By Nicolas Raymond

日本でも和暦と並んで広く用いられている西暦、またはグレゴリオ暦が、イスラム圏の大国・サウジアラビアでも用いられはじめています。

Saudi Arabia adopts the Gregorian calendar | The Economist

http://www.economist.com/news/middle-east-and-africa/21711938-hauling-saudi-arabia-21st-century-saudi-arabia-adopts-gregorian

2016年春、サウジアラビアを事実上率いていると言われるムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子は、自身が進めている経済改革プラン「Vision 2030」の一環として、国内で用いられている暦法を従来のヒジュラ暦からグレゴリオ暦に変更しました。これは、1年を354日とする太陰暦から、世界の多くの国が採用する「1年365日」の太陽暦への移行となると同時に、イスラム教社会で用いられてきた暦からキリスト教中心の暦への移行を意味しています。

ヒジュラ暦で表現すると「Vision 1451」と命名されるはずだったところ、西暦に基づく「Vision 2030」と名付けられたプランは、石油に依存するサウジアラビアの経済を立て直すための改革プランとなっており、今後の国家の存亡をかけた一大プロジェクトとなっています。ムハンマド副皇太子は世界各国との結びつきを強めており、2016年9月には訪日して安倍晋三首相との会談を実施しています。なおこの時、副皇太子一行は12機とも言われる大量の政府専用機で日本を訪れており、そのスケールから「さすがサウジアラビア」と人々を驚かせたのも記憶に新しいところです。

安倍総理大臣とムハンマド・ビン・サルマン・サウジアラビア副皇太子との会談 | 外務省



1年を365日とするグレゴリオ暦と比べて、354日を1年とするヒジュラ暦は1年の日数が11日も少なく、さまざまな面でグレゴリオ暦との間に問題が生じます。また、太陽の動きから生じる季節と日付が一致しないために、農業を行う際にも問題が生じます。そのため、実はイスラム圏でもグレゴリオ暦を採用する国は存在するほか、紀元をヒジュラ暦元年に置く太陽暦であるヒジュラ太陽暦(イラン暦)を採用する国も存在します。

とはいえ、やはり国内の国内のイスラム教徒からはからは困惑の声が挙がっています。イスラム原理主義の一派であるワッハーブ派などからは「予言者ムハンマドを捨て、イエス(・キリスト)に従えというのか」という疑問が寄せられているとも。また、宗教的異端者をさばく裁判では、暦法の変更後も従来のヒジュラ暦で判決を言い渡されているといいます。

さらに、宗教家の間と同じぐらい政府関係者の間でも困惑の声が挙がっているとのこと。そもそもこの措置は、原油価格の下落による収入減と、隣国イエメンに対抗するための軍事費拡大にあえぐ政府による経費削減策という色合いも濃く、暦法の変更に伴い公務員に支払われるはずだったボーナスがキャンセルされ、その他の特典も削減される事態に至っています。さらに、カレンダーが変更になったことで、1年に働く日数が11日増えたことも、従来からの国民には打撃になっているとのこと。



By Al Jazeera English

他の国、特に先進国と歩調を合わせるためにはやむを得ない措置とも言えるわけですが、これまでの暮らしが大きく変化することになる現地の人にとっては、グレゴリオ暦への移行はなかなか簡単なこととは言えないようです。このほかにも世界には、イラン暦を採用するイランや、クルド暦を用いるクルディスタン、ユダヤ暦を採用するイスラエルなどが存在しており、2016年はそれぞれ「イラン暦1395年」「クルド暦2628」「ユダヤ暦5776年」となっています。また、タイ太陽暦(仏暦)を用いて「仏暦2559年」のタイや、「平成28年」を併用する日本もその仲間の1つということができます。