イルミネーションで彩られた街は、心なしか暖かさも感じられます。(写真はイメージ)


 12月も半ばを過ぎ、街の気配はクリスマスムード一色です。

 筆者も東京駅近くのイルミネーションを見に行ってきましたが、さまざまな商業ビルでLED装飾やプロジェクションマッピングを活用したイベントが実施されていて、とても賑やかです。12月なのに、まだ暖かさが残るため、人が普段より多いように感じられます。

 さて、今やどこもかしこもプロジェクションマッピングと銘打ったイベントという様相になっていますが、最近疑問に感じることが増えてきています。

「これ、プロジェクションマッピングなのか?」

というものがあまりにも多いからです。

 クリスマスや正月、バレンタインと、冬はイベントが盛りだくさん。そこで、たくさん目にするプロジェクションマッピングをきちんと楽しむために、「良いプロジェクションマッピングとは何か」について、技術・クリエイティブ面で考察したいと思います。

条件その1「構造を生かしたものか、人や物の動きと連動したもの」

 最近、「プロジェクションマッピング」と銘打つものが本当に増えました。それはそれで、都市がメディア化し、エンターテインメント施設が華やかに彩られるのは歓迎しています。2万ルーメン以上のプロジェクターの価格が下がってきたこともあり、普及が進んでいます。

 しかし、レベルの低いプロジェクションマッピングが増えたのも事実です。

 Wikipediaによると、プロジェクションマッピングとは、

 プロジェクション(=投影)という単純映写ではなく、マッピングという言葉が加わった言葉で、ここには投影する対象に映像を張り合わせるという意味合いがあり、対象と映像がぴたりと重なり合うことで意味を持ってくる映写方法である。(中略)投影される対象は建築物だけではく、靴、テーブルや椅子、額縁、描かれた絵、人体、部屋、鞄、楽器、樹木などありとあらゆる物を対象としている。

とあります。Wikipediaの説明が少し簡易なので補完すると、つまりは、「立体的な」対象物をスクリーンとし、その「造形」に合わせて映像を張り合わせる(マッピングする)技法と言えます。

 ですが、最近は、ただ壁や地面に映写するようなものも、プロジェクションマッピングと呼ぶようになっています。

 構造を生かしたものか人や物の動きと連動したもの以外は、本来はその範疇にないと言えます。異質性をともなった空間の侵食がプロジェクションマッピングの醍醐味であり、その投影面の持つ特性をどう生かし、どう裏切るかが、腕の見せ所なのです。

 本来のプロジェクションマッピングの制作は、映写対象物を3DCGでリアルに再現し、そこにCG上で映像を重ねて、実際に投影した時にズレなく重なるようにしています。また、対象物にきちんと投影できるよう、凹凸や湾曲に映像を適用させるキャリブレーションもコンピュータ上で行っています。

 本物のプロジェクションマッピングをご覧になりたい方は、どこに映される映像なのか、その映写対象も気にしてみましょう。

「TOKYO STATION VISION / 東京駅プロジェクションマッピング」

条件その2「映像が美しく、クリアに投影されている」

 これも、プロジェクションマッピングがブームになった弊害と思われますが、そもそも映像の質が低いものが増えました。また、照明のコントロールが上手くされていない場合、クリアに見えないということも起こりえます。機器の性能もクリアさを左右します。

 映像の質については、基本はCGアニメーションの質が左右すると言えます。プロジェクションマッピングはシーズンイベントで短期的に使用されるケースが多く、残念ながら「低予算でとりあえずプロジェクションマッピングをやってみた」というものも多くあります。

 プロダクション(制作会社)によっては、同じテーマのコンテンツを演出を微妙に変えて、巡回しているものもあります。ただし、前述したように、場や物に張り合わせるものがマッピングですので、本来はそれぞれ固有に作られたものになります。

 逆に言えば、同じ場所や同じセットで通年や毎年行われているものは、それなりにレベルが高いと思われます。それに対して、あまりに短期間で新しいものの場合は、あまり期待せずに見るという姿勢が必要かと思います。

「姫路城3Dプロジェクションマッピング HAKUA」

 また、映像をクリアに投影するためには、コンテンツだけでなくハード面の進歩も必要です。ハードウェアとしての業務用大型プロジェクターは、どこが牽引しているのでしょうか?

