大統領選翌日のオバマ大統領最後のインタヴュー:トランプの勝利、これからの自分

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大統領選の翌日に行われたローリングストーン誌創刊者兼編集長のヤン・S・ウェナーによるインタヴューで、米国最高司令官であるバラク・オバマは、予想外の結果となった選挙を振り返り、大統領退任後の展望を語った。

ホワイトハウスでのオバマ大統領との最後のインタヴューは、大統領選の翌日にスケジュールされていた。これまでの8年間で成し遂げた重要な成果やヒラリー次期大統領へ贈る言葉などを、ローリングストーン誌の読者向けに語ってもらう予定だった。本誌との4回目のインタヴューは、10回目となる表紙を飾るオバマ大統領の花道を飾るインタヴューとなるはずだった。信じられない結果が出た朝、ワシントンDCへ飛ぶ前にホワイトハウスへ電話した。オバマ大統領の政治生活の中でも最悪な日になるはずで、全く予期できず、怒りのぶつけようもない受け入れがたい現実に向き合わねばならない日だった。

所が大統領のオフィスからは、「大統領は予定通りインタヴューを受ける意向だ」との返答を受けた。どんよりした空模様の日で、私が到着した時にホワイトハウスは閑散としていた。長く憂鬱な一夜が明けた後のホワイトハウスには、わずかなスタッフが残るのみだった。まるで葬儀に参列しているような気分だった。

前回のインタヴューは2012年で、のんびりとした午後のことだった。1時間半の約束を大幅に超えた大統領執務室でのインタヴューを終えるとすぐ、ヒラリー・クリントン国務長官の元へと急いだ。彼女は大統領補佐官のデスクの横に座り、私を待っていた。今回はホワイトハウスに彼女の姿はなかった。


Ruven Afanador/CPi Syndication

ローリングストーン誌はオバマ大統領と長い間良い関係を保ってきた。最初のインタヴューは、2008年の大統領選が始まった頃に行われた。その時オバマ大統領は私のオフィスを訪れ、ディナーを共にした。それ以降、本誌は彼が上り調子の時も下り調子の時もいつでも支援し続けてきた。そのためオバマ大統領は、ローリングストーン誌の読者もオバマ支援者だと思ってくれていた。1年前、我々は大統領のアラスカ行きに同行し、氷河の素晴らしい景色を一緒に堪能した。高いプライドを持ち、オバマが歴史の波を乗り越えていく姿を我々は見守ってきた。

インタヴューでは、時間の許す限りあらゆることを伺おうと考えていた:何百万人という国民の家や貯蓄、仕事をも奪ったウォール街の数々の詐欺事件について、なぜ誰も責任を問われないのか?アメリカをイラク戦争という誤った方向へ導いた人々がなぜ罪を逃れているのか?ドナルド・トランプが台頭した場合、誰かが責任を取るのか?何百万エーカーという国土の保護を達成した充実感はあるか?気候変動対策を最終的に政策の主要課題のひとつとして掲げるためにとった施策は? 

「悲しいかな」

オバマ大統領はオフィスの前で私を出迎え、室内へ招き入れてくれた。大統領は疲れている様子だった。インタヴュー前のいつもの雑談もなく、彼はジャケットを脱いだ。いつもの椅子に腰掛け、「さあ、始めよう」と、彼はおだやかに、慎重にゆっくりと話し始めた。ひとつひとつを客観的に分析しながら冷静な口調だった。現職の大統領として口にできない事柄も多かったはずだが、言葉を選びながら、厳しい歴史的な一日について振り返った。

ーまず、昨夜の大統領選の結果とドナルド・トランプについての所感からお伺いしなければなりません。目の前で起きていることは現実のものとして受け止められたでしょうか?それとも我々のように大きなショックを受けていたでしょうか?今のお気持ちをお聞かせください。

そうだね、私もがっかりしたよ。ヒラリー・クリントンはほんとうに素晴らしい大統領になると思っていたから。選挙戦中にも述べた通り、我々が一緒にやってきた仕事はまだ一部しか完結していない。より高い成果を上げるためには継続が必要だ。

ー今回の大統領選の結果は予想されていましたか? 

2008年のニューハンプシャー州を振り返ってみよう。その直前に私はアイオワで勝利し、あわただしくニューハンプシャーへ乗り込んだ。集会には多くの支援者が集まり、事前の予想では私の方が10ポイント上回っていた。そして7時半頃、私は勝利のスピーチのために身支度を始めた。その時、デイヴィッド・プラウ、デイヴィッド・アレックスロッド、ロバート・ギブスが気まずい表情を浮かべながら入ってきて言った。「バラク、とてもおかしなニュースを伝えなければならない。どうやら我々はここでは勝たないようだ」。

これが民主主義だ。これが選挙というものだ。投票に意味がないというのではない。しかし人間の心は移り気である、ということだ。だから、ドナルド・トランプの勝利の可能性は常に20%ぐらいはあると思っていた。そんなに大きな数字ではないと思えるが、5分の1の可能性からの勝利は珍しいことではない。奇跡でもなんでもない。

ーそれでも悔しくて憤りを感じ、うろたえませんでしたか? 

いいや、そんなことはない。我を忘れるようなことはない。なぜならまず、私はこの8年の成果を誇張したりしない。そんなことをしなくとも、私が次期アメリカ合衆国大統領へ政権を引き継ぐ時、私は「今のアメリカはより良い状態になっている」と堂々と言えるからだ。経済はより強くなり、政府もよく機能している。そして世界の中のアメリカの存在感も増した。我々の成し遂げたことに誇りを持っている。国民はとても満足してくれたと思う。

率直に言うと、選挙の影響はあると思う。次期最高裁判事は、私の政策方針とは異なる考えを持つ人が就任するだろう。国内外で我々が推進してきた気候変動に関する努力も危うくなるだろう。2000万の国民に医療保険を適用した医療保険制度改革は方向転換され、その犠牲となる人々も出てくるだろう。とはいえ共和党も、数千万もの国民から医療保険を取り上げるような政策は賢い選択ではないと結論づけようとしているようだ。しかし私はうろたえてはいないが、私の政権や選挙戦で活躍してくれた有能な若者たちのことを思うと、とても残念に感じる。今回の大統領選に投票した若い世代の有権者のみのデータを集計比較すると、ヒラリーは500名の選挙人を獲得できた計算になる。オープンに政治参加し、公正さを求め、環境問題にも取り組む若い世代を育てることができた、と自負している。そんな若者世代がこれからだんだんと増え続け、アメリカは徐々により良い国となっていくだろう。


大統領選の翌日、大統領執務室を訪れてインタヴューするローリングストーン誌創刊者兼編集長のヤン・S・ウェナー。オバマ大統領は、「大統領というのは個別の案件を処理しながらも、過去から引き継いだ大切なものを未来へ伝えていくという役割を、何を置いても優先しなければならない」とトランプへ向けたメッセージを語った。(Pete Souza/The White House)

ーアメリカは依然として進歩し続けていると思いますか? 

何事も決めつけることはできないが、公明正大で平等でオープンなアメリカを強く求める国民が大多数を占め、さらに増え続けているのは事実だ。

今分析しているひとつの課題がある。私は多くの労働者階級の白人票を獲得したが、中間選挙では民主党はそれらの票を維持できなかった。さらに今回の大統領選ではそれらの票の多くがトランプに流れてしまった。それらの票を獲得できなかった原因の一端は我々の力不足であり、我々のミスだろう。また、全米各地のバーやレストランで流れるFoxニュースの影響もあるかもしれないし、さらに、積極的に議論を広めるような民主党員による草の根レベルの運動が足りなかったせいかもしれない。民主党の責任を問う批評は当たっている。我々は外交政策や国家政策に重点を起きすぎたあまり、より生活に密着した問題の議論が疎かになってしまった。住民に寄り添えば我々は強い。私がアイオワを制したのがその良い例だ。

ー白人の労働者階級は大きな経済的問題を抱えているにもかかわらず、民主党はなぜ彼らの大規模な票を逃したのでしょうか?工業中心の州で彼らは職を失っています。

それは簡単には説明がつかない。ただの経済問題ではないからだ。文化的な問題でもある。さらに情報発信の問題でもある。確かに、オートメーションの普及により多くの製造業が廃業したり転換を余儀なくされた。しかし私の任期中は、かつてないほどのレベルで製造業の雇用を増やした。ミシガン州では・・

ー私の言いたいのは・・

ちょっと待って、最後まで言わせて。ミシガン州で2008年だけでなく2012年にも大差で勝利できたのは、我々が製造業の雇用問題を重視して取り上げたからだ。その結果、それまで潰れるしかなかった自動車工場の勤務シフトも2倍に増えた。最低賃金法、家族休暇制度、コミュニティ・カレッジへの支援、さらには患者保護並びに医療費負担適正化法(オバマケア)などは、働く世代の家族や白人、黒人、ヒスパニックなどすべての国民のための大きな支援策だ。特定のコミュニティの人々が政策の外へ追いやられるのを見過ごさないように我々は努力してきたし、「それができていない」という我々への批判は間違っている。実際に、「労働者階級の家族がないがしろにされている」とか「民主党は労働者階級の白人家族を軽視している」などと書かれることもある。しかし真実は、我々はいろいろな公約を出しているが、それが対象となる人々のコミュニティまで聞こえていない、ということである。その上、「オバマやヒラリーは自分たちの銃を取り上げ、自分たちを虐げようとしている」などと歪曲されて伝わっている。

今我々が問題にしているのは、ソーシャルメディアやインターネットを通じて人々が、ねじ曲がった情報をゥ縫紂璽骨イ箸靴銅け取っているということだ。ちょうど政策担当補佐官のデイヴィッド・サイマズとも話した所だが、彼は彼のFacebookページや高校の同級生たちの間で「オバマはッ蘋燭寮世イ鯒砲辰拭廚覆匹箸い酷い書き込みが拡散しているのを見つけた。

1組織としての民主党は別として、我々を含め、よりオープンなアメリカを求める進歩主義者にとって重要なのは、高級技術官僚の発言を拠り所にし、それをニューヨーク・タイムズ紙の編集委員と共有したりすることではない。国民により近い場所で国の隅々にまで政策を展開する方法を考えることである。それは国民に「自分たちの生活がより豊かになる」と強く確信させ、国民の支持を得ることにつながる。我々の声が届かず顔も見えないほど国民から遠くにいると、我々は負け続けるだろう。そうなると、私がいくら「共和党の公約は国民のためにならない」と言っても無駄だ。

ー民主党の将来についてどうお考えですか?(大統領選の)1ヶ月前、あなたはひとつの政党で三権を掌握し、政権を維持するための投票抑圧や選挙区再編など、何でもできる状況にありました。誰もが「共和党は断末魔の苦しみにあえいでいる」と確信していました。今後、民主党はどうなるのでしょう?とても大きな右方転換になりそうですが。

そうだな、でも大きな右方転換ではない。ちょっと、これを・・

ーもしも三権をコントロールし、最高裁判所も味方につけたら・・

トランプ支持者も含むアメリカ人全体を見た時、最低賃金は高い方を良しとし、大麻の合法化を支持する国民も多いだろう。さらに、LGBTコミュニティを正当に扱うべき、と考える人々は驚くほど急激に増えているように思う。このような考えを持つ人々は、ウォールストリートも体制も信用していない。トランプやバーニー(サンダース)は、現体制に反抗した。皮肉なことに有権者は、「トランプはバーニーのように賢い外野でいるよりも、体制側に入るべきだ」と判断した。だから今は、大きく右へ方向転換する時期ではないように思う。

共和党が州と上下院議会選挙で優位を保つことは、民主党にとって確かに厳しい状況ではある。特に中西部の農業地区や白人が多数を占める地域で、民主党や進歩主義者の主張に対する彼らの認識を変えられない限りは厳しい。歴史的な理由から、南部ではさらに厳しい状況になるだろう。

大統領職に関しては、民主党は実際に依然として有利な状況にあり、共和党に対して優勢を保ち続けるだろう。通常は8年間も同じ政党による政権下にいると国民も疲弊してくるもので、優位な状況を保つのは難しいことである。このような形での政権移譲は、近年では、或いはこの4、50年で初めてのことではないか。投票抑圧法は健全な状況とは思わないし、真剣に取り組むべきものでもないと思う。先に挙げた地域でも民主党にも十分勝ち目はあるが、もっと自己評価を充実させる必要がある。例えば、ノースカロライナ州でかつて私はわずか1ポイント差で勝利し、また1ポイント差で敗れたこともある。今回の選挙では、トランプがノースカロライナを取ったが、州知事は民主党が勝利した。その理由のひとつは、ノースカロライナ州の前知事による極右の政策に疲れたのと、LGBTコミュニティに対する偏った法規制に対し「やりすぎ」との声も上がっていたからだ。そのような環境下にあったものの、ロイ・クーパー次期ノースカロライナ州知事は住民のコミュニティと向き合い、彼らのために尽くしてきた。これも彼が当選したひとつの大きな理由である。

では、民主党や進歩主義者は問題に対するアプローチ方法を考え直すべきかというと、その通り。見直す必要がある。私がここでバーニー・サンダースと会談した際、「民主党全国委員会をもっと活性化させるべき」という点で両者の意見が一致した。全国委員会はワシントン(政権)の1組織ではなく、もっと全国的な草の根レベルの組織として、働く人々の共通利害を扱う組織であるべきだ。

ーどのようにそれを推進していきますか? 

そうだな。まず政権を引き継いだらしばらく休ませてもらって、妻を慰労したい。そして大統領職を退いた最初の1年間は、本の執筆をしながら私の大統領センターを設立しようと考えている。ここでは次世代のリーダーの育成に力を入れたい。ストーリー立て、メッセージの発信、テクノロジーやデジタルメディアの利用などの方法論を見直すことで、より説得力を持って全国的に我々の政策を広めることができるのではないだろうか。そうすれば、気候変動問題や経済的不平等問題に取り組むことの重要性を、サンフランシスコやマンハッタンだけでなく全米に伝えることができる。私は今後も積極的に活動していくつもりだ。ミシェルも引き続きよりアクティブに活動する。「草の根レベルで人々と力を合わせれば、必ず変化(change)は起きる」という信念を持っていたから、我々はここに来ることができた。政府機関が頼りにならないと思ったら、国民はあらゆる方法で揺さぶることができる。

ー気候変動問題について、トランプは「パリ協定を離脱する」と宣言しています。そんなことは可能だと思いますか? 

歴史的に見て、国際的な協定は次の政権にも引き継がれる。そもそもこれはブッシュ大統領時代に合意したものをアメリカ大統領として私が引き継いだもので、継続する意義を政策に反映させることが私の重要な任務だった。共和党が気候変動問題に対して強硬姿勢を取っているのは事実である。彼らは、我々がここまで進めてきたいくつかの取り組みをひっくり返したがるかもしれない。

その中でも良い兆しは、我々が率先して進めてきた多くの事項が推進されていることである。また温室効果ガスの削減目標も、ある経済的見通しでは達成可能とされている。私は8年間の在職期間中、クリーンエネルギーの生産量を倍増し、自動車から排出される有害ガスを半減した。投資とビジネス、公共事業と消費者といったすべてが関わっているため、これらの規制はそう簡単に止めてしまえるものではない。賢いエネルギー政策は、地球にとっても国民の財布にとっても優しい、というのは当たり前のことである。「新たに創出したソーラー産業の何千万という雇用を無にしてしまうのか?」「省エネを求める消費者の意に反して、自動車業界のビッグスリーを再編し、ガソリンを大量に消費する車を作らせ続けるつもりか?」と、ドナルド・トランプや共和党議員に問いたい。発電所に関しては、石炭が衰退したのは私の政策の規制によるものではない。安価な天然ガスの方が、新たな炭鉱を掘るよりも経済的だったからだ。


「共和党が気候変動問題に対して強硬姿勢を取っているのは事実だ」と語るオバマ大統領(Pete Souza/The White House)

ーおっしゃることはよく理解できます。ただ、ほとんどの科学者が「我々はターニングポイントを越えた」と言い、コーク兄弟も議会の対抗勢力を支援しました。これでは変革とはいえません。彼らのイデオロギーの方が的を射ているように思えますし、票につながった資金提供の方がこの問題に対して向き合っているように見えます。

いいか、よく聴いてくれ。「すべてが悪い方向へ行っている」と言うこともできるし、どんな行動を起こすのも自由だ。そういうことさ。選挙があってトランプが勝ち、これから共和党が議会を仕切ることになる。気候変動問題に関心を寄せている君や私のような者にとっては、次の選挙の機会までにこの問題に関する対策をどう進めるべきか考え準備しておくことができるかどうかが鍵になる。さらに、その時までにできるだけ多くの賛同者を集め、家族のため、地球環境のため、我々の安全安心のため、法秩序のため、市民や社会の権利のために我々が進んできた道へ戻れるか、ということだ。

ともすると政治の世界しか知らないホワイトハウスの若いスタッフたちには、「歴史というのは一本道ではない」とよく言いきかせてきた。歴史はあっちへ行ったりこっちへ来たり、2歩進んで1歩下がる。気候変動問題に対する緊急性を認識しなければならない、という点では君の言うことは正しい。しかし、我々の思う対策を推進するためにはアメリカの世論を我々の味方につけなければならない、と私は常々言ってきた。気候変動問題の緊急性を国民に認識させなければいけない。我々の対策を政策に組み込むためにはまず、我々の主張を理解してもらい、十分な票を集める必要がある。8年前と比較して、我々はかなり進んだと思うが、理想にはまだ遠い。パリ協定では今から10年後の目標を設定した。アメリカはその目標を十分達成できると信じている。今後トランプ政権では、これまでと違った政策がとられるため、表立った目標達成はできないかもしれない。しかしそれでも、必要最低限の目標は達成できると思う。

胎児のようにじっとしていても何も進まない。積極的に動くことで成果が得られる。チャレンジし続けていれば、徐々に好転していく。

ー移民制度改革についてお聞かせください。今後どのようになっていくのでしょうか? 

今回の大統領選の結果とは関係なく、ラテンアメリカ系やアジア系の多くの有権者を遠ざけるのは得策でないと考える共和党員もいる。そして理に適った方法で解決したいという利己心が生まれる。民主党や移民の権利を守る活動家にとって、「大多数のアメリカ人はス餠は重要だイ版Ъ韻靴討い襦廚箸いΔ海箸鰺解しておく必要がある。前にも述べた通り、我々の移民のルーツを尊重するための法秩序と価値観が必要である。法と価値観は両立させなければならないが、かつては移民に対して寛容な時代もあり、秩序的かつ合法に処理する方法に対して適切に取り組んでこなかった。「移民は合法で秩序的なものである」と国民に正しく認識させるのを疎かにしがちである。つまり、将来的には包括的な移民制度改革ができる可能性がある、ということだ。

この2年或いは4年、さらにその先の4年の間に改革が進むとは思えない。しかし我々は、法に沿った移民制度に関して我々が進めてきたことをベースに、賢い改革を行うことができる。国境に関してメキシコと協力することで、主に中央アメリカから我が国へ押し寄せる移民を人道的に扱うことができる。そして、ホンデュラス、エルサルバドル、グアテマラへの賢い投資を続けることが各国の国民に幸せをもたらす、ということをトランプ次期大統領とも共有したい。

ー今や西海岸では大麻を合法的に入手できるようになりました。しかしなぜ今なおドラッグ戦争は終わらないのでしょうか? 大きな失策に思えます。なぜ今もこの問題が解決せず、大麻をスケジュールI薬物に指定したままなのでしょうか? 

薬物乱用を抑制しなければならない、という私の信念は明らかだ。それに大麻の合法化がこの問題の特効薬となるとは考えていない。この問題は、タバコやアルコール同様、公衆衛生の課題として捉えるのがより賢いやり方だと考えている。薬物の分類方法の変更は通常、大統領命令で行うものではなく、議会や麻薬取締局(DEA)が行う。知っての通り、伝統的に薬物取締法を執行するDEAは、規制緩和に対して常に柔軟という訳ではない。

ー(笑)大統領自身はどうですか? 流行の最先端を行き、柔軟な姿勢を取りますか? 

今の私はレームダック状態だ。間もなく一市民として、アメリカはどうあるべきか、という内容の著書を執筆しようと考えている。カリフォルニア州をはじめ住民投票で大麻が合法化されていき、ある州では合法で、また別の州では20年の実刑という状況の中、司法省やDEAが根拠とする法律にも矛盾が出てくる。これは私がビル・マーの番組に出演して同じ質問を受けた時にも同様の回答をした。同性婚の問題と同様、これも議論が進んでいる。アメリカ全土が民主主義の実験場となる革新的なアプローチといえる。今は全米の約5分の1で合法化されている。

ーあなたは同性婚の合法化を宣言し、推し進めました。

いいや。そういうことではない。思い出して欲しいが、最初はとてもシステマチックに始まった。私はまず同性パートナーによる病院での面会に関する法律を改正した。その後私は、dont ask, dont tell(ゲイであるかどうかの確認行為や、ゲイであることを公表することを禁じた規制)イ療映僂鮃駛描躱覆妨‘い気察△修慮綸合参謀本部も了承し、最終的に撤廃した。そして、カリフォルニア州でProposition 8(同性婚を認めない法律)に反対する裁判が起こされた。その後多くの準備がなされ、今に至る。

ーでは今は準備段階ですか? 

今回のような結果となった選挙後、我々のような進歩主義者は「一挙両得はあり得ない」ことを反省しなければならない。「我々の対抗勢力に投票した人々と理解し合おう」とか「進歩主義者や海岸沿いの都会に住む人々がイ垢阿砲笋襪戮イ塙佑┐討い襪海箸冒汗採呂鮹蹐込もう」とはもはや言えない。アメリカのような多種多様の大国では、エンドゾーンへの一か八かのロングパスではなく、全体的に地道に推し進めることが求められるのだ。

ーでは、我々はどのようにこの国のほころびを縫い合わせればよいと思いますか? 

私が最も重要視しているのは、共通的な事実の積み上げだ。抽象的かもしれないが、つまり我々の生活の中の共通のストーリーをいかにして作るか、ということだ。この分裂状態の中で今最も大きなチャレンジは、国民がそれぞれ全く異なる発信源から情報を得ている、ということで、状況は日に日に悪化している。あちらこちらからかいつまんで要約されたニュース記事からFacebookページまで、ノーベル賞受賞歴のある科学者の語る気候変動問題と、地下室でパンツ一丁になっている若者の投稿とが同じレベルで語られ、賞賛されている。或いはコーク兄弟の発言も然り。人々はお互いに話し合うことを止めてしまった。それぞれが別の星に生きているようだ。インターネット時代の今、出版・報道の自由を尊重し、できれば我々はネット上での検閲はしたくない。それは難しい問題だ。ネット上のメディアの責任をよく認知し、ネットを介したより良い対話を作れるような人間が必要だ。子どものうちから、何が真実で何が真実でないかを見分ける社会教育を行う必要がある。より注目を集め、より興味を惹き、よりエンターテイメント性を高め、より説得力のある方法を見出す進歩主義的活動に興味を持ってくれる人々が必要だ。

ーFacebookの出現によって崩壊したニュース・ビジネスや新聞業界は、出版・報道の自由を維持していくためにも国からの資金的支援が必要ではないでしょうか? 

テクノロジーの進歩がものすごく速く、伝統的なメディアの衰退がそれほど問題とならないこと自体が問題だ。それでもニューヨーク・タイムズ紙は業績好調で、ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)も順調だ。NPRは非営利組織だが、聴取者数を伸ばしている。問題はセグメンテーションにある。国の分裂を問題にしてきたが、良いジャーナリズムは今日も生き残っている。ローリングストーン誌も素晴らしい仕事を続けている。問題は、何百何千という情報源からさまざまな世界観を見聞きする現代の状況が、その分裂をさらに加速させていることだ。世間の注目を浴びたいがために、物ごとを大げさに言ってみせたり、議論を煽ったり、誹謗中傷や嘘の話を拡散したりと、人々を駆り立てている。仮にこの状況を抑えることができたとしても、伝統的なメディアへの補助金や支援は容易でない。現実世界でやってきたことをネット上のバーチャルな世界にも適用しようとするのは難しい。何か新たなモデルを見出さねばならない。

ーこの8年の中で個人的に思い出深い出来事は何でしょう? 

ビン・ラディン殺害作戦の成功後、ホワイトハウス周辺に集まった人々からの「USA、USA」コールを聞きながら柱廊を歩いたシーンは有名だ。オバマケアが議会を通過し、若きスタッフとトルーマン・バルコニーに立った時のことも思い出に残っている。私はよくトリーティールームに座って、人々が送ってくれた手紙を読んだ。必要なサポートを受けられていない退役軍人からの訴えの声や、DREAM法による支援を受けた不法移民の子どもが自分の通った学校で教師をしているという話など、とても感動した。


ホワイトハウスに飾られたジョン・F・ケネディの肖像画を見上げるオバマ。「ホワイトハウスへ入った瞬間に自分自身が、この国の独立時の偉大な先人たちから引き継がれてきた伝統や歴史の一部となる。民主政治におけるこの素晴らしい経験は大切にしなければいけない」(Pete Souza/The White House)

まだ片付けねばならない仕事も残っているのでノスタルジーに浸っている暇はないのだが、最も心残りで感傷的にさせられるのは、私をここで支えてくれたチームのことだ。多くの若い世代のスタッフが素晴らしい働きをしてくれた。例えばブライアン・ディーズ。ホワイトハウス外の人はブライアンのことをよく知らないかもしれない。知っていたとしても「彼は確か35歳か37歳の人だったかな」といった程度だと思う。彼は我々の政策担当の副参謀だ。彼が、温室効果ガス削減を目指すパリ協定や航空機業界の協定など、地球を救う取り組みを担当した。ちょうど彼には2人の赤ん坊がいたが、その時期は忙しくて良きパパではいられなかっただろう。政権内には彼のような優秀なスタッフが揃っている。ここでの経験で忘れられないのは、まさに彼らのことだと思う。彼らの働きぶりや、問題や課題に彼らが取り組んでいる姿は思い出に残るだろう。

ーミシェルは将来大統領選に立候補するでしょうか? 

ミシェルは決して立候補しない。彼女は才能あふれた人で、多くの国民から賞賛を受けている。ただ、政治の世界に入るには分別がありすぎる。まあ半分冗談だが。

ートランプへのアドバイスは何かありますか? 

明日(本インタヴューの翌日)、彼と会うことになっているのだが、まず彼に言いたいのは、選挙活動中はどうあれ、「ホワイトハウスへ入った瞬間に自分自身が、この国の独立時の偉大な先人たちから引き継がれてきた伝統や歴史の一部となる。民主政治におけるこの素晴らしい経験は大切にしなければいけない」ということだ。大統領というのは個別の案件を処理しながらも、過去から引き継いだ大切なものを未来へ伝えていくという役割を、何を置いても優先しなければならない。自分の権力、地位、海兵隊楽団のような役得などは二の次だ。少なくとも私は、本当に良いスタッフに恵まれた。影響力のある人々に囲まれ、日々とても勉強になった。取り組むべき問題は遊びではない。たとえそれが得策でなかったり、大衆向けでなかったとしても、全力を尽くして国民のために最適な決定を下さなければならない。そしてここを離れる時になって初めて、「本当に大きな名誉と責任を与えられていた」という満足感を得られるのだ。

ー歴史の重みが彼を少しは落ち着かせるでしょうか? 

このデスクの向こう側に座ると神妙な気持ちになる。どの大統領も感じていたように、彼もその重みを感じるだろう。しかし、大統領にとって最も大きな重みとなるのは、アメリカ国民である。積極的に政治参加する見識の広い一般市民だ。これこそ私がこれから一生かけて自分なりにやっていこうと思っていることだ。