溝口健二監督と増村保造監督について語った深田晃司監督と山戸結希監督

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溝口健二監督没後60年、増村保造監督没後30年記念企画の特集上映「溝口健二&増村保造映画祭 変貌する女たち」が角川シネマ新宿で開催中だ。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査委員賞に輝いた『淵に立つ』(公開中)の深田晃司監督と、『溺れるナイフ』が大ヒット公開中の山戸結希監督が12月24日に開催されたトークショーに登壇し、二台巨匠の魅力を語り合った。

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山戸監督は『溺れるナイフ』の撮影前に、増村監督の『濡れた二人』(68)を観たと言う。「(『溺れるナイフ』も)山と海に挟まれて男女2人が惹かれていくという話だったので、ビビッドな体験でした。また、昨日行われた溝口監督の『赤線地帯』(56)のトークショーで、若尾文子さんが『毎日死にたいと思っていたからこそ、溝口監督とご一緒できて良かった』と言われていたのも、気品に溢れていて格好良かったです』。

深田監督は映画祭の副題にもなっている「変貌する女たち」について「映画の魅力や面白さは常に変化すること、メタフォルテーゼしていくこと」だと言った上で、溝口監督と増村監督を賞賛する。「溝口さんの『近松物語』(54)の香川京子さんの変貌の仕方が面白い。悲しいから美しい。現実をちゃんと直視している感じがして、その変化が美しい」。

また、深田監督は『赤線地帯』も再度観直して感服したようだ。「自分の息子に絶縁される。突き放し方や心を壊してしまった人を見る痛ましさが胸に来る。最近日本で描かれる家族観はスイートなところが多いけど、それは危険だなと。『赤線地帯』でドキッとするのが、専業主婦がタダで家事をさせられるのなら娼婦の方がいいと思って戻ってくるところ。封建的な家族制度を語っていて、下手な日本映画よりも現代的」。

山戸もこの価値観には大いにうなずき、人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を引合いに出し「これ、『逃げ恥』だなと。みくりちゃんが怒っているのと同じだなと」と苦笑い。また、本作のカメラワークについても感動したそうで「空間把握の仕方が今の日本映画と違う。(映画館という空間で)お客さんが視覚的にどう感じるかということの方が大事なんだなと」と興奮しながら語った。

最後に深田監督は「溝口健二&増村保造映画祭」の魅力をアピール。深田監督は「映画の製作年度は必ずしも現代性とは関係ない。同世代の映画が新しい映画だと考えているのは罠です」と力強く言い切る。山戸監督は「増村監督の『くちづけ』(57)とかは、いま観ても新鮮です。こんな戦慄はなかったです。すごい風を感じました」と若い人に向けてもプッシュした。

「溝口健二&増村保造映画祭 変貌する女たち」では、溝口健二と増村保造という師弟関係にあった二大巨匠監督の作品42本を上映中。女性が主人公の作品に特化した上映ラインナップとなっている。【取材・文/山崎伸子】