「月が綺麗ですね」「私は芸術を捨てる」… 「I love you」を作家たちはどう表現したか

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夏目漱石は、「I Love You」を「月が綺麗ですね」と訳したという逸話は有名だ。

直訳すれば「私はあなたを愛しています」という英文。しかし、言葉を操る小説家たちは、それぞれの感性で「I Love You」を訳していた。

そうした様々な「I Love You」の訳語を取り上げているのが、『I Love Youの訳し方』(望月竜馬著、ジェリエット・スミス絵、雷鳥社刊)である。

本書は、100人の作家による100通りの愛の表現を著者の望月竜馬氏が選定。引用した言葉には望月氏の直感によるコメントが添えてある。

では、どんな「I love you」の日本語訳があるというのか。

「あなた様なしには 私の今後の芸術は成り立ちませぬ
もし あなた様と芸術とが両立しなければ 私は喜んで芸術を捨ててしまいます」
谷崎潤一郎『根津松子へ充てた手紙』より

これは、谷崎が自分の愛を伝える表現だ。あなたは一生をかけた目標や生きがいを揺るがすほどの人であると最大限の献身がこの言葉から伝わってくる。

「さようなら。もうお目にかかれません。でも少しだけ、誰かのものになれてうれしかった。」
江國香織『ふりむく』(マガジンハウス)より

望月氏は「二度と逢えなくなる代わりに美しいお別れをする」とコメントを寄せている。別れの際にも、自分の気持ちをしっかりと伝えている名言である。

「もう一度お逢いして、その時、いやならハッキリ言って下さい。私のこの胸の炎は、あなたが点火したのですから、あなたが消して行って下さい。私ひとりの力では、とても消す事が出来ないのです」
太宰治『斜陽』より

少し女々しい印象をもたらすかもしれないこの言葉は、太宰治によるものだ。望月氏の「恋とはいつも責任のなすりつけあい」というコメントを体現している一節である。

「別れろよ、とにかく。そして俺と付き合えばいい」
北方謙三『跳ぶ夜』(抱擁−北方謙三恋愛小説集/徳間書店)より

北方謙三氏の小説の中にある、あまりにもかっこよすぎる名言。好きな相手がすでに誰かのものになっていたとしても、愛を伝えれば何が起こるかは分からないのだ。



さまざまな形の「I Love You」が詰まった一冊。クリスマスに愛を伝えたい相手がいるならば、作家たちの表現を参考にしてみてはいかがだろうか。

(新刊JP編集部)

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