睡眠不足状態が続くと腸内でも変化が……(shutterstock.com)

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1979年3月の「スリーマイル島」原発事故、1986年1月のスペースシャトル「チャレンジャー号」爆発事故、そして2005年4月の「JR福知山線」脱線事故――。

 この3件の大きな事故原因に、関係者の「睡眠不足」が大きく影響していたことを御存知だろうか?

 現代人の睡眠不足の傾向は侮れない。その原因が遊び過ぎであれ、仕事であれ、睡眠不足は、腰痛や肩凝り、めまいや吐き気、肌荒れや慢性的な便秘、瞬発力や持久力の低下など、さまざまな症状として現われる。

深夜の空腹はホルモンバランスの崩れ?

 ところで、夜中まで起きていると無性に空腹感を覚えることはないだろうか? 冷蔵庫の中身をのぞき込んだり、コンビニまでひとっ走りするのも、徹夜時のあるある傾向だ。

 あれも、通常はバランスよく分泌されているグレリン(空腹ホルモン)とレプチン(満腹ホルモン)の関係が崩れ、前者が15%前後勝ってしまうために起こる睡眠不足時特有のものらしい。

 では、いったい睡眠不足状態が続くと、ヒトの腸内ではどのような変化が起きているのか? 肉眼ではなかなか視認できない部位の内部影響を研究し、寝不足との関連知見を一歩前に進めた報告が『Molecular Metabolism』12月号に掲載された。

 ウプサラ大学(スウェーデン)のJonathan Cedernaes氏らが研究協力の対象に選出したのは、いたって平均的な体重の持ち主にして健康的な9人の男性陣だった。被験者たちは、一晩4時間のみ×2日間連続の制限体験を実施。睡眠不足が腸内細菌に及ぼす「種類の数的な影響力」を解析した。

 人間の腸の内面を広げればテニスコート1面分にも相当する。そんな広大な土地(?)に「お花畑」よろしく約3万種類、数にして1000兆個、重さにして1.5〜2kgの細菌類が生息している。近年よく耳にする「腸内フローラ」の語源も、咲き競うような事情から読み取れるのだ。

 では、いずれも4時間睡眠×2日間を体験してもらった9人の健康男性陣からは、どのような結果が得られたのか?

 Cedernaes氏らの解析によれば、腸内細菌の「多様性(=増殖)」に関しては特別の変化が見られなかったものの、「既存の細菌群におけるバランスの変化」が認められ、明らかに睡眠不足の影響が読み取れた。

 さらに9人の寝不足男性陣に共通した傾向として、血糖値の調節を補助するホルモン(インスリン)効果への感受性低下が見られ、数値的には20%減だった。
睡眠不足でヒトの腸内細菌のバランスが変化

 睡眠不足によってヒトの既存腸内細菌のバランスは変化する――。この研究成果に関して、Cedernaes氏はこんな見解を述べている。

 「今回、われわれが突きつめた腸内変化は、他の先行研究で正常体重の層と肥満層の人々を比較した際に認められた幾つかの相違事項と一致していた」

 ただし、上記のインスリン感受性低下という現象は、睡眠不足後の腸内フローラ(腸内細菌叢)の変化とは関連していなかったと研究陣は総括している。つまり、一晩ないし数晩の寝不足状態でインスリン感受性が低減するのは、「腸内細菌の変化」ではない可能性が高いという結論だ。

徹夜作業に空腹を感じたら、いっそ寝てしまおう!

 それでもヒトは、腸内細菌間のバランスを崩すと脳ばかりか、いっけん腸とは関わりが薄そうな心臓や関節など、カラダのあらゆる部位の病気に繋がる可能性を秘めている。

 腸内細菌の主な働きとしては、”存饗里凌入を防御・排除し、⊃多のビタミン類を生成し、食物繊維を消化しては短鎖脂肪酸を産んで、ぅ鼻璽僖潺鵑筌札蹈肇縫鵑鮃臉し、ァ閉嫁緩貂挧Δ閥Δ法北髪嵶呂量7割を作り出してもいる。

 つまり、腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを変化させることによってヒトの健康改善に繋がる、という見立ては今日、斯界で支持を得ている知見だ。Cedernaes氏らも今後、睡眠不足影響下での感受性変化を再評価し、脳機能と代謝が健康に及ぼす関連について、さらなる研究が必要だと述べている。

 睡魔と空腹感に襲われながら、腸内フローラまで乱してしまうなら、いっそ十分な睡眠を取ってから所用を再開してみてはいかがだろうか。
(文=編集部)