクラブW杯出場に大きな責任を感じ、浦和や川崎Fへの同情と言うべき遠回しの批判を、結果を残すことで弾き返した。それでも優勝には手が届かなかったことがまた、チームのモチベーションに火をつけている。

 勝つことで鹿島が、鹿島の選手が変わってきたことは、スタンドから観ているだけでもはっきりと伝わってくる。いまの彼らは、2ndステージ終了当時とは明らかに違う。同じピッチに立つ選手なら、鹿島の「強さ」をダイレクトに感じていることだろう。

 29日の天皇杯準決勝で、鹿島は横浜FMと対戦する。石井正忠監督のチームが、逞しい前進をさらに続けるのか。ベテランがチームを支えつつ、若い才能が台頭しつつある名門が、伝統とするカップ戦で強さを発揮するのか。

 対戦相手からすれば、鹿島だけを走らせるわけにはいかない。鹿島を上回るために、これまで以上のパワーを絞り出していくだろう。ひとつのチームの成長が、リーグ全体を高めていくのである。クラブW杯でJリーグ勢過去最高の高みへ鹿島が辿り着いたことで、結果的にリーグ全体が恩恵に授かることができているのだ。17年、18年はUAEがホストを務めるクラブW杯だが、19年以降はまた日本で開催してほしいものである。