「患者さんには便秘体質の人が多いので、自分でできるツボケアなどをお教えしています。日々のツボ指圧やストレッチで改善できることがあります」と話すのは、鍼灸(しんきゅう)師で太子橋鍼灸整骨院(大阪府守口市)の丸尾啓輔院長。そこで、具体的なセルフケアの方法について聞いてみました。

「気・血(けつ)・水(すい)」の流れが滞っている

便秘でおなかが不快な原因について丸尾さんはまず、次のように説明します。

「東洋医学では、ヒトの体は『気・血(けつ)・水(すい)』の循環、バランスを重視してとらえます。便秘の場合、運動不足や冷えで『血(けつ)』の流れが、また、食習慣の乱れで『水(すい)』の流れが、それに、ストレスで『気』の流れが滞っていると考えます。

胃やおなかのあたりが緊張でかたくなってはいませんか。自分では気付かない場合もあるので、日ごろから、寝る前や起床時にこれから紹介するツボやおなか全体に手をあてて、胃とおなかの調子に注目してください」

ではさっそく、丸尾さん厳選の「便秘をセルフケアするツボと指圧法、またストレッチの方法」を教えてもらいましょう。

「ツボの指圧はすべて、息を軽く吐きながら行いましょう。ツボの位置には個人差がありますので、自分がイタ気持ちいいと思う場所を探してください。また、おなかまわりのツボは強く押し過ぎると炎症を起こす、皮ふを傷めることがあるので、ソフトに『さする』という感覚で行いましょう。

また、それぞれ、寝る前と、起床時、食後に、またトイレタイムなどに指圧してください」(丸尾さん)

1.ツボ:中脘(ちゅうかん)

特徴
「中」は「中間」、「真ん中」を、「脘」とは「胃袋」を意味し、胃袋の真ん中を表します。胃の消化不良、もたれ、胃痛などを緩和し、腸の状態の改善に働きます。食べ過ぎ、飲み過ぎ、だるいときなどにも有用です。

位置
みぞおちとおへそを縦に結んだ線の真ん中。おへその上に、小指からひとさし指までをそろえて上がったところ。

刺激法
あお向けに寝ころんでおなかをゆるめた状態で、胃のあたりに両手を置き、なか指を重ね合ってひと押し10秒ほどを軽く3〜5回、繰り返します。

また、手のひらでさする、手をあてる、カイロをあてるなどして温めるのもいいでしょう。

2.ツボ:関元(かんげん)

特徴
「関」は「要所」、「元」は「元気」を意味し、東洋医学で言う「気・血」の元気の源を表します。このツボが痛い、かたい、ゆる過ぎる、冷たいなどだと、全身に元気がない状態とみることがあります。便秘、下痢、胃炎、胃もたれなど胃腸の不調のほか、冷え症、頻尿(ひんにょう)、むくみなど泌尿器系の不調にも有用です。

位置
1.の中脘からおへそをつなぐ体の中心線上で、おへその下に小指からひとさし指までをそろえて下がったところにあります。

刺激法
あお向けに寝ころんで、おなかをゆるめた状態で、両手のなか指を重ねて、ゆっくりとひと押し10秒を3〜5回、繰り返します。寝る前と、起床時、食後に、またトイレタイムなどに指圧してください。

また、手のひらでさする、手をあてる、カイロをあてるなどして温めるのもいいでしょう。

3.ツボ:帯脈(たいみゃく)

特徴
「帯」は「腰のまわり」、「脈」は「すじ道」を意味し、腰のまわりのすじ道のツボを表します。便秘がひどくなると、このツボを押さえたときに痛みや違和感を生じます。刺激することで腸の「ぜん動運動」を促します。便秘、下痢や吐き気などおなかの不調のほか、尿が出にくいといった泌尿器系、また月経痛など婦人科系の不調にも有用です。

位置
おへそから左右にまっすぐわき腹まで線を伸ばし、腰骨の手前のへこんだ部分。左右にあります。

刺激法
なか指の先でひと押し10秒を3〜5回、繰り返します。次に紹介する4.の天枢(てんすう)のツボとセットで覚えておき、同時に指圧すると作用が高まるでしょう。

また、手のひらでさする、手をあてる、カイロをあてるなどして温めるのもいいでしょう。

4.ツボ:天枢(てんすう)

特徴
「天」は全身をおへそあたりで二分割にしたときの上半分を、「枢」は「要(かなめ)」を表します。東洋医学では、おへその周囲は上半身と下半身のエネルギーが交差する重要な部位と考えます。そのため、おなかに不快感があるときは、おへそ周囲のツボに注目して対処します。

位置
おへそから外側の左右へ、親指の幅3本目ぐらいの場所。左右にあります。

刺激法
ひとさし指で、ひと押し10秒を3〜5回、繰り返します。(3)帯脈と同時に指圧すると作用が高
まるでしょう。

また、手のひらでさする、手をあてる、カイロをあてるなどして温めるのもいいでしょう。

5.按腹(あんぷく) 上記のツボ全体を指圧する

あおむけに寝て、ゆったりとした気分で1.の中脘に両手を重ねて置きます。

ここをスタート地点として、「1.中脘→2.関元→3.右の帯脈と4.右の天枢あたり→1.中脘、3.の左の帯脈と4.の左の天枢あたり→その少し下あたり」の順に、「の」の字を描くようにマッサージをします。この方法を、「按腹(あんぷく)」と呼びます。

「の」の字はちょうど、大腸の形に沿うことになり、カーブにあたる部分は、便が詰まりやすい部分です。

最初は、軽くさするように3回ほど、慣れてきたら、自分で気持ちが良いと感じる強さで行ってください。かたいところや痛む部分があれば、そこをゆっくりと息を吐きながら指圧してください。

中脘のあたりがかたいと緊張しているかもしれません。リラックスして行うほうがよい効果がありますので、ひざを立ててみてください。すると、おなかの筋肉(腹直筋)がゆるみやすくなります。

これを、起床時と就寝前、また、トイレタイムやデスクワーク中なら座ったままで、思い立ったときにいつでも行いましょう。

6.おなかを反るストレッチ

うつぶせに寝て、両手を胸の横につき、上半身だけを起こします。20〜30秒ほどキープ。腰痛対策として知られるポーズですが、おなかを伸ばすことになり、内臓の軽い運動にもなって便秘対策になります。仕事中などで寝る場所がないときは、立って両手を腰に当て、上半身を後ろへ反らすだけでも有用です。1日に3〜5回行いましょう。

まずは2週間、起床時と寝る前に実践

最後に丸尾さんは、こうアドバイスを加えます。
「もちろん、暴飲暴食や不規則な食生活、睡眠不足などを避けて、食物繊維が豊富な食事をとるなど、生活習慣を見直してください。その上で、これらを行いましょう。

1度で1〜2分、毎日3〜5回繰り返してもトータルで5分ぐらいでできます。これを2週間は継続してください。特に、起床時と寝る前には忘れずに実践しましょう。おなかの調子がよくなってくるはずです」

筆者はこれらを習慣にしたところ、3日ほどで効果がありました。旅先や出張先など生活環境が変化したときにも実践することをお勧めします。また、便秘が改善しても、起床時と寝る前にはおなかをさする時間をとると、予防にもなるように思います。ぜひ参考になさってください。

(取材・文 阪川夕輝/ユンブル)