暮れの12月に入って「自動運転車」をめぐる状況が大きく動いた。

Googleが自動運転車の自社開発を凍結し、グループ内に「Waymo」という会社を立ち上げ、既存の自動車メーカー向け自律走行ソフトウェアの開発に集中する、さらホンダと共同研究することを発表したのだ。

これまで自動運転車の開発を先陣を切って進めてきたGoogleのこの動きは驚きだ。実際、オースティンやワシントン州で、完全自律走行車の実験を行っており、その実現も遠くないという印象を強く伝えていた。それにもかかわらず、凍結、撤退なのか? とがっかりした人もいるかもしれない。

だが、逆にこれにより、未来よりも近い将来、自動運転車が現実になる、市場に登場することにつながると見る向きも多い。

どういうことだろうか?
まず、自動運転の定義から見ていこう。

◎自動運転の「自動化」のレベル
たとえば、海外では公道を走れる「セグウェイ」は、日本では原則、公道では乗れない。

道路交通法は、「歩行者」「軽車両(自転車、電動自転車など)」「車両(自動車、原動機付自転車など)」に区分し、それらが円滑で安全な交通ができるように細目が定めされ、運用されている。
セグウェイの場合は、エンジン、動力を積んだ車両とされ、自動車、原動機付自転車の満たす保安基準が求められるからだ。

このように、公道を走るものについては、各国で法により規制されている。
自動運転に関しても同じように、歩行者(人)や人が運転する軽車両、車両と同じ道路を走るのであれば、それらと共存して安全に交通できる必要がある。

勝手に「作りました」「売りました」「乗ります」とはいかないのだ。
自動運転車の開発、商品化、普及に当たって次のように「自動化」のレベルが定義されている。

レベル0:ドライバーが常にすべての操作を行う 【運転者あり】
レベル1:加速・操舵・制動のいずれかをシステムが行う【運転者あり】
  ex. 自動ブレーキなどの安全運転支援システム
レベル2:加速・操舵・制動のうち複数の操作をシステムが行う【運転者あり】
  ex. アダプティブクルーズコントロール(ステアリングアシスト付き)
レベル3:加速・操舵・制動をすべてシステムが行い、システムが要請したときにドライバーが対応する【運転者あり】
レベル4:加速・操舵・制動をすべてドライバー以外が行う【運転者なし】


これは日本や米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)の用いる定義である。
これがほかの国では、これよりレベルが細かく区分されたもの、要件が多少異なるものなどある。

しかし、一般的にレベル4、つまり、
すべての操作をシステムが行う、ドライバーが同乗しない状態での走行を「完全自動走行」と呼ぶ。

自動ブレーキなどの安全運転支援システムなどは、すでに導入され市販されている。
実際に市場に出ている自動運転車は、レベル2まで。
安倍首相が「2020年には東京でも完全自律走行車を」と言っているが、実情は、かなりまだまだ、という現状だ。

Googleが行ってきた完全自律走行車の実験は、このうちレベル4にあたり、期待も高まっていた。

◎完全自動運転化に必要なもの
実は、こうした法的な規制の根本には「ジュネーブ道路交通条約」がある。
同条約は、国際的に道路交通の発達および安全を促進する目的により定められた、道路交通に関する国際条約で、そこでは、「自動車」とその「運転者」として、

・一単位として運行されている車両、または連結車両には、それぞれ運転者がいなければいけない(第8.1条)
・運転者は、常に車両を適正に操縦し、または動物を誘導することができなければいけない。運転者は、他の道路所有者に接近するときは、当該他の道路使用者の安全のために、必要な注意を払わなければならない(第8.5条)

・車両の運転者は、常に車両の速度を制御していなければならず、また適切かつ慎重な方法で運転しなければならない。運転者は、状況により必要とされるとき、特に見とおしがきかないときは徐行し、または停止しなければならない(第10条)


とされている。
つまり、「常時、運転者が必要である」と定義されており、それが法的な制限、障害になっているのだ。実際、どこの国でも商品化されていない。

また、技術的にも人間の運転者と同等の判断を、自動車搭載するシステムだけで実現可能かというと、それは難しいだろう。
完全自動運転を実現するには、
・道路情報などのマップ
・センサリングシステム
などとの連携は必須と言われている。

歩行者や軽車両、はたまた「人が操縦する」車両を混ぜたとき、信号どおり、交通規則どおりに機能するだけでは、安全が確保できない。あらゆる箇所で環境や状況をセンサリングして、システム側と連携しておく必要がある。

Googleはこうした状況から、いまのリソースを単独で完全自動運転車に注ぎ込むよりも、既存の自動車メーカーと共同での自動運転車の開発に向かったということ(おそらくレベル3段階での)。
運転者が同乗するレベル3の商品化は、技術的な部分がクリアできれば、法改正なしで可能となる。
そういう意味で、自動運転車の開発はより現実的になったといえる。

レベル3の自動運転車が登場し、普及することで、さらに新たな問題も出てくると思うが、何より日常になることで私たちの意識も変わる。
環境側の構築、法改正など長いスパンで考えなければならない要素を含め、レベル4はそのあとに続くということになるのだろう。


大内孝子