「痛いの痛いのとんでいけー」は世界共通(shutterstock.com)

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 「手当て」という言葉がある。「手を当てる」ことで痛みが和らいだり、楽になったりするという、経験は誰もがあるかもしれない。この「手当て」、実は医学的にも説明できることなのだ。

 これは、医療・医学に携わる人なら一度は学んだことがある「ゲートコントール理論」が説明の鍵となる。ゲートコントール理論を簡単に説明すると次のようになる――。

 人の身体にはたくさんの神経線維が通っていて、それぞれ、痛みを感じるもの、触っている感覚の神経、温度を感じる神経などに分かれている。たとえば、「痛み」は<痛みを感じる神経線維>が刺激されることで起きる現象だ。

 そこに、違う刺激を与えると、別の神経線維が活性化する。具体的には、「触っている」ことを感じる神経線維を刺激するのだ。すると、「痛み」の感覚よりも「触っている」感覚の神経線維がより働くことで、「痛み」が感じづらくなるわけである。

 「痛み」の感覚に、「触れる」感覚を覆い被せるようなイメージを持つとわかりやすい。

 なぜ、このようなことが起こるかというと、痛みを感じるのは細い神経とされており、触っていることを感じる神経はより太い神経線維なのだ。太い神経線維が刺激されると、細い神経線維が働きづらくなる。

 つまり、「痛い」感覚よりも「触る」ことでこちらの神経線維が優位に働き、結果的に痛みを感じづらくなる(痛みが和らぐ)という理論である。

 これがゲート(扉)を開けたり閉めたりするようにコントロールすることに似ているから、「ゲートコントール理論」と名付けられたと言われている。
「痛いの痛いのとんでいけー」は世界中にある?

 この理論は1965年に提唱されたものなので、現在では「古い理論だ」と評価する学者も少なくない。だが、いまだにさまざまなものに応用されている。

 「手当てが痛みを和らげる」というもの以外にも、たとえば「湿布」もこの理論が一役買っている。湿布には、抗炎症剤が入っているものや冷却効果があるものが一般的だ。その効果によって痛みを緩和するとされている。

 ところが、その効果に加えて「触れている」という刺激も、湿布が多くの人に愛用されている理由の一つかもしれないのだ。

 また、一般家庭用として販売されているロングセラーの健康機器「低周波治療器」もゲートコントール理論が根拠のひとつ。低周波を流して疼痛を和らげる。医療機関では、「電気治療法」と取り入れている施設がある。電気刺激を与えることで、痛みを感じる神経線維よりも別の太い神経線維に働きかける、というわけである。

 このように考察すると、痛いところを「さする」「押さえる」という行為にも、科学的な根拠が存在することがイメージできるだろう。

 実際に、日本では古くから「痛いの痛いのとんでいけー」というような<魔法>の言葉がある。これはゲートコントール理論の応用だといってもいい。実は、同じような<魔法>の言葉は世界中で使われている。

 英語だと、「Pain, pain go away」と言いながら痛いところをさすったりする。スペイン語やフィリピン語でも同じように触りながらささやく<ことば>が存在する。

 古今東西で行われることや、古めかしくとも今まだに続いている行為は、それなりの効果が期待できるから継承されているといえる。そして、検証してみると科学的な根拠が導かれることもある。

 「手当て」で痛みが和らぐというセルフメディケーションを覚えておいて損はないだろう。医学的な根拠を知った上で行えば、なおさら効き目があるかもしれない。
(文=編集部、監修=三木貴弘)

三木貴弘(みき・たかひろ)
理学療法士。日本で理学療法士として勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の医療、理学療法を学ぶ。2014年に帰国し、東京の医療機関に理学療法士として勤務。現在は札幌市の整形外科専門の医療機関に勤務。その傍ら、一般の人に対しても正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。執筆依頼は、"Contact.mikitaka@gmail.com"まで。