カブドットコム証券は12月26日から、「投資信託のトータルコスト」の情報開示をスタートする。今回の取り組みについて、カブドットコム証券取締役代表執行役社長の齋藤正勝氏(写真:左)と、モーニングスター代表取締役社長の朝倉智也氏(写真:右)が対談した。

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 カブドットコム証券は12月26日から、「投資信託のトータルコスト」の情報開示をスタートする。トータルコストは開示情報ではないため、計算値に基づく推計値だが、これまでは「基準価額」として「トータルコスト控除後の時価」が示されるだけだったため、トータルコストの開示は、投資信託の運用コストについて改めて考えるきっかけになりそうだ。今回の取り組みについて、カブドットコム証券取締役代表執行役社長の齋藤正勝氏(写真:左)と、モーニングスター代表取締役社長の朝倉智也氏(写真:右)が対談した。

朝倉 金融庁がフィデューシャリー・デューティーの徹底を金融機関に求め、特に金融商品の手数料の開示は、これまで以上の透明化が求められています。今回始まった「投資信託のトータルコスト」の開示は、一歩踏み込んだコスト開示です。これまでどこもやって来なかったことに思い切って取り組んだことは御社の英断だったと思います。

齋藤 透明な情報開示を行うということは当社の文化のようなことなので、今回のトータルコストの開示も、私どもは当たり前のこととして取り組んだのですが、10月24日にリリースを発表した後で、「グループに銀行や運用会社もあるのに大丈夫ですか?」など、ご心配の声をいただきました。

 今回は、「信託報酬控除前トータルリターン」の情報をモーニングスター社からいただいて開示するものです。「信託報酬控除後トータルリターン」である基準価額と比較することによって、結果的にトータルコストが分かる。トータルコストが分かることによって、当然ながら、投資家からコスト削減の声が強くなるだろうということを心配されたのです。

 ただ、フィデューシャリー・デューティーで求められる情報開示の強化を考えれば、いずれは開示が求められる情報です。トータルコストが分かれば、運用会社の運用力がよりはっきりと分かります。コストを削減する圧力もさることながら、実力が問われるというのは、今の時代の競争として避けて通れないことだと思います。

朝倉 SNSの発達によって、従来は隠されていた情報が、どんどん表に出てきて拡散されるのは時代の流れで、止められるものではありません。

 しかし、投資信託のコストについては、近年、大きく低下していることも事実です。ノーロード(販売時手数料無料)の募集が増え、低コストのインデックスファンドの提供、そして、確定拠出年金向けに開発された低コストファンドの公募投信市場への投入などが進んでいます。現実問題として、コストカットは金融機関の収益を圧迫していると思いますが、いかがですか?

齋藤 SNSが隠れていた情報を表に出していくというのは、レストランなどの飲食業の口コミサイトが代表例ですが、医療や教育などの現場でもどんどん進んでいます。金融だけが特別ではないと思います。

 私どものようなネット証券は、手数料の価格破壊でお客さまから支持を得てきたので、株式の取扱い手数料で起こった価格破壊が、投資信託の取り扱いでも起こるのは必然といえるかもしれません。

 ただ、ネット証券は価格破壊だけをしたのではなく、様々な投資環境・手法を提供することで、投資家の方々に新たな利便性や投資機会を提供してきました。その背景には、今ではフィンテックと呼ばれる技術革新があります。ブロックチェーンなど資金決済に係わる基幹システムにまでフィンテックの波は押し寄せているので、投資信託の取引システムも一新される可能性があります。投信ビジネスで絶対に必要なシステムインフラが刷新され、運営コストが劇的に変化することも起こるのです。

 今回のトータルコストの開示が、どこまでのインパクトになるかは、分かりません。私どもは時代が求める情報開示に引き続き積極的に取り組み、技術力に磨きをかけることによって、さらなるコスト競争に勝ち残れるよう覚悟を持って努力していきます。

朝倉 フィデューシャリー・デューティーのベースは、ディスクロージャーです。今回の取り組みが、投信市場の一段の拡大につながるよう期待しています。