日立と三菱重工が経営統合する日

写真拡大

■日立と三菱重工、幻の経営統合

日本の製造業を代表する、日立製作所と三菱重工業を比較してみた。

売上高や純利益、子会社・関連会社数、連結従業員数、それに13年度、14年度、15年度の3期を均して年度換算した研究開発費、配当総額、納税額などを見れば、規模では日立が凌駕していることが明らかだろう。キャッシュフロー(CF)計算書の支払額で比較すると、日立の納税額は三菱重工の2倍を超える。

三菱重工が日立を上回っているのは、海外売上高比率、営業利益率(3期平均)、自己資本比率である。有利子負債も、金額ベースでいえば約2兆5500億円少なく、売上高に占める割合も、日立36%に対しい三菱重工は26%である。財務の健全性では、三菱重工に軍配が上がるということだろう。

興味深いのは、営業・投資・財務CFである。日立は年度平均ベースで、営業活動で5236億円の収入(キャッシュ)を獲得している計算だ。三菱重工の倍以上の金額である。

ただし、投資活動として支出しているキャッシュは、年度平均で6311億円に達する。日立は金融部門を抱えているという特殊事情があるとはいえ、営業CFでの収入を上回る投資CFの出金は、企業買収など投資活動に積極的だったことを示すものである。

その差額を補うために、新規に資金調達を実施。日立の財務CFの黒字(入金超過)はそれを意味している。

一方、三菱重工の投資活動での出金は、営業活動での収入の範囲内にとどまる。余剰キャッシュは、借入金の返済に充当するという構図だ。新規の資金調達額より借入金の返済額が上回れば、三菱重工のように財務CFは赤字(出金超過)になる。

日立製作所と三菱重工業の経営統合が大きく報道されたことがある。2011年夏のことだった。結果的には誤報になったが、統合が進んだ事業分野があるのも事実だ。

火力発電システム事業は、三菱日立パワーシステムズとしてスタート。製鉄機械での統合会社である三菱日立製鉄機械は新たに、独シーメンスと合弁でプライドメタルズテクノロジーズとして運営を開始した。三菱電機を含めた3社では水力発電システム事業を日立三菱水力として統合。三菱重工のX線治療装置事業の譲渡先は、日立である。

■選択と集中を進める両社の未来

両社は、事業の統合・再編や譲渡など選択と集中を進めており、経営資源を伸長分野に投入することで、さらなるグローバル展開や成長に取り組む姿勢を鮮明にしているといっていいだろう。東京電力福島原子力発電の大事故にともない原発プラントの新規受注がストップするなど、経営環境や世界的競争が益々厳しくなっていることも背景にある。

日立は、非中核事業の物流事業とリース事業などの再編に着手。日立物流は佐川急便を擁するSGホールディングス(HD)と、リース事業の日立キャピタルは三菱UFJフィナンシャル・グループと、それぞれに資本提携に動いた。日立物流と日立キャピタルの2社は、日立の子会社から関連会社に移行。事実上の切り離しである。

三菱重工の場合は、燃費不正問題を起こした三菱自動車の株式を日産自動車に譲渡して身軽になったものの、依然として二重三重の荒波が押し寄せているといっていいだろう。

受注した大型客船の納入遅延などで、2400億円に迫る巨額の損失を発生させたところに、造船不況が直撃。16年度に入っての受注は6隻にとどまる。米国で手がけた原発プラントで不具合を発生させたとして、賠償金を巡る係争問題も継続中だ。開発を進める航空旅客機「MRJ」の納入スケジュールにも狂いが生じ、受注が伸び悩んでいるのも現実である。

同社は今期の売上高予想を、当初の4兆4000億円から4000億円ダウンの4兆円へ下方修正しているが、ある意味で必然の流れともいえよう。

三菱重工が着手している構造改革の概略を見ておこう。祖業である造船部門では、今治造船、大島造船所、名村造船所との4社によるアライアンス構築で、 グローバル市場での競争力を強化する方向だ。すでにLNG船では今治造船との合弁展開に動いている。関連会社の神戸発電機とは、舶用ディーゼルエンジンを統合する。

フォークリフト事業は、グループ内再編を推進。射出成形機事業は宇部興産との統合を選択した。不動産事業の子会社は、JR西日本に売却する。

日立が原発事業で手を組んでいるのは米GEだ。そのGEの売上高は、日立と三菱重工の合計をやや下回る程度だが、営業CFで獲得するキャッシュは、日立や三菱重工を大幅に上回る。3期平均の営業CFは253億ドル。1ドル110円換算で2兆8000億円に迫る。三菱重工に航空機の主翼の製造などを任せる米ボーイングにしても、年間の営業CF収入は1兆円を超す。日立も三菱重工も、営業CF収入の拡大も今後のテーマになる。

(ジャーナリスト 鎌田正文=文)