 有名なメーカーは、米国のクリスティ・デジタル・システムズ(CHRISTIE、http://www.christiedigital.jp/)、ベルギーのバルコ(BARCO、https://www.barco.com/ja/)、そしてパナソニック(http://panasonic.biz/projector/)の3社です。

 パナソニックは、リオオリンピックの開会式の舞台「マラカナンスタジアム」に、DLPプロジェクターを(同社として)過去最大規模の約110台設置したことで話題になりました。

 開会式・閉会式で使用されたのは、3チップDLPプロジェクター「PT-DZ21K2」で、2万ルーメンの高輝度と高画質化をコンパクトなボディで実現した業務用プロジェクターです。ちなみに、実売価格は約950万円となっています。

 プロジェクターには、液晶プロジェクター、DLPプロジェクター、LCOSプロジェクターといった種類があります。DLPとは「デジタル・ライト・プロセッシング」の頭文字をとった略語で、デジタルマイクロミラーという微細な反射型ミラーを使用した表示パネルを使用しています。

 その他、先ほどご紹介したバルコ社は、世界最大の輝度を誇る4万ルーメンのDLPプロジェクターを販売しており、ランプを直接見ると目が焼けるという強力な光の強さです。販売価格は1400〜1500万円程度となっています。クリスティ社のプロジェクションは、シドニーのオペラハウスのプロジェクションマッピングで採用されています。

 また、投影面積が大きければ大きいほど、距離を離してプロジェクターを設置しないといけません。実際には、画面サイズの1.5倍ほどの距離が必要になりますが、超短焦点レンズというものを使用して、投射距離を60%以下にまで近づけることができます。投影距離が取れない展示会場などで重宝され、インタラクティブマッピングなどで体験者の影を出さずに投影が可能です。

条件その3「インタラクティブ(体験型)でストーリー性を持つ」

 2010年辺りから日本で流行りだしたプロジェクションマッピングですが、さらに進化を始めています。最初の頃はただ見るだけでしたが、今は体験型のものや、ストーリーを持ち、その世界に入ったかのような気になるものも登場しています。

 そういった事例として、「Foresta Lumina」を取り上げます。

 カナダには、VFX(Visual Effects、視覚効果)に強い「Vallée Duhamel」や、プロジェクションマッピング製作ソフトウエア「TouchDesigner」(タッチデザイナ)を開発した「Derivative」など、クリエイティブスタジオが多く存在します。

 その中でも「MOMENT FACTRY」は、サグラダファミリアのプロジェクションマッピングやマドンナのコンサートツアーのステージ演出、ロサンゼルス空港の空間演出を手掛けるなど、世界的に活躍するクリエイティブスタジオとして注目されています。

 2014年に彼らが発表した「Foresta Lumina」は、カナダのコーチクックの森にデジタル制御したイルミネーションとプロジェクションマッピングを仕掛け、歩きながら楽しむエンターテインメントとして話題を呼びました。

 さらに、今夏には「NOVA LUMINA」と「ANIMA LUMINA」を続々と発表。「NOVA LUMINA」は、「星が地上に落ちた」というコンセプトで光る杖を持ちながら森を歩き、星を天空へ戻す物語を体験します。「ANIMA LUMINA」は、夜の動物園をジャックして、プロジェクションマッピングによるさまざまな動物たちに出会う体験が待っています。

 いずれも映像と音響と照明をデジタル制御し、イルミネーションの森を歩くトレッキング型の新しい体験です。

「NOVA LUMINA」

「ANIMA LUMINA」

 新世代のプロジェクションマッピングとして、以下も要注目です。

「Le Petit Chef」

「Box」(ロボットアームとの連携)

「Facial Projection Mapping」(人の顔へのマッピング)

これからのプロジェクションマッピング

 花火や映画のように、プロジェクションマッピングは一般の方の評価や批評が作品の質を高めます。

 良い体験にはカタルシスがあり、最後の帰着点がその場や物に物語をつなぐ。そういった余韻が観覧者に感動を与え、体験に意味を与えます。

 どこで見ても同じような均一的な体験ではなく、場や物の持つ特異性を生かした体験がより強く求められると感じます。

 では、未来のプロジェクションマッピングは、どういう進化をたどるのでしょうか?

 未来のプロジェクションマッピングおよび3次元プロジェクションを空想した場合、いくつかの可能性が考えられます。1つは映画館の可能性。4DXやIMAX、そしてサラウンドが進化したように、スクリーンが前方のみならず横の面に広がることも考えられます。

 また、空間との関係については、自宅やレストラン、電車、航空機の機内などで、より身近に楽しめるようになるかもしれません。自然とのコラボレーションも加速すると考えています。海中も挑戦すべきと思います。

 これからも進化を続けていくプロジェクションマッピング。ぜひ、皆様には良いプロジェクションマッピングをご覧いただきたいと願います。

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筆者:澤邊 芳明