連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第12週「やさしい贈り物」第71回 12月23日(金)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:鈴木航


「生きていれば変わる。変わることが生きるいう事なんやて おやじの喜ぶ顔を見てそう思ったわ」/(潔)

71話はこんな話


近江に来た潔(高良健吾)は、亡くなった父・正蔵(名倉潤)の夢を見て、これまでの悩みを解消する。
紀夫(永山絢斗)も思うところあって近江へやって来る。

朝ドラ名物死者との邂逅


朝ドラではときおり主人公が死者と邂逅する。
直近だと「とと姉ちゃん」では亡くなった父に出会い、「あさが来た」では亡くなった夫と亡くなった義父とふたりに出会っている。
「べっぴんさん」は亡くなったお母さん(菅野美穂)が語りをやっているので、死者の視線にずーっとさらされているわけだが、71話では潔が亡くなった父・正蔵と出会う。
で、こんなときは、菅野美穂の語りがいっさいない。

正蔵は五十八から坂東営業所の社長職を引き継いで頑張っていたものの戦争中に亡くなってしまった。その後を潔が引き継いだことで、ゆり(蓮佛美沙子)との仲がこじれてしまっている。
正蔵は早くに死んだことを「無念やった」と言いながらも、「命というのは継がれていくもの」と達観し、孫が生まれると知って、ただ「フッフッフッ・・・」「ハッハッハッ・・・」と笑うだけ。

またまた「べっぴんさん」の凄いとこ、出た。

具体的な思いを語らないのだ。たいてい「うれしいなあ」とか「わしも孫を抱きたかったなあ」とか何かしら語らせてしまうものだけれど、「命というのは継がれていくもの」という台詞で十分、正蔵の気持ちはわかる。
「べっぴんさん」は台詞ではなくて、笑顔で、幸せを伝えることを徹底している。

正蔵と潔のシーンでまたいいのが、まず真っ白な満月が出て、次にそれが水に映り、さざなみが起こって、月の光を受けたように正蔵が白く光っていること。潔の夢なのか、幽霊が月明かりのもとに現れたのか、いろいろに考えられる演出になっているし、なにかとても厳かな感じがする。クリスマスも近いし、とても良い。

父から坂東家の「ば」の字も出なかったことで、潔は父の代わりに坂東営業所を守るという呪縛からようやく解放される。

ところが、紀夫くんが


坂東営業所を辞めると言い出す。
久々近江にやって来た紀夫を、五十八はにこにこ迎えていたが、内心、潔の次は紀夫と、娘の夫たちが・・・どうなってるんだ、と心配になっていたのではないだろうか。

五十八の良いところは、潔が「おやじが出てきました」というと「ああ・・・野上がか。元気にやっとたか」なんて笑うところ。
潔も父がふいに現れても、すごく静か。
亡くなってだいぶ経つけれど、ずっと身近に感じているのだろうなあと思う。
亡くなった人を忘れていないから、はな(菅野美穂)も語りとして生き続けているのだろう。

きょうの紀夫くん


毎回、派手ではないが、ちょっとした動作が印象に残る紀夫。
71話では、キアリスの店の前で一歩、下がって、店を眺める。
最初からじっと立って見ているよりも、このひと、何か思うところがあるんだなと感じさせる。
毎回、永山絢斗が何をやってくれるか、楽しみでならない。
(木俣冬)