『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間』:甥のヴィンスが語る帝王の実像

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ジャズの世界で革命を起こし続けたマイルス・デイヴィス。

ジャンルの垣根を飛び越え、さまざまな音楽を吸収しながらクール、ハード・バップ、モードといった新たなスタイルを提示、多くのジャズ・プレイヤーに影響を与えてきたマイルス。その生誕90周年にあたる2016年、彼の音楽と人生に迫った初の長編映画『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間』が公開される。

本作のプロデュースを務めたヴィンス・ウィルバーンJr.は、マイルスの甥であり、自身もドラマーとしてアルバム『ユア・アンダー・アレスト』『オーラ』などに参加。1984〜87年にはツアーにも同行している。

ヴィンス:あまり知られていないけど、マイルスは家族思いで料理好きだった。得意料理はブイヤベース。音楽や絵画はもちろん、ファッションも大好きで1日に5、6回は着替えていた。僕にとって彼は、スーパーヒーローのようにすごい存在なんだ。伝説はたくさん残っているけど、とても温かい人だよ。彼のトランペットの音を聴けばきっとわかると思う。

本作の題材となっているのは、マイルスが表舞台から姿を消し、活動を休止していた70年代後半。ある日、音楽活動を休止していたマイルスの自宅に、彼の近況を探り出してカムバック記事を書こうとしているローリングストーン誌記者デイヴ・ヴレイデンがやってくる。だが元妻フランシスとの苦い思い出にとらわれ、体調不良に悩むマイルスは、キャリア終焉の危機に瀕していたのだった。


徹底した役作りをしてマイルスに扮するチードル

物語は、実際にあった出来事とフィクションがおりまぜられた形で展開。監督、そしてマイルス役を務めたのはドン・チードル。またマイルスの元妻であり、アルバム『サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム』のジャケットを飾っているフランシス・テイラー役はエマヤツィ・コーリナルデイが扮している。

ヴィンス:ドンと脚本家のスティーヴン・ベーグルマンは、スタンダードな伝記映画を作る気はない、そんなのはつまらないと話していた。彼らは音楽的な要素はもちろん、アクションあり、フランシスとのラブロマンスありと、エンタテインメント性がきちんとある作品にしたいと考えていたんだ。ドン自身は役作りのため、マイルスの声にできるだけ似せたいとも言っていた。だから僕は、マイルスのBBCインタヴューの音源を彼に渡したんだ。夜中にゥ泪ぅ襯垢世辰燭蕕海鵑併、どんなふうに言っただろう?イ辰董▲疋鵑氾渡辰膿浸しあったこともあったよ。

ユアン・マクレガー扮する記者デイヴは架空の人物とのこと。だが、マイルスの活動休止期間中にあたる78年4月20日号のローリングストーン誌には以下のような記事も。


ローリングストーン誌記者デイヴ・ヴレイデン役のユアン・マクレガー

マイルスがほぼ3年の空白の後、スタジオ入り。メンバーはデイヴィスのほか、ギタリストのラリー・コリエル、ドラマーのアル・フォスター、ベーシストのT.M.スティーヴンス、そしてデイヴィスとキーボードワークを分け合う形でジョージ・パヴリスが参加。レコーディングされた楽曲は、リリシズムあふれるものだそうだ。リリースはまだ未定。

正規にはリリースされなかった上記セッションの後、81年の『ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン』で復活したマイルス。彼は自身のグループに才能を見込んだ人間を次々と抜擢することでも有名で、それを機に大きく成長したジャズ・ミュージシャンもジョン・コルトレーンを筆頭に数多い。

ヴィンス:彼はあらゆる人間、あらゆる音楽を愛していた。白人の編曲者ギル・エヴァンスは親友だったしね。ある時マイルスがァ僻の色が)白でも黒でも関係ない、演奏が良ければ緑色だってかまわないイ噺世辰討い燭海箸發△辰拭マイルスはMTVを観て、気に入った曲が流れると音量を上げ、すぐレコード会社に連絡してサンプルを送ってこさせるんだ。マイケル・ジャクソンの『ヒューマン・ネイチャー』やシンディ・ローパーの『タイム・アフター・タイム』をカヴァーしたこともあるし、キャメオやプリンスが好きで、ミネアポリスまでレコーディングしに行ったこともある。プリンスについては天才だと言っていて、憧れていたようだった。彼をゥ船磧璽蝓次Ε船礇奪廛螢鵑肇献Дぅ爛此Ε屮薀Ε鵑ひとつになったようなア―ティストだイ班集修靴討い燭里魍个┐討い襪茵プリンスの方もマイルスの大ファンで、彼に透明なキラキラした杖をプレゼントしていた。3、4曲、マイルスのために曲も書いてくれたんだ。


今回チードルは監督、主演、共同脚本、製作の4役を務めた

本作最後のライヴシーンには、そんなマイルスに薫陶を受けたジャズ界の巨匠ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーターも登場。いぶし銀の演奏を披露している。

ヴィンス:ハービー・ハンコックが完成した映画を観て言った言葉が、いちばんうまくこの作品の本質を表現していると思う。彼は言ったんだ、イ泙襪妊泪ぅ襯垢量瓦涼罎鯤發い討い襪澆燭い澄イ辰討諭



VINCE WILBURN, JR.
ヴィンス・ウィルバーンJr. マイルス・デイヴィスの甥(姉ドロシーの子供)であり、マイルスの子供たちとともにマイルス・デイヴィス・プロパティーズを統括。またドラマー、プロデューサーとしてキャリアを積み重ね、1984年から87年にかけてマイルスのツアーやレコーディングに参加。最近ではマイルス・エレクトリック・バンドの演奏に参加したほか、さまざまなイベントのパネラーやホストを務めている。

『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間』
監督/ドン・チードル
出演/ドン・チードル、ユアン・マクレガー、エマヤツィ・コーリナルデイほか
12月23日(祝・金)より、TOHOシネマズ シャンテ ほか全国順次ロードショー
miles-ahead.jp