フィギュアスケートの全日本選手権が始まった。22日は本番リンクで公式練習が行なわれ、23日も早朝の練習から力の入った滑りを見せる選手たちの姿が見られた。

 24日にショートプログラム(SP)がある女子シングル。大会2連覇中で、今季もグランプリ(GP)ファイナル2位などの結果を出している宮原知子を筆頭に、GPシリーズでの不振から復調の兆しを見せるベテラン浅田真央、昨年総合2位になったホープ樋口新葉、GP2大会で新しいプログラムを評価してもらえず、今大会から昨季高評価を得たフリー『リバーダンス』に変更する本郷理華、全日本ジュニア女王の坂本花織、昨季の世界ジュニア女王の本田真凜らが、表彰台を目指すことになる。

 ソチ五輪後、1年間の休養から復帰した浅田は、昨季終了後、平昌五輪を最終目標に掲げた。だが今季は、左ひざをはじめ体中のあちこちに痛みが出るなど、万全のコンディションを整えることができないままシーズンに入った。滑り込んで自信と調子をつかむタイプの浅田にとって、思うような練習を積むことができない影響は大きかった。

 今季前半のGP2大会は、初戦のスケートアメリカが6位、2戦目のフランス杯は過去最低の9位と、散々な結果に終わった。原因が滑り込み不足だったことは間違いない。自身の武器であり、代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は封印せざるを得ず、3回転+3回転の連続ジャンプも跳ばない演技構成では、最初から勝負にならないことは分かっていた。

 それでも浅田本人は、シーズン前半戦の不甲斐ない結果に落ち込んだという。

「昨季も今季もそうですけど、GPシリーズが終わって、いろんな意味で自分も悩むことがあって、一度は心が折れたりもしました。それでも、いろんなこと考えた上でまたこうして全日本(選手権)に戻ってきました。いまは次の試合を考えるよりは、まず、自分が好きで戻ってきたスケートを大切にして、次の試合というより今回のSPとフリーを演技することだけを考え、全日本に集中したいです」

 目の前の試合で納得のいく演技をすることが、自信を失いつつあるいまの自分には必要不可欠だと考えてのことだろう。この全日本というハードルを越えた先には、平昌五輪に続く新たな道や次なる目標が見えてくることは確かだからだ。

 11月のフランス杯後、1週間の休みをしっかり取ったことで体の痛みが治まり、自分のペースで練習を積み重ねてきたという。

「(痛みは?)大丈夫です。何も治療はしていないですが、GPシリーズが終わってから1週間くらい休んでいたので、それでしっかり治しました。

 いまの調子は、今シーズンの中で一番いい状態で来ているので大丈夫だと思います。やっぱりシーズン前半は、技術も体も気持ちも、すべてが上がってこられなかったですが、いまはいい状態ですべてが上がってきているので、いい状態でいい気持ちを持って(試合に)臨みたいと思います」

 シーズン前半は封印していたトリプルアクセルを22日の練習から跳んでみせるなど、調子のバロメーターである代名詞の大技を再び跳ぶことは、浅田のモチベーションを高める作用をもたらすに違いない。23日朝の練習では、入念なウォーミングアップをしていた浅田の気迫のこもった滑りが目についた。曲掛けのSPを最初から最後まで思い切りよく滑り、ステップではメリハリのある力強さを感じさせ、復調の兆しが見られた。

「この全日本では一応トリプルアクセルは跳ぼうかなと思って練習してきています。練習で1回でも跳べたら(試合で)入れていきたいと思っています。SPかフリーか、どちらで跳ぶかはまだ分からないです」

 練習で跳び始めたトリプルアクセルと、3回転フリップ+3回転ループの2大武器をきちんとプログラムに組み込んだ構成で挑み、目標とする「ノーミス演技」ができれば、浅田の表彰台は見えてくる。世界も認める技術と表現力を兼ね備えている浅田の浮沈の鍵は、10代選手たちとの勝負ではなく、自分自身との勝負になりそうだ。

 浅田の演技に注目が集まる中、いまや日本女子をけん引するエースとなった宮原もまた、追われる立場で臨む全日本に強い思い入れを持っていた。

「今季はGPファイナルでいい演技ができたので、このままの勢いで全日本でも自分らしい演技をすることに集中したいです。今季の世界選手権は五輪の枠取りの大会でもあるので絶対に行きたいなと思ってますけど、まずは代表選考がかかる全日本で自分の演技に集中して、いまできることを一生懸命にしたいです。

 私にとって2連覇している全日本は、何回も同じようにしっかり結果を出せる強い選手だと思ってもらうためにも勝ちたい大会です。だから、自分の演技をして、いい結果を残したいと思っています」
 
 そんな宮原を虎視眈々と追い抜こうとしているのが、並外れたスピードと勢いのあるスケーティングが持ち味の樋口だろう。

「今年も表彰台に乗りたい気持ちはあるんですけど、結果よりもとりあえずいい演技をして、それで結果がついてくると思っています。

 SPでは表現も大事なんですけど、ジャンプをしっかり決めることが一番重要だと思うので、ジャンプに集中しつつ、表現をうまくできるようにしたい。フリーは何度もうまく演技できているので、自信を持って滑りたい。世界選手権は出たいと思っていますけど、自分の演技次第だと思っているので、しっかりやりたいです。

 自分の持ち味というのは勢いやスピードですけど、その持ち味をなくさないで、しなやかに滑ることを練習してきたので、それを全日本で出せたらいいなと思っています」

 昨年の全日本で表彰台に立った宮原、樋口、浅田の3人を脅かす選手は出現するのか。今季の実績から見れば、宮原が優勝争いでは一歩リードしているが、激しい表彰台争いが展開されることは間違いないだろう。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha