12月24日からちょうど1000日後となる2019年9月20日、日本でラグビーワールドカップ(W杯)が開幕する。2009年7月に自国開催が決定し、もう6年が経過していることを考えると、日本に「世界3大スポーツイベントのひとつ」がやってくる日は、あっという間だ。

 そこで今回は、日本ラグビー界で課題となっていることを考えてみる。「もっとこうしたらいいな」と普段から思っていることを、私見ではあるが、「プレイヤーズファースト」「代表チーム強化」「ファンがもっと楽しめる」という視点に立って、5つほど挙げてみたい。

 まず、ラグビーW杯での活躍を第一に考慮するのであれば、日本代表選手の試合数をコントロールすることは必須だろう。多くの主軸選手が11月の国際試合を「諸事情」で辞退した理由のひとつに、この「試合数の増加」があることは間違いない。

 昨年から日本チーム「サンウルブズ」が南半球最高峰リーグのスーパーラグビーに加入した影響もあり、トップ選手は最多で年間40試合ほどプレーしている。日本代表選手が心身ともに2019年のW杯をトップコンディションで迎えるためには、もう少し楕円球から離れる時間が必要だろう。たとえば、「日本代表にフルで参加した選手は、トップリーグとサンウルブズの試合を2試合ずつ休まなければならない」などの規定ができれば、どんなに多くとも年間33試合前後に抑えられるはず。

 昨今、ラグビー関係者の間では「シーズンストラクチャー」についての議論が盛んだ。シーズンストラクチャーとは、年間の試合スケジュールをいかに調整・構築するかということ。2月末からスーパーラグビーが開幕するため、今までのカレンダーで試合をこなすのは、はっきり言って難しい。

 トップリーグの今シーズンは、16チームの総当たり戦のみで優勝が決まる。来シーズンは、サンウルブズの活動期間を確保するため、1月中旬でシーズンを終える見込みだ。そしてプレーオフは、従来の日本選手権を当てはめる形で対応し、大学チームは参加しない方向だという。

 また、来シーズンから3地域で行なわれていた2部リーグが統一され、8チームによる全国リーグも始まる。これらのスケジュールを円滑にこなし、かつ選手への負担が大きくならないように強化を図るには、トップリーグがチーム数を減らしてホーム&アウェーのリーグ戦を行なうのが理想的だろう。

 もし、その実現が難しいのであれば、「トップリーグを東西、もしくは上位と下位リーグのふたつに分ける」という案なども考えられる。ホーム&アウェーの対戦と、東西もしくは上位と下位の交流戦という形がいいのではないかと思う。もちろん、リーグの開始時期を早めたり、11月の代表期間に試合をしたりするなど、さらなる工夫は必要だろう。

 しかしながら、プロ選手がプレーしていても、トップリーグ自体は企業チームが属するアマチュアである。そのため、宗像(むなかた)サニックス以外、チーム名に地域の名前は入っておらず、他のスポーツと比べてホーム&アウェーの意識が薄い。プロ化をすればそれらが解決する可能性もあるが、現在どのチームも50人前後の選手を抱えており、スタッフや練習場も確保しなければならない問題もあるため、いきなりの実現は難しいだろう。

 それでも1000日後に迫ったW杯開幕までに、ラグビーファンを増やしていかなくてはならない。そのためにはまず、宗像サニックスのように地域名を入れ、ファンが根づくためのホームスタジアムを確立してもらいたい。母体となる企業の本社と練習場の場所が異なるという事情も多々あるが、チームが地域に根ざしていかないと「観るスポーツ」に未来はない。もっと地域のファンを巻き込んでほしい。

 改革が必要なのは、トップリーグだけではない。大学チームが来シーズンから日本選手権に参加しないのであれば、多くの大学は12月中にシーズン終了となる。日本代表の主力選手が「大学時代に本気でやらなければいけない試合は、年間で数試合ほどだった」と語っているように、彼らが真剣勝負する場を増やすことも考えたい。

 現在、大学ラグビーは「関東大学対抗戦A」「関東大学リーグ戦1部」「関西大学Aリーグ」が中心となって、それぞれ8チームずつが所属している。全国大学リーグを発足させて、1部12チーム&2部12チームとする案や、関東のふたつのリーグを統合する案もあろう。ただ、試合時の移動や「早明戦」などの伝統的な試合のことも考慮すると、現実的には各リーグ6チームに減らして、それぞれの大学と2試合ずつやれば合計で10試合となり、よりレベルの高い試合が期待できそうだ。

 今シーズン、筑波大学4年のSO(スタンドオフ)山沢拓也は大学生ながらパナソニックでプレーしている。ただ残念ながら、ラグビー界にはJリーグのような特別指定選手の制度がなく、山沢の二重登録は認められなかった。大学のあるトップ選手は、「現在は無理ですが、後輩のことを考えると、二重登録のような制度ができればうれしい」と語っていた。

 そのような声を聞くと、状況によっては二重登録を認めたり、すでに加入が内定している大学生はトップリーグへの出場を可能にしたりするなど、早急に手を打つべきではないだろうか。また現在、大学の試合に外国人選手は原則、ふたりしか同時に出場できない。このルールも2019年のW杯を見越して、すでに日本代表選手になれる可能性のある選手は特別枠などを設け、出場可能にすべきだろう。

「日本代表マッチの制限」「トップリーグの地域色」「大学ラグビー改革」「選手登録の特別枠制度」。以上、これまで4点の課題を挙げてみた。そして、最後の5つ目は「日本人指導者の質の向上」だ。

 日本人初のスーパーラグビープレーヤーとなったSH(スクラムハーフ)田中史朗は、ことあるごとに日本人指導者のコーチングの質や、レフリングの質の向上を訴えている。事実、エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)はタックル練習を、本当の基礎の基礎から行なっていた。「日本代表は育成機関ではないが、そうせざるを得なかった」とジョーンズHCは当時について語っており、ジェイミー・ジャパンで共同キャプテンを務めるCTB(センター)立川理道も、「エディー・ジャパンになって初めてタックルを習った」と言っていたほどだ。

 日本伝統の「低いタックル=チョップタックル」は、あくまでもスキルのひとつ。ニュージーランドなどの海外ではケガの可能性が高いため、「ひざ下にタックルしろ!」とは絶対に指導しない。サントリーに在籍している世界的トップ選手のジョージ・スミスも「一度もそう教わったことはない」と断言し、12月にニュージーランド代表が来日して子どもたちにクリニックを行なったときも「腰から上にタックルして!」と指導していた。

 ラグビーで重篤なケガの約8割はタックルなどの接点、そしてスクラムで起きるという。「低いタックル」といっても、決して頭を下げるのではない。指導として正しいのは、大きなケガを招かないためにも、タックルは直前にひざを下げ、低く、強い体勢になってから行なうことを徹底することだろう。タックルは他にも、抱え込む「チョークタックル」、上半身を抱え込んで引き倒す「スマザータックル」などがある。どんな場面でも、ただ「低いタックルをしろ!」ではケガを増加させ、選手の判断力も奪うことにつながる。

 2019年の自国開催まで、もう待ったなしの状況だ。もちろん、2019年以降もラグビーは続いていく。だからこそ、このW杯の準備というチャンスを契機に、理念とスピード感のある変革に期待したい。

斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji