平昌五輪プレシーズンの全日本選手権が25日、悲喜こもごものドラマを生んで終わった。女子は新旧全日本女王が対照的な結果を出す中、若手の台頭が際立った戦いとなった。

 豊富なタレントぞろいの女子を制したのは、先のグランプリ(GP)ファイナルで2年連続銀メダルに輝いた宮原知子で、2008年の浅田真央以来、9人目となる3連覇を達成した。

「フリーはもうちょっといい演技がしたかったです。ちょっと悔しいですが、3連覇することができてうれしいです」

 今回のタイトル獲得の裏では、濱田美栄コーチからの大きな後押しがあった。濱田コーチはリンクに出る前の宮原に「狙って勝ちなさい」と言って送り出したという。その言葉を聞いて18歳の闘志に火がついたことは言うまでもないだろう。

「プレッシャーになるよりも、勝ちたいと思った場面でしっかり勝つのが本当の金メダリストだと思うので、そういう強い人になりたいと思いました。3連覇した今回の優勝は、今までの中で一番優勝したいと強く思った試合でもありましたし、自分はもっと強くならないといけないと、あらためて強く思えた試合でもあったので、すごくいい経験ができました」

 3年前の初優勝の時は、報道陣に囲まれての囲み取材で、か細い声で自信なさげに受け答えをしていた宮原だったが、いまや、はっきりと聞き取れる声で自信にあふれたコメントを発している。その成長ぶりを見ると、宮原の人一倍の頑張りと努力に感心するしかない。

 今大会は、ノーミス演技をしたショートプログラム(SP)で出場選手中ただ1人70点台となる76.49点を出して首位発進。フリーでは、得点源となる3回転ルッツ+3回転トーループの2つ目のジャンプでステップアウトするミスを出し、課題の回転不足を後半の3回転ルッツで取られた。それでも、終始力強い演技を見せて138.38点の高得点を叩き出し、合計214.87点で3年連続3度目の完全制覇を成し遂げた。

「緊張があって力んでしまって、連続ジャンプのステップアウトは勢いが余ってしまった。その失敗よりも、その後の3回転フリップで回転不足にならないか不安がありましたが、何とか踏みとどまった感じです。全日本という大きな舞台でしっかり自分の演技がしたい気持ちが強かったので、もうちょっと気楽にいったらよかったかなと思います。特にステップシークエンスは強い振り付けで表現できているかなと思います」

 今回の勝利で宮原は、名実ともに日本女子のエースになったと言っても過言ではない。これまでエースと呼ばれた選手たちの中でも、全日本で3連覇を飾っているのは、1980年代以降では伊藤みどり、村主章枝、浅田真央の3人しかいない。その名選手たちの仲間入りを果たしたわけだが、当の本人はあくまでも謙虚な態度を崩さない。

「3連覇はしたかったですが、大会前は優勝など順位のことはあまり考えないようにして、自分の演技に集中することだけを考えて練習も本番もやっていました。SPはよかったですが、フリーは全体的にちょっと思い切りがなかったというか、スピードがなかったかなと自分では感じたので、もっと勢いよくいきたかったです。ファイナル以上の出来ができればガッツポーズをしたいと思っていましたが、できませんでした(苦笑)。今後は、自然とガッツポーズができるような演技をしたいです」

 全日本3連覇の偉業を成し遂げた宮原の視線の先には、平昌五輪金メダル獲得という大きな目標がある。その頂(いただき)に向けて着実に階段を上っていき、そろそろ女子フィギュア界を席巻するロシア勢に一矢を報いたいところだ。来年3月にフィンランドのヘルシンキで開催される世界選手権では、現世界女王のエフゲニア・メドベージェワら年下のロシア選手たちとどこまで対抗できるのか、注目される。

 その世界選手権前の来年2月には、韓国・江陵で五輪プレ大会となる四大陸選手権が行なわれる。まずは大会2連覇がかかる四大陸を制覇して、勢いをつけて世界制覇に挑んでほしいものだ。

 一方、元全日本女王の浅田真央は苦戦を強いられた。今季は左ひざ痛のほか、長年酷使してきた体のあちらこちらに痛みが出るなど、悪コンディションの中でシーズンを過ごしてきた。

 GP2大会では、初戦となったスケートアメリカで6位、フランス杯では過去最悪の9位。この結果、GPファイナル進出を逃し、シーズン後半の大会出場がかかる全日本選手権に照準を絞ってきたが、起死回生の挽回を狙った全日本で最悪の結末となった。

 SP、フリーともに今季前半は封印していた代名詞のトリプルアクセルに挑戦したが、不発。SPでは1回転になってしまい、得点さえつかずに8位発進。フリーでも冒頭の大技で転倒して波に乗れず、ジャンプミスを連発して得点が伸びずに合計174.42点の総合12位に沈んだ。

 この順位は14度目となる全日本で自己ワースト記録となり、12年ぶりに表彰台も逃すことになった。これで目指していた世界選手権の代表入りもならず、最終目標の2018年平昌五輪出場に向けた取り組みに暗雲が漂っている。

 自身のモチベーションを高める技でもあるトリプルアクセルを、全日本では何が何でも跳びたかった浅田。SPで失敗しているだけに、フリーこそは「何があっても回ろう」との気合いで挑んだが、回転不足の上に転倒に終わった。それでも、調整が遅れた今季、ようやく武器のトリプルアクセルを跳ぶところまで自分を持ってこられたことに胸を張ってみせた。

「この全日本で自分の滑りをしたかったんですけど、それができなくて残念でした。この大会に向けて、自分のいままでやってきた最高のレベルで臨みたかったので、その状態まできたことについては満足しています。いまはまだ終わったばかりなので、次(にどうしていくか)という気持ちにはならない。今回ここまで(調子を)戻してきたことに関してはよかったと思います。

 プログラムについては、最高のレベルでSPとフリーの2つをそろえることができなくて、少し悔いが残っている感じですね。今季に関して言えば、私自身の力を出すことができなかったかなと思います。シーズン前半はそこまで自分の力がなくて、(本来の)レベルでさえ臨むことができなかったのですが、この全日本ではとりあえず自分の最高のレベルで臨みたいと思っていましたし、自分のもともとのレベルまでは戻ってきてチャレンジできたことはうれしく思います。

 今後のことについては、まだ終わったばかりなのでちょっとゆっくり考えたいです。やっぱり競技なので、もちろん挑戦をして最高のレベルを目指さないといけません。(来季については?)挑戦する意思に変わりないです」

 現役引退を一度は考えながら、競技生活に復帰して2シーズン目。代表選考から漏れて今季は事実上の終了となり、厳しい現実が目の前に立ちはだかっているが、諦めるわけにはいかない。

 全日本12位という今回の結果で、来季のGPシリーズや全日本などの出場にも高いハードルができたことになるが、五輪シーズンとなる来季こそ、浅田ができる「最高レベルのプログラムで最高の演技」を見せ、3度目となる五輪代表獲得レースを最後まで戦ってほしいと思う。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha