世界保健機関(WHO)が発表した2016年版の「世界保健統計」によれば、'15年の日本人の平均寿命は83.7歳(女性=86.8歳、男性=80.5歳)で、世界1位をキープし続けている。理由は乳幼児の死亡率が低いことや、最近では成人病の検査が広まったことなどが挙げられ、WHOは「バランスのとれた伝統の食生活にある」と結論付けている。
 しかし、WHO循環器疾患予防国際研究センター長の家森幸雄氏は、自著『ついに突き止めた究極の長寿食』(洋泉社)の中で、こう述べている。
 《毎日の一食一食が我々の体を作り、いかに食生活が命を支えているかを考えてほしい。外食中心の美食に走り、コンビニ食、市販のおにぎり、ハンバークで毎日、昼食や夜食を済ませる若いサラリーマンや学生、フリーターたちが、現在の平均寿命まで到達するかは難しいと言わざるをえない。医食同源の精神をしっかりと心に刻んでいただきたいと言うのが、私の使命です》

 非業の死を遂げたとされる織田信長が気に入り、舞ったという「幸若舞」の一つの「敦盛」の一節にも「人間50年、下天の内を比ぶれば夢幻のごとくなり」とあるが、戦国時代の寿命は身分の高い人でさえ50歳程度だった。詳しい統計はないものの、貧しい農民たちは明治時代初期まで30代で寿命を終えたと推測されている。それが1950年以降、日本人の寿命は一気に世界一に駆け上がるわけだが、理由は医療技術の向上だけではないはずだ。

 日本には、“医食同源”という言葉がある。つまり、毎日栄養バランスのとれた食事をしていれば、病気の予防、時には治療にもつながり、健康を維持できるという考え方だ。
 女子栄養大学の准教授はこう言う。
 「“医食同源”は中国の“薬食同源思想”が元になっているとされ、1970年代に日本で広まった造語です。すぐ風邪を引いてしまうような人は、食事において好き嫌いが多いと言います。また、特に野菜を摂らない人は、ビタミンやミネラルが不足しており、この二つは、たんぱく質、脂質、糖質の3大栄養素に加えた5大栄養素で、身体の微調整をする役割を果たしている。普段から元気な人は、これらを万遍なく摂って何でもおいしく食べられるので、病気もしにくいのです。1950年代以降は、若いうちからそういったバランスの取れた食生活が自然と身についたのでしょう。ここ数年は“食育”という言葉を耳にしますが、何をどう食べるか、親から子供に伝え、引き継いでいくことが大事です」

 世界に目を向けてみると、かつてはペルーやパキスタン、ブルガリアやジョージア(旧グルジア)などに長寿の郷があったという。コーカサス地方はヨーグルトの生産国として有名で、長寿国が集まる地域だったのだ。
 「ヨーグルトに含まれる乳酸菌は腸内の環境を整え、便秘を防いだり免疫力を高める効果がある。他に、コレステロール値を下げるので、健康長寿につながっていたとされます。長寿とされる地域では、このヨーグルトの他に発酵食品のチーズなどを上手に食べていると言われる。今では日本でも、様々な銘柄のヨーグルトが手に入りますが、注目されているいのはカスピ海ヨーグルト。やや高価ですが、コレステロール値を下げ、がんを防ぐ効果もあると人気です」(栄養士)

 しかし、食生活が西欧化している今、ブルガリアでさえ、ヨーグルト派から外れてバターや白パンなどを多く食べる人が増え、心筋梗塞にかかる率が高まっている。やはり、現代に至り、長寿地域を維持することは難しさが伴うようだ。