「アイデアの流れ」を理解すれば、発想力は高まる

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クリエイティビティとは、1人の頭の中で生まれるものではないー。知識や経験が結びつき、アイデアは磨かれていくのだ。この「流れ」を意識すれば発想力は高められる。

アップル共同創業者、スティーブ・ジョブズのような天才が生み出したプロダクトの数々を目にして、「自分にはクリエイティビティ(創造力)がない」と落胆する人もいるかもしれない。

しかし、そのジョブズも「創造力とは、物事を結びつける力に過ぎない」と話している。同じように、「(創造力とは)1人の頭の中で起こることではなく、さまざまなアイデアが集まって生まれるもの」と語るのは、MITメディアラボのアレックス・ペントランド教授だ。

「自分とは違うタイプの人との議論が、アイデアを呼び起こします。創造性の高い人は、あるアイデアについてじっくりと考え続けるものです。また、それを別のものと組み合わせたり、周りに評価を求めたりもします」

例えば、作家や発明家は、新しいアイデアや物の見方を探し続け、パズルのように組み合わせている。ペントランドはこうした創造的な人々を「探求者」と呼び、ビッグデータを解析することで、彼らのアイデアの流れについて研究してきた。

クリエイティブな集団の共通点

その結果、とりわけ創造力の高い人物や組織にはある共通点が見られたという。

まず、そうした人々は、所属する集団の(人間関係を含めた)ネットワークのバランスがよい。ペントランドは自著『ソーシャル物理学「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(邦訳:草思社刊)の中で、少数のメンバーが支配している話しづらいグループよりも、会話の参加者が平等に発言できるグループの方が、アイデアが多様で数も豊富だったと指摘している。

つまり、リーダーが参加者に発言を促すモデレータになって、全員に平等に話す機会をつくってあげれば、それだけでグッとアイデアの数が増えるのだ。加えて実験では、女性がより多く含まれているグループの方がよいアイデアを出している。

次に、「アイデアを見つける行為(探求)」と「見つけたアイデアを仲間と共有する行為(エンゲージメント)」を繰り返す回数が多く、その仕組みが整っている組織ほど、高い創造性を発揮していた。特に、革新的な組織は「組織図に囚われず、広範囲にわたってアイデアを探す」と、ペントランドは話す。

「彼らは周囲の関係者と常にあらゆる最新情報を共有する習慣を持っていました。言ってみれば、『トヨタ生産方式』を従業員だけではなく、組織全体に適用しているようなものです」

もちろん、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアも貴重な情報源になりうる。しかし、趣味嗜好や思想が近い人たちが発信する情報に繰り返しさらされることで、考え方やアイデアが画一的になるリスクも高い。

「今後、社会格差が広がるにつれ、こうした『エコーチェンバー(共鳴室)効果』がますます大きくなるでしょう。そもそも、本当に高いパフォーマンスを発揮している人たちはたいてい、別のアイデア、あるいは自分と真逆のアイデアを求めます。一見、疑わしいアイデアにさえ真実がないか、見極めようとするのです」(ペントランド)

奇しくもジョブズも、「周りと同じ経験しかしていないのなら、結局は彼らと同じようなアイデアしか思いつかない。それでは、革新的になれる訳がない」と述べている。 

そうしたエコーチェンバーに嵌まらず、アイデアを探求する方法は”健全な猜疑心”を持つこと、とペントランドは語る。

「大事なのは、自分も含めて周りの人たちが正しいか、常に疑うこと。いつも頭の片隅で自問自答を繰り返すことです」

アレックス・ペントランド◎マサチューセッツ工科大学(MIT)教授。MITメディアラボのヒューマンダイナミクス研究グループの所長を務める。『ソーシャル物理学「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(邦訳:草思社刊)など著書多数。